発達障害の当事者の銀河さんは、彼は空気を読むことが苦手で、新卒で入った会社でもうまくいかず、うつ病になってしまいます。その後、発達障害であることを生かした仕事のやり方をみつけ、現在ではキャリアアドバイザーとして転職サポートを行ったり、キャリアや生活で悩む発達障害の人へコーチングを行うなどの活動をしています。

今回、銀河さんが上梓した新刊『発達障害と仕事』の中から、発達障害の特性と、それを資産にする方法をご紹介します。

(当記事は本書より抜粋して構成)

銀河さん
銀河さん
◆そもそも発達障害ってどんなもの?

発達障害と仕事
※画像はイメージです
さて、みなさんは、発達障害のことをどれぐらいご存知でしょうか?

・ADHD

・ASD

・LD

・ADD

・注意欠陥多動性障害

・自閉症スペクトラム

・学習障害

など様々な呼び方をされますが、これらはすべて発達障害です。

例えば、私が診断されたASDは、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などの総称とされていますが、主に、次のような特性があるとされています。

● こだわりの強さ

まず、代表的な特性は、「こだわりの強さ」だと思います。好き嫌いが激しくて、自分の好きなものにはのめり込むけれども、興味のないことには全く関心が持てず、思考が停止してしまいます。また、自分自身が納得するまでは、他人に言われたことを受け入れられません。反対に、一度納得すると素直に受け入れ、すぐに行動に移したり、ルーティンに組み入れたりもします。

● コミュニケーション能力が高くない

自分の世界に閉じこもってしまいがちなので、自分の思いや感情を外に出すのが得意ではない人が多いようです。その結果、周囲の人の理解を得づらく、孤立しがち。私自身も会社員時代は、「世間話は無駄」「意味のある話しかしたくない」と思っていたため、社内ではよく一人ぼっちになってしまいました。また、初対面の人を敬遠しがちなので、人づきあいが広がっていかない傾向もあります。

● 疲れやすい

普通の人が無意識にやっている「空気を読む」という行為ができません。その代わりに、相手の視線や声の動き、声のトーンなどでその場の状況を判断しようとするため、気疲れしてしまう人が多いようです。普通の人が無意識で得られるコミュニケーションの情報が、圧倒的に少ないのが私たちの特性のひとつです。

◆まだまだある「発達障害」の特性

● 一人で抱え込んでしまう

完璧主義で他人に頼るのが苦手です。そのため、仕事や悩みを一人で抱え込んでしまって、パンクしてしまうことも多いです。結果として納期に遅れたり、アポイントメントに遅刻してしまったりすることもあります。そのため、周囲の人からその特性が理解されないと、「あの人は適当だ。ルーズだ」などと思われてしまいがちです。

● 感覚過敏

感覚過敏は、人一倍、様々な感覚に過敏になってしまう特性です。例えば、洋服についているタグが肌に触れる感覚が気になってしまい、タグを取らないと洋服が着られない……など。私の場合は少し聴覚過敏気味で、アナログ時計だと「チクタク」という秒針の音が気になってしまうので、家にある時計はすべてデジタル時計に統一しています。ちなみに、小さい頃から騒々しいゲームセンターがすごく苦手でした。

● 感覚鈍麻

感覚鈍麻は、感覚過敏の反対で、いろいろな感覚に対して鈍感になる症状を指します。例えば、熱があっても気がつかなくて、倒れてようやく自分が発熱していることに気づく……など。私自身も体調に関しては感覚鈍麻気味で、風邪などをひいても、周囲から「顔が赤いけど大丈夫?」と言われるまで気がつかなかったことが何度もありました。

◆発達障害を「資産」に変える6か条

発達障害と仕事
さて、「発達障害をネガティブにとらえるのではなく、ポジティブにとらえて『資産』に変える」というのが本書の主題です。発達障害のある「こだわりさん」は、発達障害でない人と同じ基準で判断すると失敗が多いように見えるため、「自分はダメなやつだ」と自己評価が低くなりがちです。このあと、本書を読み進めていく中で、「私なんか」と思う人ほど、ぜひ次の6か条を念頭に置いてほしいと思います。

1. 苦手や短所は克服しない

「こだわりが強い」「行動していないと気が済まない」「説明が長い」といった発達障害のある人の特性は、一見、発達障害でない人と比べると短所だと思われがちです。しかし、発達障害でない人でも、誰しもこうした特徴はあるものです。

発達障害の場合は、その凹凸が人一倍強いだけ。弱点である凹を無理に克服しようとしても、発達障害でない人と同じレベルか、それより下の水準でしか成果は出ません。

ならば、その労力を自分の強みである凸を磨くことに費やしたほうがいいと思います。苦手なことや短所はひとまず無視して、自分の強みを磨いていく。強みの存在感が増していけば、次第に苦手なことや短所が目立たなくなっていきます。

2. ノーマルを目指さない

私たち発達障害のある人たちは、ユニークな個性を持つ人が非常に多いです。でも、「普通の人」を目標にしてしまうと、その個性が消されてしまいます。だったら、「普通」を目指すのではなく、個性的に生きることを選んで、他人と差別化しましょう。そして、その個性こそが自分の強みになっていくはずです。

3. 長所と強みで勝負する

人には、自分の弱点ばかりが目に入って、良いところが見えづらいところがあります。でも、自分の長所と強みはどこかを見極めて、それを伸ばすことを意識してください。「自分は、これなら負けない!」という強みの種を見つけたら、それを育てて、自分の武器にしていきましょう。

◆目指すのはオンリーワン

4. 目指すのはオンリーワン

どこにでもいる「ノーマル」を目指すのではなく、「この人しかいない」という「オンリーワン」を目指しましょう。「ノーマル」はいっぱいいますが、あなたの持つ発想力や強いこだわりといったユニークな部分は、あなただけのものです。そんな自分だけの「オンリーワン」は、あなたの強みになるはずです。

5. 縛られる生活から自由へ

「普通になろう」とすると、生活リズムやマナーといったいろんな常識に縛られてしまいます。しかし、発達障害のある人にとっては、その常識を守ることは非常に強いストレスになります。普通になろうとして常識に縛られた生活ではなく、自分のスタイルを把握し、より自由な状況でストレスなく働けるような立場を目指しましょう。

6. 周りを積極的に頼る

発達障害のある人は、完璧主義者が多いので自分一人で何かしらを完結させようとする傾向があり、そのためによく大変な思いをしたりします。

ただ、基本的に、人は一人では何もできません。周りを積極的に頼ることで、自分の負担も軽減されるし、苦手分野を誰かに頼ることで、自分の強みをより活かすことにもつながります。これは発達障害のある人にとっては本当に苦手なことだと思いますが、一方で非常に大事なことなので、ぜひ本書を読み進める上で、心にとめておいてほしいと思います。

発達障害と仕事-書影
<文/銀河 構成/女子SPA!編集部>

【銀河】

上智大学卒。ASD(自閉症スペクトラム障害)とADHD(注意欠陥多動性障害)の当事者。ASD優位で空気を読むことが大の苦手。新卒で営業としてキャリアをスタートするも、約1年でうつ病を発症。復職し、発達障害の強みを活かして営業成績2位をおさめる。入社満3年で退社し、会社の同期が設立したCare Earth(株)に誘われて入社。現在ではキャリアアドバイザーとして、転職サポートを行っている。また、キャリアや生活で悩む発達障害の人へのアドバイスなどを中心に、コーチングも行っている。初の著書は『「こだわりさん」が強みを活かして働けるようになる本』 Twitter:@galaxy_career