日本のみならず世界に知られるホラークイーン「貞子」シリーズの最新映画『貞子DX』が公開中です。小芝風花さん演じるIQ200の大学院生・文華が、「貞子」の呪いを解明すべく奔走する本作。『99.9-刑事専門弁護士-』シリーズの木村ひさし監督の演出で、これまでとは違った「貞子」作品になっていることも話題です。

小芝風花、『魔女の宅急便』でのデビュー当時は「不安だった」
小芝風花さん
 主演を務める小芝さんに、脚本にはなかった印象的なポーズ誕生の裏側など、本作についてはもちろん、老若男女から支持される小芝さんの快進撃の始まりであるスクリーンデビュー作『魔女の宅急便』(2014)当時について直撃。「あんなのキキじゃない」と思われているんじゃないかと不安だったという正直な心境を明かしてくれました。

◆独特の決めポーズは現場で生まれた

――貞子モノでありつつ、木村監督作品ということで、どうなるのか楽しみでしたが、「なるほど」の出来でした。小芝さんの演じた文華も、笑わないヒロインながら、コメディセンスも必要な役でハマっていました。

独特の決めポーズは現場で生まれた
『貞子DX』より
小芝風花さん(以下、小芝)「ありがとうございます。今回、『貞子』シリーズ最新作の主演というお話をいただいて、歴代いろんな方が出演されている、世界的にも有名なシリーズなので、本当に嬉しかったです。最初に脚本を読んだときは、文華はもう少し冷たい印象でした。でも現場での木村監督の演出で、人間味や細かな反応が足されていき、あのような形になっていきました。最初はIQ200なんてどうしようと思いましたけど(笑)」

――文華は集中して記憶を探る際に、チラシにもある、耳を覆うような独特のポーズをします。冒頭から登場する印象的なしぐさですが、あれは脚本に書かれていたのですか?

小芝「脚本にはありませんでした。冒頭のシーンがクランクインの日だったと思いますが、その時に監督が『こういうのやってみる?』とおっしゃって、最初は正直、『冗談かな?』と思いました(笑)。でも角度とかスピードとかすごく細かく演出を受けて、監督にとってめちゃくちゃこだわりポイントなんだと感じましたね。王司(川村壱馬)が鼻を触るポーズも現場で出来上がったそうです」

◆コロナ禍に覚えた危機感

――そうなんですね! 感電ロイド(黒羽麻璃央)と3人で、さまざまな難題を解決していく姿をシリーズものとして見たくなりました。さて、本作では“貞子”がウイルスであるとされます。現実もいまだコロナ禍が続いていますが、この期間を通じて小芝さん自身に変化はありましたか?

コロナ禍に覚えた危機感
『貞子DX』より
小芝「ひとつの作品を無事に撮り終えることの大切さを改めて感じるようになりました。映画は1年くらい前に撮影を終えたりしますが、特に連続ドラマになったりすると、放送が間に合わないんじゃないかと危機感を覚えたときもありました」

――実際、ドラマ『美食探偵 明智五郎』のときには放送が中断しました。第6話のコロナ禍だからこその演出は、結果的に、非常に新鮮で作品の中でも効いていて感動したのを覚えています。

小芝「あのときの撮影は、いつもとは手順も違って、テストもなしで、すぐ本番でした。ただ内容的にも緊張感がうまく活きた撮影でした。でも実際に撮影が止まって、このまま作品が終わってしまうかもしれないといった恐怖心はすごくありました。『このままもうお仕事できないのかな』と、初めての感覚で、すごく怖かったです。なので今こうして撮影できていること、ちゃんと作品が公開されるというのは本当に嬉しいです。1つ1つのお仕事が、本当にありがたいと感じています」

◆自分のことばかり考えていたことが恥ずかしく

――デビューから10年を超えましたが、スクリーンデビュー作『魔女の宅急便』での主演は、非常に話題になりました。

自分のことばかり考えていたことが恥ずかしく
『貞子DX』より
小芝「あの時はまだこの世界に入って1年半くらいで、初めてオーディションで勝ち取った役でした。もちろん嬉しかったですが、経験もなければ力もなくて、ただがむしゃらにやるしかありませんでした」

――やはりプレッシャーは。

小芝「すごくありました。アニメーションのイメージがとても強かったので、撮影現場に入ってしばらくは、『あんなのキキじゃない』と、ファンの方だけじゃなくスタッフさんからも思われているんじゃないかと勝手に思い込んでしまっていました。

 でも撮影部、録音部、照明部、いろんなスタッフさんがひとつの作品をより良いものにするために、それぞれの仕事をプロフェッショナルにされている姿を見て、自分のことばかり考えていたことが恥ずかしくなりました。そして、みんなを引っ張っていく主演という形もありますが、主演って、みんなに支えられてなるものなんだなとすごく感じました。とても大きな出来事でしたね」

◆『マッサージ探偵ジョー』で転機

――16歳でのスクリーンデビュー作でそう感じられるのはすごいです。その後、キャリアを重ね、ここ数年、特に『トクサツガガガ』(2019)からの快進撃が止まりません。

『マッサージ探偵ジョー』で転機
『貞子DX』より
小芝「まじめな役が多かったのですが、テンションがかなり高くて表情がころころ変わるような役を19歳のときの『マッサージ探偵ジョー』(2017)で初めて演じたんです。そして『トクサツガガガ』にも出させていただいて。とにかく撮影が楽しくて。

『トクサツガガガ』は原作のある作品ということで不安もあったのですが、受け入れてもらった感覚がありました。特撮だけでなくて、観ていただいているみなさん、それぞれにいろいろ情熱を注げる好きなものがあって、内容的にもみなさんにリンクしたようで、多くの反響をいただけて嬉しかったです」

◆今までとはちょっと違う役になった

――チャーミングな役柄がお似合いの小芝さんですが、とても素敵なお芝居をされるので、これからさらにいろんな面を見たいです。

今までとはちょっと違う役になった
小芝「ありがとうございます。表情がコロコロ変わるようなコメディテイストの強い作品は私も大好きですが、ほかにもいろんな役を演じたいです。いつもみなさんの声がめちゃくちゃ励みになっています。SNSなどでも、みなさんから『面白かった』とコメントをいただくと、次も頑張ろうと思えますし、芝居の幅を広げていきたいと感じています。年齢も25歳になったので、少しずつ落ち着いた雰囲気も出していきたいです」

――ありがとうございました。最後に本作での「私のここに注目!」というポイントを教えてください。

小芝「えー、私のですか? そうですね。なにしろIQ200ですから、そうした面は今まで絶対に出せていない部分です(笑)。もし私自身が貞子のビデオを見ちゃったら、絶望して何もできませんけど、それを文華は『科学的に解明できます!』と進んでいきます。笑顔がないという役も、これまでそんなに多くないので、それこそ今までとはちょっと違う役かなと思います。ぜひ楽しんでください」

(C) 2022『貞子DX』製作委員会

<撮影・文/望月ふみ>

【望月ふみ】

70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi