義母からの贈り物――。それは時に悩みのタネになることもあるようです。
高山愛理さん(仮名・34歳)の義実家は、関東近県でありながらも、のどかな畑が続くような緑豊かな地域。生まれも育ちも都内の愛理さんからすると、関東でありながらも田舎のように感じるそうです。
「夫の実家は、歩いて行ける距離にはスーパーもコンビニもないんです。すべて車で移動しないと、買い物もできない。うちには1歳になる女の子がいるので、ニトリや西松屋などの店舗が近くにあるのは凄く便利だなって思います。
でも義母がもっと年を取ったら、いずれは同居すると思うと、まだ今は近くに引っ越しはしたくないなって思うんです」
◆家庭菜園が趣味の義母。夏野菜を大量収穫
愛理さんの義母は、家庭菜園や発酵食品を作るのが趣味。自宅から車で15分ほどの場所に畑を借りて野菜を作っています。
「義母は、作るのが趣味なのでできた野菜は近所に配ったりしているみたい。野菜の無人販売所も近所にあるのですが、かぼちゃも小さすぎたりきゅうりも曲がっていたりと、売るには商品としてはあまりいい状態ではないんですよ」
好天が続く夏には、ナスやゴーヤといった夏野菜が大量に獲れ過ぎることで、愛理さんは対応に困っているとか。
「近所には配りすぎているので、結局、私たちのところに送ってくるんです。送られた段ボールを開いてみると、キャベツの中から小さな虫が出て来たり、味もゴーヤは苦みが強すぎて、物によってはとても人に配れるレベルではないって感じました」
愛理さんが困るのは、家族では食べきれないほどの量が送られてくることだと語ります。
「野菜が送られてくると、お礼の電話をするのですが、食べたかどうか確認してくるんです。うちはまだ子どもも小さいし、そんなに野菜も食べない。夫は自分の家の野菜なのに、食べるのが嫌なようで、“残業してくる”と言って、帰りに呑んで食べて帰ってくる。結局、家にいる私が大量の野菜を食べるために料理するしかないんですよね」
◆「野菜を食べれば元気」が口癖の義母
義母が作れる野菜は、素人が簡単に作れる野菜に偏っていたため、食べ終わっても同じ野菜ばかりがまた大量に送られてきます。しかも、義母が「野菜を食べていれば健康」と言ってくるとか。
「なぜか義母は自信満々で“野菜を食べれば元気”って言うんですよ。私がこの前、体調を崩した時も“野菜を食べていないから”と言ってきて、送ってきた野菜を食べた方がいいと勧めてくるんです。
正直、毎日同じ野菜を食べていると飽きるし、しかもにんじんも湯がいても硬いし、食べても、食べてもゴーヤは減らないし。“明日もまたゴーヤを食べなければならない”と思うと、ノイローゼになりそうでした」
◆野菜の味は不安定も「食べてほしい」
義実家に行くと、義母はぬか床につけた野菜も食卓で振る舞うそう。
「きゅうりなど食べると美味しいこともあるのですが、ある時、ぬか床が過剰発酵していたため、にんじんなのにピリっとするどい味がしたんです。やっぱり素人が作ったものだから、味が安定していないんですよね」
でも義母にとっては、毎日畑に行くことが生きがいだと言います。
「義母は畑に行って収穫を確かめることが一番の楽しみなので、家庭菜園をやめたくはないんです。でも、私たちに“野菜を食べると健康になる”というのは、自分が作った野菜を食べれば元気になるっていう意味なんですよね……。一緒にスーパーに行っても、売っている野菜は勧めてこないんですよ……」
◆「送ってこないで」と伝えても、届き続ける野菜
愛理さんは、夫に「野菜を送ってこないように、あなたから言ってほしい」とお願いします。
「夫は最初は“なんでもカレーとかにして食べればいいだろう“と言っていたのですが、だんだん量が多くなってきて食べきれず、それも言わなくなりました。去年、夫から“送ってこなくていい”と義母に言ってもらいました。その時は“もう来年は作れないから”と言っていたのに、また今年も送ってきたんですよね」
愛理さんは義母が元気でいてほしいという気持ちはあるそうですが、野菜が送られてくることについては頭が痛いそうです。義実家や義母の趣味は、断りづらいですが、時には強く言わないと相手にはわかってもらえないこともあるようです。
<文/池守りぜね イラスト/ただりえこ>