「渋谷横丁」「虎ノ門横丁」など、「〇〇横丁」という小規模な飲食店が軒を連ねる横丁業態が人気を博しています。新型コロナウイルスの影響で外食産業は厳しい状況にある中、どのようなビジネスモデルで人々を惹きつけているのでしょうか。
若者が集う街に出現するレトロな横丁
赤ちょうちんにネオンがゆらめくレトロな情景。横丁と聞くと、世代によっては「新宿西口思い出横丁」や「新宿ゴールデン街」といった昔ながらの酒場を思い浮かべるかもしれません。
こうした酒場は時代の移り変わりとともに廃れゆくものと思うかもしれませんが、そうではありません。むしろ、横丁は若者が集う街に次々と出現し、昔ながらの面影そのままのにぎわいをみせています。
旧公設市場を活用した恵比寿横丁が先駆け
2020年8月に開業し、若者の街・渋谷で新スポットとなっているのが「渋谷横丁」です。渋谷横丁は渋谷の商業施設「RAYARD (レイヤード)MITASHITA PARK」の1階にあり、全長100メートル、約1,000平方メートルのフロアに19店舗が並んでいます。
全国各地の料理を楽しめるよう、北海道から沖縄までご当地のソウルフードを用意し、日本酒や焼酎などのお酒も提供しています。渋谷駅から徒歩3分とアクセスがよく、敷地内の横丁広場では音楽ライブやカラオケ大会を開催できるなど、食とエンタメを同時に楽しめることも若者に人気の理由となっているようです。
渋谷横丁を手がけたのは、これまでに「恵比寿横丁」などをプロデュースしてきた浜倉的商店製作所(東京都中央区)です。恵比寿横丁は、恵比寿駅西口にあった旧公設市場「山下ショッピングセンター」を横丁として再生したもので、女性客でにぎわうなど横丁ブームの先駆けとなりました。
横丁への出店は個人事業主にもメリット
渋谷横丁の19店舗は浜倉的商店製作所の直営ですが、恵比寿横丁には同社の直営ではない個人店も参加しています。さまざまな飲食業者が参加することで、バラエティーに富んだ料理やお酒を提供できます。
横丁への出店という意味では、個人店側にもメリットがあります。飲食業界で独立して店を構えるには相応の資金が必要で、独立のために投じる資金が大きいほど、失敗したときのリスクも大きくなります。
横丁への出店であれば、厨房設備などが残されているケースもあり、通常の店舗を新たに構えるのと比べて、初期投資は安く済みます。まずは小さく始めて経験を積み、次第に規模を大きくしていくということも可能です。
また、横丁への出店は、広告費を安く抑えられるというメリットもあります。横丁がにぎわえば自店の売り上げが伸びる可能性が高く、横丁を訪れる客の中には、何店舗もはしごする人もいるからです。