岐阜県にある美顔器に特化した企業「ARTISTIC&CO.GLOBAL」の代表を務める、女性経営者の金松月(きん しょうげつ)さん。年商150億円の売り上げを達成し、外からは“成功者”と見られることが多い彼女ですが、「失敗した」と思ったことはあるのでしょうか?今回は、金さんにとっての“成功と失敗”についてうかがいました。

2年で年商150億円を達成した女性経営者の金松月
2年で年商150億円を達成した女性経営者の金松月さん
◆成功や失敗にはこだわらない

――今まで、経営者として「失敗した」と思った出来事はありますか?

金松月さん(以下、金)「成功や失敗は、自分の考え方ひとつだと思っています。普段からあまり成功と失敗にはこだわっていません。なぜかと言うと、物事において『結果が良くなかったんだな』と感じた時には、『じゃあどうすればこの経験を次に生かせるかな』という方向に、瞬間的に頭が切り替わるからです。なので、あまりくよくよすることはありません。それに、どんな経験も生きていく上で必ずプラスになるものです。

また、“可能性とリスク”は比例するものだと思っています。失敗しても、可能性に向けてのひとつの過程だと思えば良いのです。それに、挑戦する時は最悪の事態を常に想定して取り組んでいるので、うまく行かなくても想定の範囲内です。色々な結果を見込んだ上で挑戦しています。

そして、10回チャレンジして9回失敗し、それでも1回上手くいったら、それは失敗した9回を含めての成功だと思っています。失敗を次にどう生かすかが大切だと思うのです。過程の中でうまく行かないことはたくさんあります。表に出るのは成功した1割の部分だけなので、そこを見て『成功している』と思われがちですが、その影には9割の失敗があります。9割の失敗があるから、1割の成功につながるのです」

◆山登りで思ったこと

登山
写真はイメージ(以下同じ)
――では、うまく行かなかった時にひきずることはありますか?

金「起きてしまったことに対してくよくよすることは、ほとんどないです。過去は変えられないので未来を見て、そのために今できることをします。例えば、最近山登りをしているんですけど、『どのコースで登りますか?』と聞かれたときに、性格的に『最短のコース』を選んでしまいます。日々運動もしていないのに(笑)。

そうすると、他のゆるりとしたコースを選ぶよりも、結果的に時間がかかってしまったりするのです。でも、『最短のコース』を登ってみたから、別のコースの方が早かったということが分かりました。それに、最短のコースを効率良く進むためには、もっと自分の下積みが必要だということも分かりました。日々、仕事でもこういうことの連続です」

◆すべて自己責任。でも子供に関しては別

親子で洗い物
――物事がうまく行かなかった時に、どうやって金さんが落ち込んだ気持ちを回復するか聞きたかったのですが…、“落ち込む”ということ事態、あまりないのでしょうか?

金「そうですね。落ち込むというよりは、受け入れるようにしています。それから、他人のせいにしないようにします。例えば、車を駐車していたら、ぶつけられたとします。もちろん、ぶつけた方が悪いのは確かです。でも、私は“そこに自分が止めなければ良かった”という自己責任だと考えます。起きたことは仕方のないことです。

自分に関しては、そのように自己責任だという考え方ができます。でも、自分の子供に関しては、そう思えなくなるんです。子供に何か悪い出来事が起こったとして、それが全部子供の自己責任だとは思えないでしょうし、そう思ってしまっては子供の逃げ場をなくしてしまいます。会社の人に関しても同様です。自分のことは、“自己責任”と考えますが、まわりに同じ考え方は求めません」

◆人生は一度しかない

――失敗を恐れている人がいたら、金さんだったらどのようなアドバイスをしますか?

金「命に別状がなく犯罪を犯していないのなら、『大丈夫』だと言っちゃいます(笑)。成功というのは、恐れずに行動を起こさないと得られないものです。例えば、今健康でいること、働いていること、日本にいること、それらの全部が“運が良い”ことだと思っています。でもその“運が良い”状態は瞬間的なことです。それを継続させるためには、行動しなければいけません。

まず、恐れずに行動すること。意外と『行動に移してみたら大したことなかった』と、後から言えるケースは多いものです。それに、今悩んでいることは、“明日食べるご飯がない”という状況に陥ったら、忘れてしまうような悩みだったりもします。

人生は一度しかないのですから、躊躇せずに行動をするべきだと思います。行動しないと何も起きません。ただ、自分が何もしなくても、世界は回ります。世の中は常に変化するので、自分がこのままでいたいと思っても、そのためにも努力や変化が必要になると思うのです。今、生きていることでさえ、当たり前じゃないと思えば、一歩を踏み出せるのではないでしょうか」

◆行動して迷惑になるかどうかは、やってみないと分からない

悩む
――「自分のせいで失敗して人に迷惑をかけたくない」と思って行動できない人も多いと思うのですが…、金さんはそのような方にはどんな声をかけますか?

金「もちろん、人に迷惑をかけたくない気持ちは誰でもあるものですよね。ただ、行動しないことが迷惑になる場合もあります。例えば、自分は転職したいと思っていても、家族やまわりに迷惑をかけたくないから我慢していたとします。でも辛いのに我慢していることを、まわりが望んでいるとは限りません。自分が満たされていないと、人の為になることはできないものです。

行動して迷惑になるかどうかは、やってみないと分からないことです。『やってみたら意外と喜ばれた』なんてこともあります。自分の中で完結せずに、行動に移してみないとどうなるかは分かりません。自分の失敗で迷惑をかけてしまったら、『次は挑戦するのをやめよう』ではなく『次はその分頑張ってお返ししよう』という意気込みでやるのが良いと思います。一度きりの人生、我慢して挑戦しないのはもったいないです」

◆「私がいなくても大丈夫」が喜び

――失敗や成功にこだわらないということですが…、「これは成功したな」と思うことはありますか?

金「“成功”という意識はあまりないのですが、まわりに喜ばれることが自分にとっての“やりがい”になっています。最近の喜びは、『私が心配しなくても、この人はもう大丈夫』という人が増えていくことです。誰も私に心配されたいなんて思っていないかもしれませんが…(笑)。

例えば、今年の誕生日は、初めて9歳下の弟からプレゼントを貰いました。今までは私が面倒を見る側で、少し“お母さん”みたいなところがあったんです。それが今年はプレゼントを貰い、その時に『何か必要なら言ってね』と伝えたのですが、『何もいらない』と言われました。そんな時に『もう心配しなくていいんだ!』と、子離れできたような気持ちになり、幸せを感じました。

身内の話になってしまいましたが、会社でも同じです。何かをやる、となった時に、昔は自分が立ち回らないと心配なこともあったのですが…、今は『この分野はもう、大丈夫』『この人は私がいなくても自立できる』と思うことが増えています。安心して人に任せられることが、最近の1番の喜びです」

次回は、中国の「独身の日」に1日で50億円を売り上げたエピソードについて、詳しくうかがいます。

<取材・文/まなたろう>

【まなたろう】

多岐にわたって興味があるアラフォーライター。コーヒーが好きで資格を取得中。海外に12年ほど住んでいたため、英語はそこそこ堪能。