0歳児健診などの機会に、絵本をひらく楽しい「体験」と「絵本」をセットでプレゼントする活動「ブックスタート」の開始から20年が経過した。

その活動は全国に広がり、20年間で約830万人の赤ちゃんが対象となった。

「ブックスタート」とは


「ブックスタート」は、赤ちゃんとその保護者に、読みきかせの「体験」とともに「絵本」をプレゼントする自治体の子育て支援事業だ。

英国で発祥し、2001年に世界で2か国目として日本で開始。地域に誕生した「すべて」の赤ちゃんを対象とする同事業は、障害の有無や国籍等に関わらず誰一人取り残さない活動であること、また、官民協働によるパートナーシップが発揮されることから、SDGsの観点でも新たに注目が集まっている。

9月末時点で全国の63%にあたる1,099自治体で実施(※1)。読みきかせの「体験」を特徴とする「ブックスタート」事業以外にも、絵本の配付のみを行なう自治体もあり、そうした事業も含めると全国の81%にあたる1,424自治体で「赤ちゃんへの絵本贈呈事業」が実施されている(※2)。

「ブックスタート」の今


同事業の2001年の普及率は1%。しかし、開始後数年で活動が急速に広まり、2005年の普及率は31%に。2022年以降に20年の節目を迎える自治体もあり、記念イベントを開催する例も見られる。

また、コロナ禍や財政難のなかでも「ブックスタート」を継続、開始する自治体もある。他者との交流がしにくい今、ブックスタートは、孤立しがちな親子に絵本を介してホッとできるひとときを届け、子どもの育ちを地域全体で支える仕組みとして機能している。行政の部門横断で子育てを見守る「こども家庭庁」の理念にも「ブックスタート」は親和性がある。

さらに、中・高 家庭科の幼児の発達を学ぶ授業で、「ブックスタート」事業が活用されている。4月から使用が始まった高等学校の教科書「Survive!! 高等学校 家庭基礎」(教育図書/2月5日(土)発行)に、「ブックスタート」が登場。子どもの発達や遊び、生活、大人の役割などを学ぶ章の中で「サステナビリティ」に関する取り組みとして紹介されている。「ブックスタート」が教材として注目される背景には、「持続可能な社会の創り手」の育成を理念に掲げる教育課程の改訂と、SDGs参画への世界的な流れがある。

「ブックスタート」の今後の発展にも注目だ。

「ブックスタート」公式HP:https://www.bookstart.or.jp/

※1 ブックスタート・パック注文受付に際し、当NPOが実施状況を確認している自治体
※2 「赤ちゃんへの絵本贈呈事業に関する全国調査」(2022年3月、NPOブックスタート)をもとに集計

(ソルトピーチ)