新海誠の映画が“RADWIMPSのMV”みたいになる理由
前回の放送でも触れられたが、新海が1年がかりで作成するビデオコンテは驚異的である。一般的な画コンテとは異なり、セリフや音楽を新海自らが入れ、ほぼ実尺で作る映像のことだ。キャラクターの声をあてるのも、暫定的に入れる劇伴(既存曲)のチョイスも、すべて新海が1人で行っている。
ビデオコンテでは細かいコマ数も決められているが、野田から送られてくる音楽によってコマ数が変わることもあるらしい。
「ビデオコンテで固めたんだけど、洋次郎さんが曲を更新されて、『ブリッジにもう1個新しいメロディーができました』みたいになると、『こんなにいいメロがあるんだったら、コンテを直さなきゃ』と思って」(野田)
こういうケースが、『君の名は。』と『天気の子』の2作であったらしい。例えば、『天気の子』で少年が廃ビルの階段を登り、屋上の神社に向かうシーンがそうだ。「愛にできることはまだあるかい」のサビを聴かせるため、完成版ではビデオコンテより階段の段数が建て増しされ、階段を駆け上がる時間が伸ばされたのだ。
「公開まで半年とか3~4カ月ってときに、『ここで20秒伸ばします』ということを(新海が)宣言されるんですよね。そうすると、20秒のために……もう、僕は恐ろしくて聞けないですけど、また制作費が何億増えるんだろう? と。でも、『これは絶対、入れたいんです』って」(野田)
『君の名は。』以降の新海作品は、悪い言い方をするとRADWIMPSのMV的要素があると思う。この作り方なら、その方向へ寄るのは道理……という気がした。
新海とRADWIMPSのコラボは、新海がRADWIMPSのファンであったことから始まった。今回の『関ジャム』の放送直前、新海は以下のツイートを発信している。
<関ジャム、今夜続きが放送です。前回の放送では、自分のオーダーのめちゃくちゃさと洋次郎さんの尋常ではない熱量を外側から目の当たりにして、やばい・なおさらに好きだ、、、となりました笑。制作中は必死で夢中で気づけないのです。>
新海映画は、次作以降もこの2人が組んで制作されていくのだろう。