情報解禁された頃から楽しみにしていたドラマで、私は1日かけて一気見。こんなに濃密で丁寧に撮られた邦画ドラマを、配信でたっぷり堪能できるなんて本当にありがたい。学生の頃恋人同士だった晴道と也英が大人になって再会するのだが、2人の間にはいくつもの壁が立ちはだかっていて、話数を重ねるごとにその秘密が明かされていく構成が見事。

 思わず一気見してしまうストーリー構成に加え、際立つのは映像美。

 年月をかけて撮影されたこの作品には、巡る季節と共に変化する自然の色、草花、日差し、雲、風の強さ。そしてその環境による、人間の身体の反応が偽りなく映し出されている。特に、ツンとした冬の匂い。寒さで赤らむ頬、白い吐息、浮き出る血管。可能な限り、偽りが削ぎ落とされた映像の中の世界は、澄んでいてとても美しい。

 その背景の空気感を壊さぬよう、台詞を多くは語らず、溶け込んだ自然体の役者さん達のお芝居は、巧みで本当に素晴らしかった。

 Netflixオリジナルドラマは、もう〝映画〟でも〝ドラマ〟でもなく、〝Netflixドラマ〟としての独自の存在だなぁと思う。時間をかけて丁寧に構築して撮影する〝映画〟の良さと、話数が多いぶん、登場人物達の背景をより深く描ける〝ドラマ〟の良さ、両方のいいとこ取りをしたのが〝Netflixドラマ〟だなぁと。

 目的や条件を入力して効率良く相手を見つけられるアプリだったり、大きな機械を持たなくてもスマホから手軽に音楽が聴けたり、レンタルショップに行かずとも配信で映画が観られたり。面倒な過程が省かれ、便利になった世の中。過去と現在を行き来するストーリーの中で、ここ数十年での時代の大きな変化を感じたのだが、なんだか心動く瞬間が、不便や面倒くささの中に多くあったんじゃないかな、なんて思ってしまう。

 加えて、歳を重ねて理想像が膨らんだり、背負うものが増えていく中で、選択肢を自分自身で狭めたり、変化を伴うリスキーな選択には踏み切れなかったりするもの。安定したい。安心したい。失いたくない……恋も、仕事も夢も、人生の選択全てに当てはまることだと思う。それは責任や、プライドや、守るものがあるからで、きっとそれが大人になることなのだろうと思うけれど。

 そんな便利な時代でも、いくつになっても、本能的に細胞が沸き立つような感覚には敏感でいたいな。心の動きは省かずにいたいな。時代はこれからも進化していくと思うけれど、〝初恋の人〟とか〝イヤホンを分け合って聴いた思い出の曲〟とか。大切な思い出はしっかり心に留めて、〝どんな選択も、人生のかけがえのない1ピース〟そう胸を張って言える選択をしていきたいと、勇気ある選択に踏み出す2人をみてそう思った。

 作中、偶然再会したり、人を介して繋がったり、そういう奇跡のような瞬間が何度もあるけれど、これを、私はドラマのフィクションの世界だけではないと思っている。出会いは必然、全ての出来事に意味がある。今年、そう思える出来事や出会いが私にとって沢山あった。沢山悩んで選択をした私を、優しく後押ししてくれた作品でした。あぁ~年の終わりに素敵な作品が観れた~!今回のイラスト、お気に入りです。

 それでは皆さま良いお年を~!