セックスレス夫婦が主人公のドラマ『夫婦円満レシピ~交換しない?一晩だけ~』(テレビ東京系、水曜深夜0時30分~)でも描かれている、“夫婦交換”=スワッピング。

カップルのマンネリ解消に有効だといいますが、はたしてその効果は……? 夫婦関係についての著書多数で、スワッピングについての取材経験も豊富な、亀山早苗さんが解説します(以下、亀山さんの寄稿)。

◆お願い。うちの夫と寝てくれない?

「妻だけED」に陥った仁科浩介(千賀健永)は、妻の志保(佐津川愛美)とともに窪塚夫妻と定期的に夫婦交換をすることで、刺激と愛情を取り戻した。

それが友人にも波及していくのが、このドラマの4回目だ。

志保のいちばん親しいママ友・裕子(橋本マナミ)は、資産家の夫と娘、義母と暮らしている。ところが夫は裕子を大事だと言いながら、まったくセックスしようとしない。裕子は自分が愛されていないと感じ、自己肯定感も下がっている。

そんなとき、裕子は志保の自宅に男性(夫婦交換の相手・窪塚)が出入りしているのを見てしまう。志保は観念したようにすべて話すのだが、その後の裕子の言葉がすごかった。

「志保さん、お願い。うちの夫と寝てくれない? 仁科家とうちで夫婦交換してほしいの」

驚く志保に、裕子は畳みかける。

「志保さんはいいよ、愛されているから。私は愛されてないの。私だって愛されたい。だから方法はこれしかないの」

お願いお願い、一生のお願いと頭を下げる裕子。志保は気持ちがわかるだけに困り果てて夫の浩介に相談。夫婦と裕子は話を合わせ、裕子の家で4人で食事をする日をもうけるのだが……。

◆人知れず夫婦交換している夫婦は実際にいる

ひそかに夫婦交換をしている人たちは少なからずいる。今はネットで相手夫婦を探すことも可能だが、やはり力強いのは口コミ。蛇の道は蛇、一度でもそういうパーティに出席すれば情報はいくらでも入ってくる。

もちろん、人に知られたときにどう思われるか、世間体はみんな考えているので、「同好の士」から個人情報が他の世界に漏れる気遣いは少ない。

「うちはたまたまそう遠くないところに仲間がいたんです」

そう言うのは、ミツコさん(仮名・47歳)だ。4年ほど前、夫の浮気が発覚したとき、「私にも浮気させて」と言った。

◆パーティに行っても夫はしちゃダメ、とにかく見てて

「そうしたら夫が困り果てて、都内のスワッピングパーティを探し出したんです。私が勝手に浮気するのはどうしても嫌だから、これならいいって。そもそもあなたの浮気が原因なんだから、パーティに行っても夫はしちゃダメ、とにかく見ててと」

夫婦交換のイメージ画像
写真はイメージです(以下同じ)
ミツコさん夫婦は高校の同級生で、22歳で結婚している。何でも言い合える関係だが、子どもふたりも成人し、家業を一緒にしているため、「お互いを知りすぎて興味がなくなった」のではないかとふたりとも感じていた。分身のように感じるときもあるほどだから、異性として見る目が抜け落ちてしまったのだろう。

だから、ミツコさんは、夫が浮気したことを責めるつもりはなかったという。

「ただ、自分だけいい思いをしたのが悔しい(笑)。だから私にもさせてほしいと思って」

◆うちのセックスレスは解消しました

「パーティで弾けた私を見て、夫はものすごく刺激を受けたようです。うちのセックスレスは解消しました。

近所に知られたくないから、ときどき都内のパーティに行っていたんですが、うちは地方なので時間的に余裕がない。近場でそういうところがないかなあと思っていたら、都内のパーティで知り合った人から『私の知り合いで、あなたの地域に近いところの人が相手を求めているけどどう?』って連絡があって……。

会ってみたらとても素敵なご夫婦だったので、早速実行に移しました。今もおふたりとは家族ぐるみのつきあい、というか夫婦ぐるみのつきあいというか(笑)」

相手は慎重に選ばなければならない。だからこそ、同好の士からの紹介はありがたいと彼女はにこやかに言った。

◆こういうことをして、究極の愛情を試したいんだ

「もしかしたら、自分の夫が相手の女性を好きになるかもしれない。ひょっとしたらそこからふたりが駆け落ちするかもしれない。ドラマの中ではゲームだと称されていたし、私たちも究極の遊びだとは思っていますが、人の気持ちはどうなるかわからない。以前、あの夫とこの妻が駆け落ちしたらしい、と聞いたこともあります。

そんなリスクを冒してまで、こういうことをしているのは、究極の愛情を試したいんだと私は最近、思うようになりました。みんな、どこかに万が一のことはあるかもしれないと思いながら、夫を遊ばせ、妻を遊ばせている。けっこう高度な試練というか」

横たわる女性
そのリスクをわかっていながら、それでもミツコさんたちがやめられないのは、他人との心身にわたる濃厚な関係を経ることで、自分たち夫婦にそれがフィードバックされてくるからだという。

◆スワッピングを経て、夫を初めて真正面から見ている

「うちはつきあいの長い夫婦なので、以前から何でも言い合っていましたけど、それでも夫としみじみと深い話をするようになったのはスワッピングをするようになってからですね。それぞれが抱えている人生での不安とか、あるいはセックスにおける細かな好みとか。

子どもが離れたこともあって、夫という人を初めてきちんと真正面から見ている気がします。夫も『オレ、みっちゃんのこと、何も知らなかったよ』と言ってる。これからも死ぬまで仲良くしていこうねと話しました。

人が他人を完全に理解するなんてできないとわかっていますが、それでもこの年になって、ようやく本当にひとりの人間と理解を深めることができているのがうれしいですね。うちはそのきっかけがこの方法だったんです」

◆裸のつきあいをすることで見えてくるもの

スワッピングすれば、みんな満足していい夫婦になれるわけではない。こういう夫婦もいると例だ。だが、こういう人たちが多いのも事実。なぜならセックスには、表面的な言葉や態度だけでは表現しきれないものがあるからだろう。文字通り、裸のつきあいをすることで見えてくるものがあるのではないだろうか。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio