こんにちは。恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。

ごく稀にですが、「マッチングアプリで出会った相手にお金を取られた」というお問い合わせがあります。そんな時「私より、まずは弁護士に相談しよう」とご案内していました。

スマホを見て落ち込む女性
写真はイメージです(以下同じ)
ところが昨今、そんなマッチングアプリ詐欺や国際ロマンス詐欺(※編注:オンラインで外国人を装って相手に恋愛感情を抱かせ、結婚を匂わせるなどして大金を払わせる詐欺)の被害者が、「『お金を取り戻します』と言ってくれた弁護士に相談して着手金も払ったのに、お金が戻ってこない」という二次被害のケースが増えているそうです。

何が起こっているのでしょうか。東京弁護士会に、実情を取材することにしました。

◆業者とグルになって金儲けする弁護士が?!

お話を聞いたのは、東京弁護士会の「非弁提携弁護士対策本部」の委員会の方々。

「非弁提携(ひべんていけい)」とは初めて聞いた言葉ですが、分かりやすく表現すると「社会的信用が高い弁護士と、弁護士ではない業者が結託して、金儲けをすること」だそうです(法曹界のみなさま、厳密には違うというご指摘はご容赦ください)。

「非弁提携弁護士対策本部」は、そうした非弁提携弁護士による、国際ロマンス詐欺被害者の「二次被害」の苦情対応や、被害の拡大防止にも取り組んでいます。

◆弁護士の「広告」を見て依頼したら…大後悔

私もそうですが、多くの人は弁護士に相談した経験がないので、気軽に相談できる親しい弁護士もいないでしょう。そこで「弁護士の広告を見て、騙し取られたお金の回収を依頼したのに、期待外れだった」というケースが多々あるというのです。

国際ロマンス詐欺
危険な弁護士の見分け方(画像は筆者の作成したイメージです)
知人に弁護士がいないからとネットで「国際ロマンス詐欺 弁護士」などと検索して弁護士を探すケースが多いようですが、そうした探し方をするのには危険が伴います。検索キーワードに連動して表示されるリスティング広告を「検索上位」と思い込んでクリックし、そのまま依頼、しかし広告に書いてある通りの成果が得られない…ということもあるそうです。

◆国際ロマンス詐欺で騙し取られたお金を取り返すのは、非常に困難

「まず大前提として、国際ロマンス詐欺で騙し取られたお金を取り戻すのは非常に困難なんです。まじめな弁護士はそのことを知っているので、頼まれればやるかもしれないけれど、広告を出してまで積極的に専門でやろうとはしません」(東京弁護士会の方々/以下カッコ内同)

取り返せないことが多いというのは、どういった理由からなのでしょうか。

カード
「国際ロマンス詐欺での送金のさせ方は、口座振り込みと暗号資産(仮想通貨)の2つのパターンがあります。暗号資産で払ったものを暗号資産で取り返すのは事実上不可能です。そのため、『暗号資産による支払いの場合でも取り戻せる』と言うところは気を付けたほうが良いでしょう。

口座振り込みで送金したとしても、詐欺師はいつまでも口座にお金を置いておかず、入金されたらすぐ出金してしまうことが多いのです。

弁護士がサイト上で『相手の口座凍結ができる』と説明していることがあるのですが、弁護士なら誰でも口座凍結はできます。

でも残金のない銀行口座を凍結したところで、騙し取られたお金は戻ってきません」

◆詐欺に遭い、焦って困っているタイミングでまた騙される

「たまたまお金がある口座を凍結できたとしても、複数人の被害者がいることが多いので、差し押さえたお金は被害者の人数と被害額に応じて割ることになり、戻ってきてもごくわずかなのです。

ごくまれに取り戻せた事例はないわけではないようですが、特殊な事情によるレアケースであって、繰り返しますが、国際ロマンス詐欺被害にあった場合のお金は取り戻せないことの方が圧倒的に多いのです」

