お笑いブームがいよいよ極まってきている。ただただ楽しく観るのもいいが、ふとした瞬間に現代社会を映す鏡となるのもお笑いの面白いところ。だったらちょっと真面目にお笑いを語ってみてもいいのではないか──というわけで、お笑いウォッチャー・タカ&ユージが気になる動きを勝手に読み解く!

ユージ 今年の『女芸人No.1決定戦 THE W』(以下、『THE W』/日本テレビ)は天才ピアニストが優勝しました。発想からテクニカルな部分まで群を抜いていて、大納得の結果です。

タカ 同感です。天才ピアニスト、ヨネダ2000、紅しょうが、最終決戦に残った3組とAマッソは、やっぱりレベルの高さが歴然としていた。すでに売れているAマッソ以外の3組も、今年のほかの賞レースで結果を残してますよね。ヨネダは『M-1グランプリ』ファイナリストになっているし、天才ピアニストは「NHK新人お笑い大賞」を獲ってて、紅しょうがも同大会で決勝に出ています。「女性芸人」とくくらなくても活躍できる人たちがしっかり強さを発揮したな、と。

ユージ Bブロック、Cブロックは紅しょうがと天才ピアニストがそれぞれ満票で勝ち上がった一方、Aブロックの最終戦ではヨネダとAマッソの対決で票が割れました。昨年も審査員だったアンガールズ田中が『アメトーーク』(10月20日放送回/テレビ朝日)で「Aマッソに投票しなかったらファンからInstagramを荒らされた」と嘆いていたので、今年はどっちに入れるんだろう? とドキドキしてしまいました(笑)。

タカ そういえばそんな話題もあった(笑)。マヂラブ野田が最終決戦までずっとヨネダに投票していたのは一貫性を感じました。方法論的に説明がつきにくいけれど、確実にそこに笑いがあるものが好きなんでしょうね。1本目のネタに対するドランクドラゴン塚地の「不条理うんこコント」ってコメントも良かったし。ああいう子どもの発想的なネタをやれるのは男性芸人の専売特許的な空気が昔はあったけど、ヨネダはそれをやれちゃうんですよね。

ユージ 野田がよく言う「コロコロコミック」的な、ウンコチンチンの笑いをあれだけ軽やかにやってのける女性芸人はたしかに初めての存在かもしれません。一方Aマッソは、面接とルッキズムというすごく時事性の高い話題をネタにしてきていることにまず驚きました。描き方として相当きわどいところでしたね。

タカ ルッキズム批判なのか、ルッキズム批判をすごく俯瞰して見ているのか、撹乱しているけれどおそらくは後者の要素もあるんだろうと思いながら見ていました。「セクハラに目くじら立てる人」みたいにもとらえられかねないんだけど、一方でTwitterの反応を見ていると反フェミニズムの人からは「またフェミネタか」的な反応もあるんですよね。そういうふうにどちらかわからないところを狙って突くのは自分はあまり好きではないけれど、Aマッソってそうだよな、とも思いました。

ユージ 加納の場合はそこまで全部意図してやっているでしょうからね。村上が演じてることでアホ寄りになっていてギリギリのところで成り立ってるように見えましたが、批判されてもおかしくはないだろうなとも思いました。ただ、村上が箱ごとガーッと動く場面はめちゃめちゃ笑いましたよ。

タカ そういうおもしろいポイントはあったけど、最終決戦に上がるほど全体が笑えるわけではないとは思いました。もしAマッソがBブロック、Cブロックだったらどうなっていたでしょうね。

ユージ Cブロックだったら最終までいってたかもしれません。でもBブロックだったらやっぱり天才ピアニストが勝っていたんじゃないでしょうか。竹内のツッコミが好きなんですよね。めっちゃ上手じゃないですか? 声も絶妙で。

タカ 審査員にも褒められてましたね。麒麟の川島が紅しょうがを「普段は熊元さんワンマンプレーになるところを今日は2人で点獲ってた」と評していたのもそうですが、コンビにおける強いキャラじゃないほうもちゃんと見てくれてるな、って。昔だったら、特に女性コンビはキャラが強いほうしか見られていなかったと思います。そういう点でも良い審査でしたね。