クロサギは「人を騙し、金銭を奪うシロサギ」「色恋を餌にするアカサギ」をターゲットとしているが、この令和版『クロサギ』ではこれまでアカサギは登場していなかった。まさか、アカサギの初お披露目が黒崎によるものとは想像していなかったが、ただのアカサギに終わらない、黒崎ならではの顔も見せた。怜華を篭絡したあと、ため息をつきながらパフェをつつき、店員から「お疲れですね」と声を掛けられると「苦手な仕事だったんで」と力なく笑う黒崎。宇佐美から10億円をだまし取り、怜華に手伝った報酬として4000万円を渡した際には、「最後にひとつだけ……」と言う怜華が顔を近づけ、目をつむってキスを待っていたら、4000万円を入れたスーツケースで殴られ、情けない表情を浮かべる。こうした演出には黒崎の年齢相応のあどけなさが感じられた。人妻の心を巧みに操りながらも、「アカサギ役は苦手」とため息をつき、悪人ではない人間にはしっかりフォローを入れる優しさも兼ね備えるギャップにより、一層“チャラ崎”が魅力的に感じられた視聴者も多かっただろう。
第8話でも見事に宇佐美をだました黒崎だったが、“ラスボス”候補の宝条の“格”も感じられる展開となった。黒崎は牛山のときと同様に宇佐美に交換条件を持ちかけ、裏金づくりの実態がわかる証拠を渡せと迫るも、脳裏に宝条の笑顔が浮かんだ宇佐美は「全て私が自分でやった」と、黒崎の提案を拒否し、自ら罪を一人でかぶるとした。冒頭で牛山は宝条を「おそろしい人間」と形容していたが、宝条がいかに恐ろしいか、宝条帝国にいる人間はみな身に染みて知っているのだろう。
さらに宝条は、甥の鷹宮輝(時任勇気)のおかげで、牛山と宇佐美をハメた詐欺師が黒崎であることを突き止める。桂木に「この男を野放しにしてはいけない」と宣言し、黒崎の写真を握りつぶす宝条。すると第8話のラスト、黒崎は脱税の容疑でいきなり逮捕されることに。これも宝条帝国の力なのだろうか。
いよいよ宝条との正面対決が近づいてきた『クロサギ』だが、桂木との関係も変化しそうだ。自分が紹介した北海道のシロサギ案件に取り組むことなく、黒崎が宝条を追いかけていることを察知した桂木は「めんどくせぇ……そろそろ終わりかな」とこぼす。そして、自らの“勘”が黒崎を野放しにできないと告げるという宝条の言葉に「そういう勘には従っておくべきだな」と後押しする場面もあった。御木本に「桂木は今のお前の父親だ」と指摘され、激しく動揺していた黒崎は、ついに桂木とも対立していくことになるのだろうか。一方で、黒崎への牽制として、黒崎と親しい吉川氷柱(黒島結菜)に接近していった桂木だが、桂木が黒崎の“クロサギ”業に関わっていると気づいた氷柱が桂木の店をひとりで訪れた際には、「こんな時間にここに来ちゃダメだよ。夜は物騒だからねぇ」と忠告して去っていった。桂木の真意はどこにあるのか。
第9話の予告映像には、黒崎が「あんたの命令には従えない」と言い放ち、桂木が「喰い合いだな」と返す場面があった。宝条との対決に、桂木との決別はどう響くのか。最終回間近の第9話、手に汗握る展開が待っていそうだ。
■番組情報
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系毎週金曜22時~
出演:平野紫耀、黒島結菜、井之脇海、中村ゆり、宇野祥平、時任勇気、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎、三浦友和 ほか
原作:黒丸・夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
音楽:木村秀彬
主題歌:King & Prince「ツキヨミ」
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作:TBS
公式サイト:tbs.co.jp/kurosagi_tbs