三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE(以下、三代目JSB)が、デビュー記念日の11月10日に記者会見を行った。9年ぶりの全国アリーナツアー、ニューシングル、初のライブフィルムの公開など、再始動する2023年を盛り上げるギミックを発表。
2022年は、グループ全体としてのライブ活動がお休み状態だっただけに、待ちに待ったリリース解禁だった。では、心機一転する2023年は、三代目JSBにとってどんなパーフェクトイヤーになることだろうか?
「イケメンとLDH」をこよなく愛する筆者・加賀谷健が、「ふたたび始まるドラマ」へ向かおうとしている三代目JSBの今を読み解く。
◆グループ休止状態の理由
三代目JSBにとっての2022年は、どんな年だっただろう? まずはこの大きな問いからはじめたい。もちろん明確な答えはないのだけれど、むしろこの問い自体の重要性を深めるための活動例をいくつかあげられそうだ。
LDHアーティストによるオリジナル番組を配信する「CL」で特別企画された「山下健二郎の古民家で夏休み」の他、グループ全員が揃う目立った活動は特になかった。グループの公式Instagramでは、7月にすべての投稿が削除され大きな話題を集めた。そのかわりに黒い背景色の画面に一本のバラが浮かび上がるという意味ありげなティザー的投稿が、不思議な印象を与えた。大きなサプライズを想像させる不思議なワクワク感に、ファンの想像と期待は高まった。
ライブなどのパフォーマンスに関しては、ほとんどお休み状態だったわけだが、2020年に開催が予定されていたデビュー10周年記念をコロナで2021年にスライドしたアニヴァーサリードームツアー「三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2021 “THIS IS JSB”」を年末に終えて、2022年はここで一息ついただけのこと。
◆2022年のソロ活動を振り返る
今市隆二がパーソナリティを務めるJ-WAVEのラジオ番組「SPARK」では、三代目JSBデビューから丸12年の日、11月10日に放送日があり、こんなことを口にしていた。
「今年はそれぞれソロ活動をして、パワーをためる期間でもあったし、自分たちとしても必要な時間でもあったように思いました。グループで活動する上でも」
2022年、メンバー7人のソロ活動として特にパワフルで精力的だったのは、ツインヴォーカルの今市隆二と登坂広臣だ。
ふたりはそれぞれソロライブツアーを行い、登坂はツアーの合間を縫って、LDH史上最大規模のオーディション『iCON Z ~Dreams For Children~』でガールズグループ部門のプロデューサーを担当。
パフォーマーの岩田剛典もマイクを持ってソロ活動を本格化させ、念願のソロ初ツアー『Takanori Iwata LIVE TOUR 2022 “THE CHOCOLATE BOX”』開催にこぎ着けた。
◆他メンバーのソロ活動も個性あふれる
他のメンバーも相変わらず個性あふれる。リーダーのNAOTOは、西武対楽天戦の始球式で速球と腹筋チラリ見せを披露し、NAOKIは、『貞子DX』(2022年)の主題歌「REPLAY」のミュージックビデオで振り付けを担当。
山下健二郎は、7月にモデルの朝比奈彩と入籍を発表し、ELLYは、「PSYCHIC FEVER from EXILE TRIBE」のデビュー記念イベントにサプライズゲスト登場し、後輩の応援に駆けつけた兄貴分として会場を湧かせた。
2010年のデビュー以来、一度もメンバーチェンジすることのなかったこのスーパーグループは、7人がソロで活動するときにでさえ、それぞれの胸の内にはひとつの集合体意識が深く、清く抱かれている。
◆“機は熟した”記者会見
今年も迎えたグループのデビュー記念日、11月10日にメンバー7人全員が揃って行った記者会見は、すみやかに点呼が取られ、メンバー再集合の清々しい号令となった。まさに、Now the time、機は熟したりという趣だった。それはさらに明確な意味をまだ持たなかったバラの図柄が、再出発のビジョンを得た瞬間だった。
