夫・わかぴょんさんと妻・みかさんはセックスレスの悩みを抱えていました。わかぴょんさんは結婚前からセックスに消極的で、みかさんは「自分がブスだから拒否されるんだ」と自信を失くしていました。2人のお子さんに恵まれながらもセックスレスは解消せず、みかさんの体調面に影響するほど事態は悪化していきました。
そんな状態を解決するために、わかぴょんさん、みかさんが選んだのは「夫公認の彼氏」を作ることでした。
コミックエッセイ『夫公認彼氏ができました セックスレスにとことん向き合った夫婦の13年レポ』(KADOKAWA刊/漫画:ハラユキ 原作:みか、わかぴょん)では、お二人がセックスレスに向き合い、夫公認彼氏を作り、そして離婚するに到るまでが描かれています。
みかさん、わかぴょんさんに、セックスレスの辛さや、「夫公認彼氏」をわかぴょんさんが受け入れた理由などをお聞きしました。
◆「存在を否定されているように感じる」セックスレスの辛さ
――セックスレスの問題から「夫公認彼氏」という選択に至っていくわけですが、みかさんにとって、どんなことが辛かったのでしょうか?
みかさん(以下、みか):自分の根源的な欲求を受け入れてもらえないことで、私の存在そのものをダイレクトに否定されている感じがしていました。私の内側から湧き上がってくるものを「悪いものだ」と思ってしまう。自分のことをどんどん否定するようになってしまうところが一番辛かったと思います。
――2人のお子さんが産まれますが、産前産後でセックスレスに対する受け止め方に変化はあったのでしょうか?
みか:1人目の子どもが産まれたばかりの頃は、ずっと抱っこしてなくてはいけなかったりして赤ちゃんに必要とされているので、セックスレスに関しては全然フォーカスが当たっていなかったと思います。
でも2学年差で2人目がほしいと考えていたので、上の子が1歳になったら下の子を作ることを考え始めなければいけませんでした。それなのにセックスがなかなかできないので、どうしようと思っていました。
◆「この先もセックスし続けるのか」途方に暮れていた
――わかぴょんさんはその頃、どういう気持ちだったのでしょうか?
わかぴょんさん(以下、わかぴょん):僕も2人目がすごくほしかったんです。でも「したい」という気持ちになれなくて、自分でも驚きました。子どもができる保証はないし「この先どれくらいセックスし続ければいいんだろう」と途方に暮れていました。
――それでも2人目のお子さんを授かることができたんですね。
わかぴょん:でもセックスレスの問題は何も変わっていないから、やはりまた浮上してくるんです。
みか:2人めの子が1歳半くらいの時に「もうこのままではやっていけないかも……」という状態になってきました。
◆夫が「妻だけED」だった理由
――本書では「妻だけED」と描かれていました。わかぴょんさんはセックスに積極的になれなかった理由をご自身ではどう分析されているのでしょう?
わかぴょん:僕は、女性を性的に見ることやセックスをすることを「刺激」として捉えているんです。だからどんどん刺激の強い方へ向かっていくし、そのうち飽きてしまって他の人の方へ向いてしまいます。
でも色々な人の話を聞いてきた中で、夫婦でいつまでも仲良くセックスをしている人たちもいました。その人たちは、セックスを安心や、愛情、エネルギーの循環として捉えていることが多かったです。
僕の場合はアダルトビデオや成人向けの本で「刺激」というセックスの捉え方に慣れてしまっているので、「安心してゆったりマッサージするような気持ちのいいセックス」には慣れていないし、分からないという感じでした。
◆セックスが仕事のようになってしまっていた
――自分の中で形成されてきたものを変えるのは難しいですね。
わかぴょん:あと僕の性格的にセックスで自分が感じているところを知られるのが恥ずかしかったり、相手に委ねられないところがあります。自分を解放するより、相手が本当に満足しているのかが気がかりで、セックス自体を楽しめないんです。
「自分が奉仕しないとダメだ」とセックスが仕事みたいになってしまっているので、会社から疲れて帰ってきて取り組む意欲が湧きませんでした。
――性欲そのものが少ないというわけではなく、セックスに対する捉え方の違いから妻には欲求が向かない状態だったんですね。
わかぴょん:そうだと思っています。僕の周りでも性欲が少ないという理由で「セックスしなくていい」という男性には会ったことがないですね。性欲そのものが少ない男性ってあまり聞かない印象があります。
◆なぜ夫は、妻の「彼氏」を公認できたのか
――最初は、みかさんの「夫公認彼氏」の提案に拒否反応を示していたわかぴょんさんでしたが、受け入れた理由は何だったのでしょうか?
わかぴょん:本当にそれしかなかったのが大きいです。悩んで、色々なところに相談に行って、それでも解決せず行き詰まっていました。「夫公認彼氏」の案はそれまでも出たことはあったのですが、みかが「夫公認彼氏の候補が現れたよ」と言ってきたので、もう崖から飛び降りるような気持ちで「じゃあ3人で会って話そう」と言いました。
――当時はそれほどまでに、離婚を避けたかったのでしょうか?
わかぴょん:離婚は嫌でした。子どもがいるし、普段は夫婦仲良く会話したりしているのに「セックスレスごときで」と思っていました。
長年連れ添ったご夫婦に話を聞きに行って、「セックスなんてなくても夫婦はやっていけるよ」と言葉をもらったりしていたので、時間が経てばみかが変わってセックスレスの問題はなくなっていくんじゃないかなと思っていました。
でも、みかが「私は今幸せを感じていない」と強く言ってきたので「やっぱり俺が縛っているのかな」と思って、飛び込むことにしました。
――わかぴょんさんが「彼氏」と話した時、「僕が現れたことで2人の関係をあきらめないでほしい」と言われて涙していたシーンが印象的でした。そうした背景もあったのですね。
◆もし夫が「夫公認彼氏」を拒否していたら?
――仮に、その時わかぴょんさんが「夫公認彼氏」を拒否していたら、みかさんはどんな選択をしたと思いますか?
みか:多分、離婚する方向へ行ったと思います。セックスはしないけど「夫公認彼氏」も認めない、そんな私のことを大事にしてくれない人とパートナーでいる必要はないと思ったかもしれません。
――隠れて不倫をすることはなかったと思いますか?
みか:私は隠し事をするのにエネルギーを使えない性格だし、不倫は罪悪感が重過ぎて楽しめないのでしなかったと思います。
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中編では、「夫公認彼氏」ができてからの妻・夫の変化についてお話を聞いていきます。
【みか】
好奇心旺盛な40代2児の母。既存の枠にとらわれず、女優、ライバー、ライターなど、興味の湧いたものには実際にチャレンジしていく行動派。ヒプノセラピストとしても活動中。
【わかぴょん】
大蔵省、俳優、マネージャー、印刷会社の営業職を経て再び脱サラ。家族で自然遊びを紹介するYouTubeチャンネルと、みかと共に現在のありままの家族関係を発信するYouTubeチャンネルを運営。
<漫画/ハラユキ 取材&文/都田ミツコ>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。