◆演技派ジャニーズとして評価

派手な照明とうぐいすのさえずりをまとって堂々と輝く生田斗真は84年、北海道生まれ。11歳からジャニーズに所属し、主に俳優として活動している。演技派ジャニーズのひとりである。

昨今は演技派ジャニーズも増えている印象だが、ジャニーズのなかでアイドルグループに属さず、ピンで俳優活動だけしている者は決して多くない。当初はいくつかのグループに所属していたこともあるが、ジャニーズアイドルとしてCDデビューすることなく、ピン俳優に落ち着いた、特異なタイプである。

アイドル活動をしていなかったからか(でもトーク番組などでバックダンサーとしての踊りをたまに披露するときはたちまちキラキラ溌剌オーラを出す)、2000年代まではヨーロッパの彫刻のように輪郭がくっきりして派手な顔立ちのわりに地味な役を任されている印象があった。

たとえば、義時役の小栗旬と共演した『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』(07年 以下イケパラ)は主人公だし、“イケメンパラダイス”という身も蓋(ふた)もないサブタイトルがついているくらいだからイケメン役で、明るいムードメーカーという属性ではあるが、どこか利他的なムードがあって、ヒロイン(堀北真希)に一途な健気な少年の印象が強かった。

それが最大限に発揮されていた作品が、『ハチミツとクローバー』(08年)や『遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~』(12年)であった。ヒロインを見つめるまなざしに情緒があって、主人公として攻めるよりも、相手の芝居を受けることを大事にすることで、物語の状況を的確に伝える役割を果たしていた。いま思うと、あくまでもアイドルではなく俳優の役割に徹する意識が強かったのかもしれない。等身大の役をやると見事に市井に存在する等身大の青年になってしまう。

映画では『人間失格』(10年)や前述の『源氏物語 千年の謎』(11年)や『脳男』(13年)と神がかった美をもった役を次々に担って評価も受けた。

◆おバカな潜入捜査官役、女性役や難役も

『土竜の唄 FINAL』東宝
『土竜の唄 FINAL』東宝
地に足の着いた若手俳優という印象のあった生田斗真に変化が訪れたのは映画『土竜の唄』(14年)だろう。素っ裸で走る車のフロントに縛られるようなおバカな潜入捜査官役によって、これまでの落ち着いた感を払拭した。彼が内在する巨大なエネルギーと丁寧で緻密な役造形をようやく思う存分、外に出すことができた代表作としてシリーズ化もされた。

『土竜~』の前に蜷川幸雄演出の舞台『ミシマダブル』(11年)で三島由紀夫の『サド侯爵夫人』で女性役、『わが友ヒットラー』でヒットラー役を演じたことも大きかったであろう。等身大の青年や格別に美しい人物という役割ではない、異性の役や解釈の難しいヒットラーという人物を演じたことで自身の能力を生かす場所を拡大したのではないだろうか。

自身の能力を生かす場所の発見の端緒は02年、劇団☆新感線に出演したことがきっかけであろう。ここでものづくりの楽しさを実感し、エネルギーを思う存分発揮できる場所は海のように広いことを知ったのだろうと想像する。

2017年、『彼らが本気で編むときは、』でトランスジェンダーの役を演じたとき、大きな肩幅をすぼめて編み物する仕草に、徹底的に仕草を研究していくことで役の心を掴(つか)み取る俳優だなと感じた。