◆製作総指揮を兼任するクルーニーがコメディの魅力を思いきり発揮

ジョージ・クルーニー
©Getty images for Univesal
ハリウッドスターの仲間内で、ジョージ・クルーニーは最も楽しい人として昔から有名だ。近年は監督業に力を入れ、出演作もシリアスな役が続いたが、『チケット・トゥ・パラダイス』ではコメディの魅力を思いきり発揮する。

クルーニー演じるデビッドと元妻ジョージア(ジュリア・ロバーツ)との関係は最悪。だが、娘がいるために接点は免れない。このふたりのいがみ合いが、最高に笑えるのである。

「僕とジュリアが出会ったのは、『オーシャンズ11』での共演がきっかけだ。あのときはホテルの部屋の床に座って5時間ぐらいふざけた話をしたものだよ。ジュリアとの仕事は、いつもイージーだ」

◆ふたりを意識して書かれた脚本

監督兼脚本家のオル・パーカーは、最初からこのふたりを意識して脚本を書いた。

「オルは、僕とジュリアに同時に脚本を送ってくれた。ジュリアに電話をして、『この脚本、もう読んだ?』と聞くと、彼女は『今、読んでいるところ』と言う。僕が彼女に『君がこの役を演じるのでなければこれはうまくいかないと思う』と言うと、彼女も『同感よ』と言った。そして幸運にも、良い展開になったんだよ」

◆酔っ払うのは何年もかけて研究してきたからね(笑)

ジョージ・クルーニー
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デビッドとジョージアの娘は晴れて大学を卒業したばかり。だが、女友達とバリに旅行中、娘は現地の男性と恋に落ち、結婚を決める。デビッドとジョージアは、なんとかしてこの結婚を止めようとたくらみつつ式に向かうが、そこで数々のドタバタが起こるのだ。

最もファニーなシーンのひとつは、デビッドとジョージアが酔っ払って踊り始め、翌朝ひどい二日酔いになるシーン。クルーニーらのはちゃめちゃぶりは、若いキャストを驚かせたとのこと。

「酔っ払うのは何年もかけて研究してきたからね(笑)。僕らがシーンをやり始めると、若いコたちは怖いものを見ているかのように口をあんぐりと開けたよ(笑)。あのシーンを僕らは誇りに思っている」

◆俳優だけでいるのは危険。別の武器を持たないと

クルーニーとロバーツは、今作で製作総指揮を兼任。

「製作総指揮と製作はかなり違うけどね。製作は実際にお金を集めてきたりしないといけない。僕が製作、監督、脚本をやるのは、違う形で映画に参加するのが大事だから。役者だけだと、キャスティングディレクターに『年を取ってきたな』と、見た目だけで判断されてしまいがち。別の武器を持たないのはこの業界で危険だよ」

演技面だけでなく、クルーニーは若い俳優のモデルとなりそうだ。

『チケット・トゥ・パラダイス』

監督・脚本/オル・パーカー 出演/ジョージ・クルーニー、ジュリア・ロバーツ、ケイトリン・デヴァー 配給/東宝東和 全国公開中

【ジョージ・クルーニー】

俳優・映画監督・映画プロデューサー。’61年、ケンタッキー州生まれ。テレビドラマ『ER 緊急救命室』でブレイク。映画俳優、監督、脚本家、プロデューサーとして活躍。人権弁護士の妻との間に2人の子供を持つ

<取材・文/猿渡由紀>