映画作品で実力を磨いてきた山﨑賢人だが、やっぱりドラマ作品の彼はたまらない魅力に満ちている。毎週日曜日よる9時から放送されている『アトムの童(こ)』(TBS系)は、そんな山﨑の魅力を語るには十分な作品だ。

日曜劇場『アトムの童(こ)』
画像:TBSテレビ「日曜劇場『アトムの童(こ)』」公式サイトより
 天才ゲーム開発者の安積那由他(山﨑賢人)が、卑劣な手を使ってくる巨大IT企業「SAGAS」の妨害を突破しながら、大好きな「アトム玩具」とともにゲーム界に革命を起こそうと奮闘する様子が描かれる本作。主人公たちの努力の汗が滲む物語世界は、TBS日曜劇場らしい重厚さだ。

「イケメンと映画」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、山﨑賢人の「瞳」に込められた正義の光を読み解く。

◆「ぬあ~」のうなり、一本勝負!

 いやあ、この賢人君、超ド級ホームランを打つ気がするな。第1話、ドラマがはじまってまだ15分くらいしか経っていないのに、そんな予感をさせる山﨑賢人という才能に、改めて惚れ惚れする。

 時は2022年、「ジョン・ドゥ」の名前でカリスマ的な人気を誇り、「ゲーム業界のバンクシー」とまでもてはやされたゲーム開発者の安積那由他は、今はゲーム開発をやっていない。那由他の大ファンであるネットゲームカフェの店長・森田聡(岡部大)にお世話になっている。店の手伝いで幕張メッセのゲームショーにきた那由他は、でビラ配りの途中、楽しみにしているものがあった。

 ちいさなボックスの中にカプセルトイが詰め込まれたガチャガチャ、ひとつ300円。那由他は、100円玉を丁寧に入れ、ガチャガチャを回す前に願掛けの拍手をして、いざ回す。ひとつひとつの動作に細やかさを感じる手付き。ぽこんと出てきたカプセルを取り出す。残念、彼の目当てのキャラクターのカプセルではなかった。

「ぬあ~」

 カプセルの中身を確かめた那由他が、甲高くうなり声を上げる。悔しさを全身で表したこの甲高さ、ただのうなり声ではない。那由他にとってのガチャガチャが、一日一回の一本勝負であるように、ここでの山﨑賢人も全身全霊をかけ、全集中でこの「ぬあ~」を発している。優れたギターリフみたいに視聴者の耳にすっと入って、鼻から抜けていくこの感じ。気持ちがいいなんてもんじゃない。こんなうなり一発で、人を虜(とりこ)にする山﨑賢人、やはりただ者ではない。