「パートナーを選ぶの尺度はお金だけではない」という意見はもっともだ。ただ、その一方で「玉の輿」や「ぎゃくたま(逆玉の輿)」という言葉に憧れてしまうのが人情というものだろう。
仮に「一般企業勤務で年収400万円だが親が裕福な富裕層息子A」「一般家庭出身だが年収1200万円の総合商社マンB」がいたとしよう。年齢や容姿、性格、そして貯金額といった本人に関わる他のスペックが同評価だとしたら、どちらをパートナーに選ぶだろうか。
メンズP/LとメンズB/S
男をひとつの会社と見立てて「財務諸表」を測ってみよう。企業会計には、会社がある一定期間に出した損益を表す「損益計算書(P/L)」と、会社が持つ資産を一覧化した「貸借対照表(B/S)」がある。今回は、キャッシュフロー計算書は割愛させて頂く。
本稿では、それぞれをメンズP/L、メンズB/Sと呼ぶことにしよう。P/Lは、大まかに「売上-費用=利益」で計算することができる。メンズP/Lに置き換えると「年収-税金や生活費といった経費総額=キャッシュフロー」となる。
メンズB/Sは、銀行の貯金額はもちろん、株式や債券などの有価証券、不動産など男がもつ資産を一覧化したものだ。メンズB/Sが高ければ高いほど資産を持っているということになる。ただ、住宅ローンを組んで家を買っていたり、アパートローンを組んで不動産投資をしていたりなど「借金をして資産を買っている」場合も、メンズB/Sの高さは上がってしまうので注意が必要だ。
メンズP/LではBに軍配が上がるが…
冒頭の二択に戻ろう。Aは年収400万円、Bは年収1200万円なので、税金や生活費にもよるが、メンズP/LはBに軍配が上がるといえるだろう。少なくとも、AとBが同じ生活水準を保つ限り(実際には難しいが…)、キャッシュフローはBの方が多くなる。
それではメンズB/Sはどうだろうか。今回は「年収以外のスペックは同じ」という設定なので、現時点では、メンズB/Sは引き分けだ。ここまでなら「男の金銭的評価」はBが勝っていると言えるだろう。Bは年収が高いので、豪遊をしなければ毎年のキャッシュフローが積み上がり、メンズB/Sの差は年を経る毎に拡大していく。
「裏メンズB/S」の存在
しかし、ここに「実家」という変数が加わるとどうなるだろうか。仮に、Aの実家は資産3億円、Bの実家は資産3,000万円としよう。AとBが一人っ子であり、資産の増減がないまま受け継ぐとすると、相続税を差し引いても、メンズB/SはAがBを大きく上回る。
「男の金銭的評価」を測るときは、実家が裕福かどうか、いわば「裏メンズB/S」を加味する必要もある。もちろん、Aは相続が起こるまで3億円を自由に使えるわけではないし、実際には相続税で苦労するかもしれない。ただ、宝くじに当たるなどの特殊要因を除き、多額の資産が手元に入ってくるという現象は、退職金と相続くらいのものだろう。
Aが受け取る3億円はどれほど価値があるのだろうか。仮に、Bの毎年のキャッシュフローが「プラス500万円」としても、3億円を積み上げるには60年かかる。3,000万円を両親から相続できるとしても54年かかる計算だ。
上記は資産の複利効果を加味していないが、日本を代表する企業に入社し、朝から晩まで働き、豪遊したい気持ちを抑えて年500万円を捻出し続けても、丸60年かかるのである。それをAは何の苦労もなく、富裕層の家に生まれたというだけで受け取るのだ。