エンディングに「黒崎の旅はつづく」とあったが、黒崎が桂木を狙うことはないだろう。直接手を下したわけではないにせよ、御木本を自死に追い詰めたことを悔やんでいた様子の黒崎は、宝条を見事だましたあと、「お前は生きて償え」と宣告していた。一家心中の過去に囚われ、止まっていた黒崎の時間は、ようやく動き出そうとしていた。
黒崎が世に巣食う“悪”を喰いつぶしていくストーリーだったが、2006年の山下智久主演版と異なり、原作が完結した上で「完全版」として展開された今回の『クロサギ』が伝えたかったのは、“社会に悪は存在し続ける”という不条理さだろう。桂木が黒崎に言った「宝条の代わりは、またすぐ現れる。もしかすると、宝条のような人間がいるから、この社会は成り立っているのかもしれないな」。そして黒崎が氷柱に伝えた「『法律が人を救える』 お前のその言葉、俺はやっぱり信じられない」。人々を苦しめる悪が消滅することはなく、真っ当な方法で対抗することも難しいのかもしれないという現実。それは最終回の最後の最後まで不変のものだった。
それでも、ラスト1分に氷柱に送られたエールは未来への希望だった。「だけど、お前がホントにそう思ってるなら証明してみせてほしい。検事になって、俺とは違う戦い方で。もしそんな日が来たら、それはクロサギがいらなくなる日だから」。最後のこの言葉は、法の力をもう一度信じてみたいという気持ちであり、一方でその日が来るまではクロサギとして世直しを続ける意思表示にも受け取れる。黒崎は最後まで本心を読み取らせない超一流の詐欺師だった。だが、氷柱の前から姿を消す直前に吉川家で見せた笑顔、そして6年後に検事となった氷柱の背中を見届けた優しいほほえみは、過去の呪縛からようやく解き放たれた黒崎高志郎というひとりの青年の素顔がのぞき、彼の成長もまた感じられたように思う。まさにドラマ『クロサギ』ここに完結、といった大団円の結末だった。
■番組情報
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系毎週金曜22時~
出演:平野紫耀、黒島結菜、井之脇海、中村ゆり、宇野祥平、時任勇気、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎、三浦友和 ほか
原作:黒丸・夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
音楽:木村秀彬
主題歌:King & Prince「ツキヨミ」
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作:TBS
公式サイト:tbs.co.jp/kurosagi_tbs