長澤まさみが主演を務め、眞栄田郷敦、鈴木亮平が出演するドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系、月曜夜10時~)。実在の複数の事件から着想を得て描かれた作品で、毎話、脚本家・渡辺あやとプロデューサー・佐野亜裕美をはじめとする作り手の強い想いを感じます。

エルピス ―希望、あるいは災い―
画像:カンテレ・フジテレビ系『エルピス―希望、あるいは災い―』公式サイトより
そんな骨太な『エルピス』ですが、11月7日に放送された第3話では長澤と鈴木の濃厚なキスシーンが話題に。まさか鈴木亮平に、ここまで悶絶させられるとは…彼は一体どれだけの引き出しをもっているのでしょうか。

今回は『エルピス』と、俳優・鈴木亮平が放つ色気について語りたいと思います。

※この記事には、第3話までのネタバレを含みます。

◆鈴木亮平の新たな顔も見られる『エルピス』を1分で解説

主人公は、「10年に一人の逸材」ともてはやされ、ゴールデンタイムのニュース番組サブキャスターまで務めていた大洋テレビのアナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)。スキャンダルを機に、局内で“制作者の墓場”と揶揄(やゆ)される深夜の情報バラエティー番組『フライデーボンボン』のコーナーMCへと転落していました。

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そんな恵那が、同番組の新米ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)から、女性連続殺人事件の犯人とされる死刑囚の冤罪(えんざい)疑惑のネタを持ちかけられます。

事件の真相を追い始める恵那と拓朗。第3話では、自白を強要した刑事や被害者遺族のインタビューなどを集め、冤罪疑惑を提起するVTRを作り上げますが、大洋テレビの局長に「放送不適切」と判断されます。しかし、恵那は番組の本番直前で自分が担当するVTRを独断で差し替え。問題のVTRが生放送で流れ……という衝撃展開でした。

恵那の“正義”がついに世間に向かって放たれ、どのような反響を呼ぶのか。今から第4話の放送が待ち遠しい…まさに社会派ミステリーです。

◆まったく全容がつかめない男、“斎藤”鈴木亮平

鈴木亮平の役どころは、恵那と同じ大洋テレビの報道局でエース記者の斎藤正一。拓朗の新入社員時代の指導担当を務めていたことから、恵那と拓朗が追っている女性連続殺人事件の冤罪疑惑について相談に乗ります。実は正一は恵那の元恋人であり、彼女が転落するきっかけとなったスキャンダル・路チュー写真の相手でもありました。

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表向きは報道局の官邸キャップを務め、政権中枢の要人とも懇意な間柄を築き、巧みに渡り合う“デキる男”。しかも後輩の面倒見まで良く、鈴木亮平のマスクも手伝い“優しい先輩”感も醸し出しています。しかし、いまいち真意が読めないのです。

実際、恋人・恵那との路チュー写真が世間を騒がせた際も、彼女を守らず不誠実な対応をしたと明かにしました。元警察庁長官で、政界に相当な幅を利かせている副総理・大門雄二(山路和弘)と懇意にしているのも気になります。

本作ではきっと、善悪を単純な物差しで描くことはないでしょうから、正一がいい人かどうかは問題ではありません。真意も性質も未だ不明な正一が、今後どのような役割を担って、ドラマを展開させていくのか注目の存在です。

◆徹底した役作りとその演技力は言わずもがな

鈴木亮平といえば、肉体改造を含む徹底した役作りでも知られていますよね。TBSドラマ『天皇の料理番』では結核を患う役を演じるために20kg減量、巨漢のヒーロー・剛田猛男を演じた青春映画『俺物語!!』では30kgの増量をしたという話も有名です。

『エルピス』では、シュッとした“デキる男”らしい細マッチョに仕上げられており、その素晴らしいスーツの着こなしには惚れ惚れしてしまいます…。

『天皇の料理番』
画像:TBSテレビ60周年特別企画 日曜劇場『天皇の料理番』公式サイトより
そんな鈴木ですが、演技力がとにかく圧倒的なのは言わずもがな。肉体改造はあくまでも役に説得力をもたせるためのものでしょう。

筆者が彼を意識し始めたのは、ドラマ『メイちゃんの執事』(2009年、フジテレビ系)で演じた、13歳の少女の執事役・大門でした。少女を守る真摯さと優しい笑顔が印象的。そこからの快進撃は、皆様の知るところと思います。映画『HK 変態仮面』(2013年)で屈強な筋肉美とコメディの才能を披露したかと思えば、TBSドラマ『天皇の料理番』では、病に冒され痩せこけていきながらも、夢を主人公である弟に託す姿で感動を呼びました。一転、30kgの増量をして挑んだという青春映画『俺物語!!』では、ピュアな巨漢のヒーロー・剛田猛男を演じています。

◆亮平が放つ大人の色気に悶絶してしまう

こうして振り返ると、鈴木亮平がこれまで演じてきた役柄は、比較的“好青年”が多かったことが分かります(映画『孤狼の血 LEVEL2』で演じた超絶悪役のような例外もありますが)。そんな背景を含めての、『エルピス』での鈴木亮平キャスティングは絶妙。

本作でも表向きはその“好青年”っぷりがにじみ出ていますが、「ただの好青年」では終わらないのが鈴木の真骨頂。どんな好青年役もそれ一辺倒にならず、各々の人間性をにじみ出させているのです。第1話のランチ風景ひとつにも、自身がエリートであることを自負している感が満載でした。

そして第3話。SNSでも大きな盛り上がりを見せた長澤まさみとのラブシーンは鼻血もの。タバコを吸う仕草(体調不良者を前にした喫煙の是非はさておき)に、濃厚なキス。そしてコトを済ませてスーツを着るシーンまで。鈴木亮平という俳優に、ここまで男の色気を感じたのは初めてでした。冒頭にも書きましたが、彼は一体、どれだけの引き出しをもっているのでしょう。

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衝撃の冤罪疑惑VTRが放送され、事件がどう展開していくのか。マスコミ、警察の闇にどう切り込んでいくのか。とにかく作品として続きが気になる『エルピス』。一方、第4話でもまた亮平の色気を……と、どこかで期待してしまう筆者でした。

<文/鈴木まこと(tricle.llc)>

【鈴木まこと】

tricle.llc所属。雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Twitter:@makoto12130201