コミックエッセイ『夫公認彼氏ができました セックスレスにとことん向き合った夫婦の13年レポ』(KADOKAWA刊/漫画:ハラユキ 原作:みか、わかぴょん)では、妻・みかさんと、夫・わかぴょんさん夫婦が、セックスレスを解消するために「夫公認彼氏」を受け入れ、お互いの性や心の状態に向き合っていく様子が描かれています。
前回のインタビューでは、みかさんが夫からセックスを拒否されることで辛い思いを抱えていたことや、「夫公認彼氏」をわかぴょんさんが受け入れるまでの葛藤などを聞きました。
今回は、「夫公認彼氏」を受け入れながら夫婦を続ける秘訣や、お二人の心境の変化について話していただきます。
◆「夫公認彼氏」ができたことで起きた変化
――元々お二人の共通の知人だったAさんが「夫公認彼氏」になったことはどうでしたか?
みかさん(以下、みか):全く知らない人を連れてくるよりは、すでに信頼関係があるという点でよかったと思います。
わかぴょんさん(以下、わかぴょん):「夫公認彼氏」の入門編としては、知り合いからの方がやりやすいと思います(笑)。
――みかさんにとって「夫公認彼氏」はどんな存在だったのでしょうか?
みか:私がすごく閉ざしていたものを、開きにきてくれた人という感じでした。わかぴょんとは全く役割が違う人でしたね。
――「夫公認彼氏」ができたことで、みかさんにはどんな変化があったのでしょうか?
みか:体調を崩しがちだったのが驚くほど元気になりました。あと、セックスレスだった時は自分のことをブスとして扱っていたのですが、彼氏ができたことでピアスをしてみたり、「可愛い」と言われる存在として行動できるようになりました。
セックスレスによって、夫は私の幸せを阻(はば)む敵のような存在になっていたんです。そこに彼氏が現れたことで、それを受け入れてサポートしてくれたわかぴょんのことを改めて好きになったというか、敵ではなくなったと感じました。彼氏のおかげで夫婦のバランスが良くなったとその時は思いました。
◆妻の「彼氏」とのデート話で盛り上がる
――「夫公認彼氏」と夫との関係を両立させるために、気をつけたことはありますか?
みか:私の中では彼氏と夫の違いをつけていなかったので、気をつけたことは特にありません。もし彼氏に心を全て奪われたとしたら、それはその人とずっと一緒にいた方が幸せだということだと思います。
――例えば、「夫公認彼氏」とのデートのことは夫に話さないようにしたりはしなかったですか?
みか:むしろ全部話していました。「Aさんと喧嘩した」と言ったら、わかぴょんが「俺が仲裁に入るか」と言ったり(笑)。
わかぴょん:毎回デートの話を聞いて「Aさんかっこいいな〜」と言ったり、2人で盛り上がっていました(笑)。
――わかぴょんさんは、デートの話をどんな気持ちで聞いていたのでしょうか?
わかぴょん:「夫公認彼氏」ができたことでセックスレスの悩みから解放されたし、その上みかが僕と一緒にいてくれるのであれば「もう何も問題ない」という思いでした。
妻から彼氏とのデートの話を聞くという体験がそれまでなかったので、後から思ったことですが「大きくなった娘が彼氏を連れてきた」みたいな感覚かもしれません。みかへの愛情は、きょうだい愛というか、親友になったというか、あえて言葉をつけるとすればそういう愛情に変わっていったのだと思います。
◆「夫公認彼氏」のデメリットは?
――「夫公認彼氏」のデメリットを挙げるとしたら何かありますか?
わかぴょん:メリットならあるのですが、デメリットは考えても浮かばないんです。
みか:私はあえてデメリットというなら、自分の人生で今まで教えられたことのないことをするからには、責任を持たなくてはいけないことかなと思います。人から怒られようが非難されようが、自分が決めた、ということに対する重圧があるかもしれません。
あと、3人のうち誰かが気持ちを押し殺していると「夫公認彼氏」がいる状態が成り立たないので、自分の心の直視したくない部分を含めて向き合って、2人の男性に自分の気持ちを全て伝えなければいけない。中途半端にはできないので、結構しんどいし面倒臭いと思います。
◆誰かが我慢してしまうとどこかに歪みが出る
――どんなことについて打ち明けて話し合っていたのでしょうか?
みか:例えば、わかぴょんがAさんに嫉妬を抱いたとしたら、平気な振りをしないで全部話し合うようにしていました。私自身も自分が結婚しているにも関わらず、Aさんに女友達がいると嫉妬したりしていたので、そういう気持ちも全て話していました。
――相手に本心を打ち明けるより、我慢していた方が楽かもしれないですね。
みか:むしろ「自分が我慢していればいい」と思う人の方が多い気がします。
わかぴょん:誰かが我慢してしまうとどこかに歪みが出るので、続かない関係だと思います。3人全員が本当に正直に、恥ずかしかったとしても自分の気持ちを話さないと難しかったと思います。
◆「誰かの役に立ったらいいな」と発信を始めた
――「夫公認彼氏」を周囲に理解してもらうためにしたことはありますか?
みか:私は周りに理解をしてもらうために何かしたことは特になかったと思います。それよりも自分の目の前のことに必死でした。
ブログでセックスレスや「夫公認彼氏」について発信したのは、周りの理解を得たいというより、「誰かの役に立ったらいいな」と思って始めたことでした。私自身が、他の方が内面に向き合って書いた文章に共感した経験があったので、私の体験も誰かの参考になるかもしれないと思ったんです。
――読者の反応はいかがでしたか?
みか:この本の形になってから沢山の反響があって、「こんな風に悩んでいたのは私だけじゃなかったんだ」と思いました。セックスレスに限らず「母親らしく振舞わなくてはいけない」という思い込みを持っていたという方も結構いました。
例えば、私は「結婚している人はサブカル漫画なんて読まない」と思って、愛読していた岡崎京子さんの漫画を捨てたりしたんです。それを読んで「私も捨てました」という人が何人もいることが分かったりしました。
◆「YouTubeだったら自分達の言葉で伝えられる」
――わかぴょんさんは、周囲の理解を得るためにしたことはありますか?
わかぴょん:周りに隠さないようにしていました。みかがブログやFacebookに「夫公認彼氏」のことを投稿するので、知り合いがそれを見て「わかぴょん大丈夫?」と心配するんです。それで「これは夫公認です」と発信し始めました。
みかが彼氏と一緒に幼稚園や小学校にお迎えに行ったり、時には彼氏に送迎をお願いすることもあったので「我々以外の大人が迎えに行きます」と周囲に伝えたりしていました。
徐々に発信しながら、みかと話し合って「YouTubeだったら自分達の言葉で伝えられるかな」と思って一昨年からYouTubeチャンネルを始めました。僕の場合は「周りに理解してほしい」という気持ちが心の奥底にあった気がします。
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本日夕方公開の後編では、「夫公認彼氏」から6年後、夫婦がお互いに心地いい状態を追求した結末についてお話を聞いてきます。
【みか】
好奇心旺盛な40代2児の母。既存の枠にとらわれず、女優、ライバー、ライターなど、興味の湧いたものには実際にチャレンジしていく行動派。ヒプノセラピストとしても活動中。
【わかぴょん】
大蔵省、俳優、マネージャー、印刷会社の営業職を経て再び脱サラ。家族で自然遊びを紹介するYouTubeチャンネルと、みかと共に現在のありままの家族関係を発信するYouTubeチャンネルを運営。
<漫画/ハラユキ 取材&文/都田ミツコ>
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。