マスク生活にもいい加減、慣れてはきたものの、ふと、感じることはありませんか?
「私の口、くさい!?」
どうやら、多くの人が気になっているようで、NPO法人 日本唾液ケア研究会が行った調査(※1)によると、長いマスク生活で約4人に1人が「口臭が気になるようになった」と回答。「口の渇き」や「口呼吸になりやすくなった」という変化を感じている人も多い、という結果になっています。
実はこの口臭、感染症に対しても無防備な状態を引き起こしている可能性があるそう。いったい、どうすればいいのでしょうか? 神奈川歯科大学教授で、口腔病理診断学・唾液腺健康医学が専門の槻木 恵一先生に聞いてみました!
◆口臭の原因は“口バテ”による“唾液力”の低下
そもそもなぜ、口臭がひどくなるのでしょうか? 槻木先生によると口臭の原因は、「“口バテ”による“唾液力”の低下が原因のひとつ」なのだそうです。
「夏の疲れや、朝晩の寒暖差などが原因の秋バテですが、体だけでなく口の中もバテる“口バテ”が起きているのです。
口臭の原因物質は、歯肉や舌苔に生息する細菌が食べかすなどをエサにして作り出されます。質のいい唾液がしっかり出ていれば自浄作用が働き、臭いの元の発生を防いでくれるのですが、口バテで口腔内の働きが衰えると、唾液の質と量が落ちて口臭がひどくなるんです」(槻木恵一先生 以下、カッコ内は同じ)
唾液は口の中を掃除するという大切な役割を果たしてくれていたのです。しかも、唾液は免疫にも深くかかわっているそうで、口臭が気になりだしたということは、「体全体が弱っている」サインかも…!
「“口バテ”は、口臭の大きな原因になるだけでなく、免疫力にも影響します。唾液には抗菌・抗ウイルス作用がある物質など、100種類以上の物質が含まれています。とくに重要なのは、感染予防に重要な免疫抗体『IgA』。
また、最近の研究で唾液の中から新型コロナウイルスへの感染を防ぐタンパク質も発見されています。唾液力の低下は免疫力の低下ですので、本格的な冬を前に対策をしておく必要があります」
今冬はインフルエンザの流行もささやかれているし……唾液力を高めて、口臭をブロック! 免疫力アップ! を目指したいですよね。
でも、具体的にはどうしたらいいのでしょうか?
◆①唾液力アップにはガムやグミ、硬めの食べ物で噛む習慣を!
「麺類など食感がやわらかい食べものが好きな人、よく噛まない人は唾液力が低下しがちです。
ガムやグミ、キュウリなど、噛み応えのある食品を食べることで、噛む習慣をつけていきましょう。ガムやグミは口腔環境を整える機能性を備えた商品もありますので、選んで利用するといいでしょう」
◆②秋のスイーツはヨーグルトと食物繊維豊富な果物で
「腸内細菌のバランスが整っていると腸内のIgAが増え、唾液中のIgAの量も高まることがわかっています。つまり、唾液力を高めるには、腸内環境を整えることが大切。
腸活に最適な食品といえばヨーグルトです。しかもヨーグルトは唾液中のIgA濃度を高めることもわかっているので積極的にとっていきましょう。キウイなどの食物繊維が多いくだものや、甘みをつける際にはフラクトオリゴ糖などと一緒に食べるのがおすすめです」
ある研究(※2)では、R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを1日1回3か月食べたところ、唾液中のIgAの分泌速度と濃度が増加したことも明らかになっているそう。
ヨーグルト&キウイなら、朝食や食後のデザートに手軽にとれるから習慣にもできそうですよね。
ちょっと意識するだけでできる唾液力アップ。口臭ケアに加えて免疫力も高め、秋冬を乗り切りましょう!
※1「夏のマスク着用意向」調査より
※2 Gerodontology.2017;1-7
【槻木 恵一教授】
NPO法人 日本唾液ケア研究会 理事長
神奈川歯科大学病理・組織形態学講座 環境病理学分野教授
1993年神奈川歯科大学歯学部卒業。1997年同大学大学院歯学研究科修了。神奈川歯科大学歯学部口腔病理学教室、助手、特任講師、助教授を経て2007年より教授。2013年より同大学歯学研究科長。2014年より同大学副学長。歯学博士。専門分野は口腔病理診断学・唾液腺健康医学・環境病理学。
<文/鈴木靖子>