◆天才が生み出した、ハチャメチャに面白い作品

 今回ご紹介したい映画は、グザヴィエ・ドラン監督の『マティアス&マキシム』。タイトルにもあるマティアスとマキシムは幼なじみ。一回のキスをきっかけに2人の関係性に変化が起きていく、という物語です。

 ドラン監督といえば、監督も脚本も演者もやってしまうという超強者。それでいて出来上がった作品もハチャメチャに面白いのだから、もう、あなた天才! の一言しか出ません。私が初めてドラン作品を見たのは’14年の『Mommy/マミー』という作品だったのですが、そのときから今までの映画の枠を超えてくるような表現に驚き、魅了されたのを覚えています。役者としても素晴らしい存在感と唯一無二の色気! 見れば見るほどハマる、沼る! 私の中でそんな定評のあるグザヴィエ・ドランさん。今回の作品も、そんな彼の魅力が存分に発揮されていました。

銀幕ロンリーガール/松本穂香
『マティアス&マキシム』発売・販売/TCエンタテインメント
 ドランの作品に流れる空気はいつもどこか憂いのようなものがベースにあって、物語が進むごとに緊張感や目の前に迫ってくる力強さみたいなものを強烈に感じるのですが、今作はそこに時折クスッと笑える温かいおかしさや愛らしさが交じっているのが印象的でした。自分はどんな人間なのか、葛藤する姿はとても切なくて、とても愛らしくて。抱きしめたいのに傷つけてしまう。言葉に表せない自分の思いに苦しみながら、それでも進んでいく彼らの姿に、ドランが込めた思いが伝わってくるようでした。