会見の大目玉として発表されたのが、2023年2月18日に静岡公演から開催する全国アリーナツアー『三代目 J SOUL BROTHERS LIVE TOUR 2023 “STARS”~Land of Promise~』。アリーナツアーとしては2014年に開催された『三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2014“BLUE IMPACT”』以来、9年ぶり。ドームよりも距離が近いアリーナでのライブ風景を早くも思い浮かべてか、リラックスしながらもメンバーそれぞれの言葉の節々に自然と熱が込められた。
◆初の「ライブフィルム」
待望のニューシングル「STARS」(2023年2月1日リリース)とともに情報解禁されたのは、コロナ禍の2020年に行なわれたオンラインライブを映画化した初のライブフィルム『JSB3 LIVE FILM / RISING SOUND』(2023年1月)公開だ。「ドルビーシネマ」の超立体的な音響空間で楽しめるというから、どんな歴史的なライブフィルムとなるのか、2023年1月の公開が待ち遠しい。
2015年に開催された初の単独ドームツアー『三代目 J Soul Brothers LIVE TOUR 2015 “BLUE PLANET”』の舞台裏を捉えた『Born in the EXILE ~三代目 J Soul Brothersの奇跡~』(2016年)は、初のドキュメンタリー映画だが、EXILE魂を画面のいたるところにみなぎらせ、全編に刻んだ胸熱なフィルムだった。今市と登坂が共作で作詞した同作の主題歌「Born in the EXILE」の「愛をありがとう 夢をありがとう」という歌詞が、メンバーとファンの心を強く結んだ。
三代目JSBのファンのことを公式に「MATE」と呼ぶが、そんなMATEへの愛を常に公言してきた。グループのSNSでは、2023年の全国公演に掛けて、「#三代目が愛にいきます」と、彼ららしい表現でハッシュタグをつけていた。ライブフィルムでも、また愛が溢れるフレーズが繰り出されるのだろうか?
◆「再び始まるドラマ」へ向かって
2021年のドームツアー『“THIS IS JSB”』の福岡千秋楽公演では、筆者も客席にいたひとりだった。公演日は12月26日、1日遅れのクリスマスナンバー「Last Christmas」は、さすがにしみた。本家のWham!はもちろん、EXILEカヴァー版を三代目JSBがその遺伝子を受け継いで歌い継ぐ。それだけで胸熱だったのに、やおらサンタクロースの衣装をまとったサンタ臣(登坂)とサンタ典(岩田)が登場し、ポカンと上を見ていた岩ちゃんの表情が、またたまらなかった。千秋楽の余韻はそのまま次の年まで残り、薄れなかった。2022年に事実上活動がとまっていても、その余韻を残す記憶が心強く頼りになったのは、筆者だけではないだろう。
「RAISE THE FLAG」(2019年リリース)でテーマカラーをコンセプトに、グループの出自やアイデンティティを再確認したのが2019年元旦だったが、ビッグアナウンスは年のはじめに持ってくる三代目JSBの習わし。今年はデビュー記念日にビッグなリリースを解禁した彼らが、再始動に向かって迎える2023年の元旦、やっぱりとんでもないサプライズが投下されるのか。
6thアルバム『THE JSB LEGACY』(2016年リリース)の最終トラックとして収録されたカヴァーナンバー「銀河鉄道999(三代目 J Soul Brothers ver.)」の歌いだしはこうだ。
「さあ行くんだ その顔を上げて 新しい風に 心を洗おう 古い夢は置いて行くがいい ふたたび始まる ドラマのために」
誰もが知る名曲を大胆にもEDM調にミックスし、三代目JSB特有の4つ打ち爆音ビートがマジカルな響きを持っていたこのカヴァーの歌詞にあるように、彼らは、2023年に「ふたたび始まるドラマ」へ向かって「その顔を上げて」いるところだ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu