◆「ヤー!パワー!」しか言わないのに成立する手軽さ
それにしてもなぜ、ここまで急激にCM本数が伸びているのでしょうか。「人を傷つけない笑い」「幅広い世代からの支持」の2点は重要な理由だと考えられるものの、まだ不十分にも感じられます。
きんに君が主演するCMを観察すると、凝った設定や演出のものが少ないことに気づきませんか? 衣装も基本的にはいつも通りのタンクトップに短パン姿や上半身裸の姿で、“出オチ”系のシンプルでシュールな内容のものが目立つのです。
俳優やアイドルがその美しさによって、一目で商品イメージを上昇させることができるように、きんに君は「ヤー! パワー!」の圧倒的な勢いと肉体の存在感で、視聴者の心を掴んで離しません。実際に、YouTubeでは「ひらがなをたった一つ発音するだけでこんなにも笑いを取ることができる唯一の人物」との声も上がっているほど。
言ってしまえば、「ヤー!」の叫び声以外は自由な構成が可能。こうした柔軟性も、キャスティングの理由のひとつかもしれませんね。
◆「牛乳を注ぐ男」は189万回再生
記憶に新しい出演作が、タクシーCMとして制作されたecforce「牛乳を注ぐ男」篇です。YouTubeに公開されたCM動画は、なんと189万回も再生されています。
このCMでは、衣装こそフェルメールの《牛乳を注ぐ女》のパロディと凝っているものの、叫びながら穴の空いた甕(かめ)に牛乳を注ぎ続けるだけの展開。やはり構成はシンプルそのものなのに、二度と忘れられない印象的な仕上がりです。
絶大なインパクトを短時間で与えられるのは、TikTokやYouTubeのショート動画との相性もバツグン。Z世代や小学生といった若年層からの厚い支持の秘訣も、ここにありそうです。