詐欺被害
国際ロマンス詐欺で取られたお金を確実に取り返せるように期待を抱かせる広告は、誇大広告に該当するはずです。「弁護士広告規程」でも、誇大または過度な期待を抱かせる広告は禁止されているそうです。

詐欺に遭い、焦って困っているタイミングで、弁護士という専門家から「大丈夫。取り戻します」と言われたら信じたくなるのも分かる気がするのですが、そういう弁護士こそが危険なのだそう。

◆被害者が増えているところに、目ざとい広告業者が狙いをつける

なぜそんな、国際ロマンス詐欺の被害者に誤解を与える広告が掲載されるのでしょうか?

「国際ロマンス詐欺被害者の回復を謳う弁護士の、問題のある広告が掲載される要因は3つあります。

1つ目の要因は、SNSやマッチングアプリの出会いが普及し、国際ロマンス詐欺件数が増加し被害額も大きくなっていることです。着手金(編注:弁護士に事件を依頼した段階で支払う金額。事件の結果に関係なく、返還されない)は被害額に対して2~3%と謳う弁護士が多いですが、いざ委任契約となると色々理由を付けて5~10%とする場合もあります。

いずれにせよ被害額に対する割合で着手金額を決めるので、被害額が大きければ着手金の額も大きくなりやすいのです。

国際ロマンス詐欺被害者の方は弁護士に数十万円の着手金を支払っていることが多いです。被害額が大きい場合は着手金だけで数百万円という場合もあります。

◆常に簡単に儲かりそうなことを探している広告業者たち

被害者を食い物にしようとするなんて、本当に恐ろしい人たちがいるものです。

暗闇でPCを操作する人
「次に、インターネット広告業者との非弁提携は昔からありました。以前は、債務整理や、過払い金請求のリスティング広告を出す業者との非弁提携が問題になっていました。それらが下火になり、新たに着手金が高額になりそうなものに目をつける広告業者がいるのです。

常に簡単に儲かりそうなことを探している広告業者は、国際ロマンス詐欺の非弁提携が下火になったとしても次のビジネスモデルを考えるのではないでしょうか」

◆困った時「国際ロマンス詐欺 弁護士」で検索してはいけない

問題のある広告が掲載される要因の3つ目は。

「3つ目ですが、弁護士広告と弁護士報酬の自由化の影響もあるのかと思います。かつて弁護士広告は原則禁止で、弁護士報酬(着手金等)も業界統一料金表とでもいうべき基準がありましたが、弁護士広告は2000年10月に、弁護士報酬は2004年4月に自由化されました。

もちろん全ての弁護士広告がダメなわけではないのですが、弁護士も増え競争が激しくなっていく中で、弁護士広告に対しての認識の甘い弁護士も増えています」

誇大広告を出している弁護士事務所のことは、取り締まらないのでしょうか?

「弁護士の非弁提携は各地の弁護士会が取り締まりを行っていますが、件数も多く追いつかないのです。悪質なものは懲戒請求を行っており、業務停止などの処分が下ります。しかし中には何回も業務停止になっている弁護士もいるのです」

『国際ロマンス詐欺 弁護士』で検索すると、日々、異なる法律事務所の広告が出てきます。気になってそこに出てくる弁護士の名前で再検索してみると、業務停止歴がある弁護士も出てきました。

引き続き東京弁護士会に取材し、後編では弁護士選びのポイントと、もし弁護士が怪しいと感じた場合の対策についてお伝えします。

【東京弁護士会】

約8900人の会員数を誇る日本最大級の弁護士会。市民からの信頼回復のため、国際ロマンス詐欺被害者の弁護士二次被害の苦情対応や、二次被害拡大防止にも取り組んでいる。

参考:国際ロマンス詐欺案件を取り扱う弁護士業務広告の注意点(東京弁護士会)

<取材・文/菊乃>

【菊乃】

恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt