今年4月にはじまった朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合・月~土曜朝8時~ほか)が、いろんな意味で盛り上がりを見せています。
朝ドラ通算106作目となる同作は、ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロイン・比嘉暢子(ひが・のぶこ/黒島結菜)とそのきょうだい――兄・賢秀(竜星涼)、姉・良子(川口春奈)、妹・歌子(上白石萌歌)の物語です。
“ちむどんどん”は「心がわくわく」するという意味の沖縄方言。ところが、本作には視聴者からなど厳しい意見も多く上がり、Twitterでは「#ちむどんどんしない」「#ちむどんどん反省会」のタグがたびたびトレンド入り。
今回は、そんな本作の反響を分析します。
「#ちむどんどん反省会」に感じる妙な安心感
じつは筆者自身も、2週目から離脱しようかと悩まされ続けてきた『ちむどんどん』。個人的に今のところ本作最大の癒しである、主題歌『燦燦(さんさん)』(三浦大知)の歌詞「大丈夫 ほら 見ていて」に後押しされてなんとか観続けてきました。
そして、もうひとつの後押しが、Twitterでの盛り上がりです。Twitterでは、ドラマの比較的ネガティブな感想をつぶやく「#ちむどんどん反省会」のタグが毎日多く見られ、最近では「#あなたの違和感はどこから」なんてタグも出現。
朝ドラの視聴歴はエンタメライターとしてまだまだ浅い筆者ですが、それでも多くの人を魅了する朝ドラという文化に、尊敬の意をもって観ています。それでも、本作は、当初より随所でモヤモヤが止まらない…。そんなモヤモヤを「自分だけじゃない!」「やっぱり、これって違うよね!」という共感がTwitter上に多くあり、妙な安心感を抱くのです。
一方で、「#ちむどんどんする」と本作に対して好意的な意見を発信するタグも。これはこれで、「なるほど、こういう捉え方もあるのか!」という発見があります。早々に離脱してしまった方もいるかもしれませんが、筆者のように「ドラマ視聴後、『あさイチ』の朝ドラ受け(※)からのTwitterでのつぶやき確認までがセット」という人も結構多いのではないでしょうか。
※編集部注:出演者による、直前に放送された朝ドラについての短い感想トーク。
視聴者に違和感をもたせてしまった2つの理由
本作について一部の視聴者が違和感を抱いてしまうのには、大きく2つの理由がありそうです。
1つ目は「登場人物の成長過程が見られない」ことです。
基本的に私たち朝ドラ視聴者は、ヒロインが夢や目標に向かって困難な状況や辛い現実と対峙しながら成長していく姿に期待しているはずです。しかし、本作のヒロイン・暢子には、努力の見せ場があまりに少ないと感じます。
「料理人になりたい」という夢ができて、東京に修行に出る(なぜいきなり東京?! という突っ込みはさておき)。そこで夢を叶えるために奮闘する姿が見られると期待しました。しかし結構あっさりと周囲に認められ、なんと出世までするではありませんか?! 料理の腕が上がっていく描写が少なく……直近8月2日の第82話では、ヒロインが「フォンターナ(東京の勤務先レストラン)に来てから、一日も欠かさず料理だけはしてきました」と語りましたが、その努力をセリフだけではなく描いてこそではないでしょうか。
これは、暢子のキャラクターがひたすらに前向きだからということでは済まされないと思うのです。窮地に立つと、すぐに周囲の心優しい大人たちが彼女を助けてしまう。的を射すぎる大人たちからの助言を受けて、暢子が「まさかやー!」「あきさみよー!」(共に驚きを表現)と発したかと思えば、次の場面では一気に問題が解決しているではないですか?! こちらが「まさかやー!」の展開。いやいや…せめてその助言を真摯(しんし)に受け止めて、そこからどう努力したのかを見せてくれよ!端折(はしょ)り過ぎですよ…。