異性についての価値観は人それぞれ。相手の自分への接し方を見てどう思われているかを知り、合わないと思えばそれ以上距離が縮まることはありません。

一方で、こちらの思惑と無関係に近づいてくる異性もいて、その姿に「こちらを狙っている」と悪意をもって決めつけてしまうと、かえって自分が窮屈(きゅうくつ)な思いをします。

落ち込む女性
写真はイメージです(以下同じ)
「私はオトコに狙われやすいの」と話す女友達の振る舞いに辟易(へきえき)した西田サチコ(仮名・32歳)さんは、「そう思うのは勝手だけど、何かあったときに他人を巻き込むのは違いますよね。友達だからって、私をトラブルの解決に使う姿にぞっとしました」と、ある友人と縁を切った顛末(てんまつ)について話を聞かせてくれました。

◆女性らしさを自覚しても武器にしない女友達

ジムで知り合ったA子さんは、西田さんの一つ下の年齢で話しやすく、一緒にレッスンを受けたりジムを出てからお茶をしたり、楽しくお付き合いができていたといいます。

「すごく可愛い顔というわけではないけれど、スタイルが良くて肌はきれいな色白、髪はいつもつやつやで、女性の色気があふれる姿でジムでは目立っていたと思います」

スポーツジムの女性たち
西田さんがいいなと思ったのは、「露出が高いウェアを着るとか男性にすり寄るとか、女性らしさを武器にしないところ」。

どちらかといえば男性を遠ざけている雰囲気があり、ジムで特定の人との変な噂など聞いたこともなく、女同士なら打ち解けた笑顔を見せてくれることから気さくに付き合えていたそうです。

◆「私はオトコに狙われやすいの」

「ちょっとおかしいなと思ったのは、浮気性で有名な男の会員さんにウェアを褒められたら『あの人、○○さんにも手を出してなかった?』と全然関係ないことを言い出して、そうだっけと答えたら『私まで狙うつもりかしら』って、飛躍(ひやく)がすごいことにびっくりしました」

ほかにも、ジムの男性スタッフに挨拶をして無視されたことを西田さんに話したときは「別にこっちは好きとか思っていないのに、無視するって失礼だし自意識過剰だと思わない?」と、男性スタッフの気持ちを勝手に決めつけては怒ることもあったそうで、「聞こえなかった可能性もあるし、気にしないほうがいいよ」となだめていたそうです。

「自意識過剰なのはあなたでしょ」と思うけれど言えるはずがなく、Aさんが「私はオトコに狙われやすいの」と口にするたびに違和感を覚えていました。

◆「スタイルが良くてか弱い女が狙われるのよ」

A子さんがどうしてそこまで男性の態度を気にするのか、「男に狙われやすい」とみずから言うことについて、西田さんは「何かあったの?」と聞いてみました。

「昔ね、○○に住んでたんだけど、電車でよく痴漢にあったの。私、胸が大きいでしょ? オッサンにちょっと触られたりバッグを押し付けられたり、本当に嫌な思いをしたの。今の会社でもね、上司が私の胸を見て『制服が合わないんじゃないか』とか言うのね。あと、男性陣が私の胸をチラチラ見ながら話していることもあって本当に失礼じゃない?」

満員電車
A子さんが話す過去の「被害」は、確かに女性ならつらいなと共感できることもあるけれど、「オトコはスタイルが良くてか弱い女を狙うのよ」と言い切る姿には思い込みの激しさも見えたといいます。

◆相手が自分に注目していると決めつける

「挨拶されたくらいで自分に好意があるとか、何度か目が合って話しかけてきたから待ち伏せされそうで怖いとか、相手の本心はわからないのに自分に注目していると決めつけるのが怖かったです」と西田さんは話しますが、それより困るのは

「私が彼女に声をかけた男性と話していたら、『どうだった? 大丈夫だった?』っていちいち聞いてくるんですよね。ただの世間話だよって返したら、どんな内容だったのか相手は既婚か独身か、どこで働いているのかって質問してきて、そんなことまで把握できるはずないじゃないですか」と、情報収集の手段にされることだったといいます。

そんなことが重なり、西田さんは少しずつA子さんと距離を置き始めます。

◆告白されてもないのに「あなたが代わりに断って」

A子さんと離れる決定打となったのは、独身の50代男性から独身かどうかを聞かれたA子さんが、「あなたからお断りしてよ」と西田さんに伝えてきたとき。

独身かどうかの確認について何を「お断り」するのか、なぜそれを自分がしなければいけないのか、「意味がわからず混乱しました」と西田さんは振り返ります。

拒否する女性
男性の言葉を失礼に感じデリカシーのなさに腹が立つのはわかりますが、それを「友人を使って何とかしようとする」A子さんに、「悪いけど、私を巻き込まないでほしい」ときっぱり伝えたそうです。

「さすがにこれ以上付き合えないと思いましたね。私がヘラヘラ笑っていろんな人と話すのを見て、その男の人にも物を言えると勘違いしたのかもしれませんが、悪いけど関わりたくないです。断るって、どう言うんでしょうね? 独身だけどあなたとはお付き合いできませんとか?」

◆「彼女の盾にされるのはごめんです」

それ以降、A子さんが西田さんに話しかけてくることはないそうです。

LINEでの連絡もなくなり、「ちょっと寂しいけど、彼女の盾にされるのはごめんです」と西田さんは話します。

憂鬱な表情をした女性
実際にA子さんが男性に「狙われやすい」のかどうかはわかりません。

自分への態度を大げさに受け取ってしまう、自分の思い込みでネガティブなほうに感じてしまうのは、過去の経験から仕方ないともいえます。

それでも、異性の振る舞いに過敏になるのは自分の問題であり、他人にも同じように感じて、自分を助けてというのは、筋が違うのではと感じます。トラブルを設定して他人を巻き込むのは、かえって自分の印象を下げることになると、忘れてはいけません。

―私のヤバい女友達―

<文/ひろたかおり>

【ひろたかおり】

恋愛全般・不倫・モラハラ・離婚など男女のさまざまな愛の形を取材してきたライター。男性心理も得意。女性メディアにて多数のコラムを寄稿している。著書に『不倫の清算』(主婦の友社)がある。