さまざまなセクハラの中でも、女性にとって特に嫌なのが「セクハラ」。コンプライアンス遵守が叫ばれる中、徐々に減ってきていますが、ほんの数年前はもっと被害に遭う女性も多かったかもしれません…。今回は実録シリーズ「私達の身近な「セクハラ」」から、過去の人気記事を再録します(初公開2018年1月8日、情報は掲載当時のものです)。
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昨今、ジャーナリストや広告クリエイターによるセクハラ被害が問題になっています。比較的、女性の割合が多いマスコミ・広告業界でももちろんのこと、もっと女性が少ない業界や職種は、より一層の男社会で、セクハラを受けることが多いようです。
「自衛隊はまさにその典型かもしれません。最近は私のような女性自衛官も増えていますが、昔も今も超がつくほどの男社会です。一般企業なら問題視されるようなセクハラも日常的に起きています」
そう明かすのは、女性自衛官の伊藤恵美さん(23歳・仮名・陸上自衛隊/独身)。
確かに、防衛省のホームページを調べると、平成28年度末時点の女性自衛官の割合は6.1%。男女比およそ9:1というのは、主要業種と比較してもダントツに低く、数字のうえでも男社会であることがうかがえます。
◆初対面の先輩隊員は、第一声からセクハラ発言
「入隊後は会社における新入社員研修に相当する前期教育、後期教育というのが約半年間あって、その後に補給などを担当する後方支援の部隊に配属されました。
でも、初日に挨拶を済ませた直後、初対面のある男性隊員からの第一声は『お前、男の子みたいだな』って。ある程度の覚悟はしていたけど、デリカシーのかけらもない一言に入隊したことをちょっと後悔しました」
ちなみに女性自衛官は入隊後半年間の教育期間は、髪は耳出しのベリーショートにしなければならないとのこと。
◆「胸が大きいと、ほふく前進がやりにくいもんな」
恵美さんは「女性自衛官にはメンタルの強い女性が多い」と言いますが、それでも短髪がコンプレックスになっている女性隊員は多いそうで、彼女たちの間ではウィッグが外出時の必須アイテムになっているそうです。
「とはいえ、その程度ならそこまで気にしません。しかし、その男性隊員は後日居酒屋で開いてくれた私の歓迎会の席でも絡んできて、『女性としての色気がない!』、『俺は目の前に裸のお前がいても勃たない自信がある!』としつこいほどにダメ出しをしてきたんです」
さらにこの様子を見ていた別の男性隊員からも「胸が大きいと、ほふく前進がやりにくいもんな」、「演習のとき、邪魔にならなくてよかったな」と貧乳であることを半笑いでイジられたといいます。
◆「セクハラを気にしていたら務まらない」!?思い込まされる組織文化
「途中で先輩女性隊員が間に入って席を離してくれたので助かりましたが、なぜここまで言われなきゃいけないんだと思ったらものすごく悔しかったです。
本人は言葉のセクハラという意識はまったくないのが余計に腹立たしく、上官も注意をするどころか『すっかり仲良しだなぁ』とトンチンカンなことを言い出す始末。これが自衛隊のリアルな実情なんだと身をもって知りました」
恵美さん自身は切り替えが早いほうなので引きずることはないそうですが、「この2人の隊員だけは絶対に許さない!」と怒り心頭。ただし、相談窓口や監査に訴えるようなことはしていないそうです。
「普通に会社勤めしていたらとっくに抗議していますが、ここは自衛隊です。あくまで私の考えですが…この程度で文句を言ったら負けたような気がして。ただ、あまりにムカついたので、頭の中では訓練で使う64式小銃で何度も撃ち殺していますけどね(笑)」
“文句を言ったら負け”と考えるように刷り込まれてしまう組織文化が恐ろしいですね…このままでは一向にセクハラ被害は減らないでしょうし。彼女がセクハラ隊員を脳内射殺する日々はまだまだ続きそうです。
―私達の身近な「セクハラ」―
<TEXT/トシタカマサ イラスト/鈴木詩子>
【トシタカマサ】
一般男女のスカッと話やトンデモエピソードが大好物で、日夜収集に励んでいる。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。