◆ボブ・ディランやプリンスは宗教による影響を隠さなかった

 その上でもう一点指摘するとしたら、そもそもサイババをモチーフにしているのであれば出典を明らかにすべきでした。これはステルス布教以前にソングライターとしてわきまえるべき創作上のルールだと言えるでしょう。

 ここでボブ・ディランを引き合いに出すのは気が引けますが、ディランはユダヤ教からキリスト教に改宗したことを隠すことなくゴスペル色の強い『Saved』、『Shot of Love』、『Slow Train Coming』の三部作を発表しました。

 のちに「エホバの証人」の信者となったプリンスも、その教えのおかげで性的描写に頼らずに曲を作るようになったと公言しています。

 どちらも音楽制作の源泉に宗教の存在があるのだから、その根拠を明示してメッセージを発しているわけですね。