イタリアの高級ヴィラからボンジョルノ~!フリーライター兼ヴィラ受付係のゆきニヴェスです。今まで数回に分けてヴィラを取り巻くドラマティックな恋愛模様を紹介してきましたが、今回は家族のお話。高級リゾートに宿泊するお金はあってもケチりたい!そのケチり方がなんとも残念な家族です。

◆5人家族の4人部屋利用はよくあるケース

家族
※画像はイメージです(以下同じ)
ヴィラには2人から4人利用まで、さまざまなタイプの客室があります。よく受けるのが、

「5人家族なんですが、4人部屋に泊まっても良いですか」という問い合わせ。

「残念ながら5つ目のベッドを置くスペースがないのですが…」と答えるとたいていの場合、「まだ末っ子が小さいので、親と一緒のベッドで十分です」と言われます。

そんなときは、こちらもOKするもの。2部屋に分かれるとなると、ほぼ倍の出費になりますからね。しかし、今回は全く別の“節約”パターンでした。

◆迷うことなく有料パーキングを選択した夫婦

記録的猛暑だったこの夏、一番小さな部屋を2名で2泊予約した40代後半のドイツ人夫婦。午後3時頃に小さなバンで現れたこの夫婦を駐車場まで迎えに行くと「ヴィラ敷地内に車をとめたい」と言われました。

「すぐ向かいのパーキングは無料ですが、敷地内は有料です。」と伝えると、すかさず「もちろん、知っていますよ。」とすでに下調べ済み。

隠れ家のようなヴィラがあるのは静かな郊外のエリアなので、普段、鉄の扉で仕切られた敷地内にとめるのはポルシェやフェラーリなどの高級車くらい。ですが、彼らが敷地内パーキングを選んだのには重要なワケがあったのです。

◆バンの扉を開けると中型のわんちゃんが

犬
バンの扉を開けると、まず中型のわんちゃんが飛び出してきました。

「わんちゃんも一緒だったんですね。」と私が言うと「ペットフレンドリーな宿だとウェブサイトに書いてあったので。」と、しっかりヴィラの情報を把握しています。

本来はペットも予約が必要なのですが、仕方なく目をつむりましょう。

「犬の予約がなかったので、犬専用のクッションやボウルなどを部屋に用意していないのですが…」とやんわりと言ったところ、「問題ありません。僕たちが持って来ているので結構です。」との返答。

犬にかかるエキストラ費用を払いたくないというのが、すぐにわかる反応です。

◆予約人数2人に対し、現れたのは4人ファミリー&犬

さらに数秒後、バンから12歳前後の子ども2人(姉弟)も出てきたのでビックリ。

「予約人数は2人ですよね。」と聞いたところ、「ああ、子どもたちは別のホテルで寝るから大丈夫です。」と言う父親。

内心、「子どもだけで他の場所に泊まるのは不思議だな」と思い、そのホテルの名前を聞いてみるも、濁されてしまいました。

2人分のチェックインを済ませた後、いつもなら車から部屋への荷物運びも手伝うのですが、それも断られたのでしばらくそっとしておくことに。様子見開始です。

◆バンの中にはマットレスとぬいぐるみ

プール
このヴィラではプールやスパの利用を宿泊客のみに限定しているのですが、この子どもたちにNOとは言いにくいでしょう。案の定、水着に着替えた家族4人がプールエリアへとやってきました。

サービスのドリンクをとりあえず2人分渡すと、それを4人で分けています。なんとなく子どもに同情を覚えた私は「お子様にも用意しますよ」と提案しましたが、彼らは「NO、NO、NO」といった調子。かなり控えめな態度で接してくるあたり、後ろめたさは感じているようです。

そうして日は暮れていっても、一向に外出する気配はありませんでした。もちろん、部屋のシャワーやトイレも家族全員で利用しています。

「やはりおかしい」と思って駐車場に戻ると、空気を入れ替えるためにバンは全開。そこにはマットレスとクマのぬいぐるみが置いてあり、明らかに子どもたちが寝るためのスペースになっていました。

◆たとえ熱帯夜でも… 子どもたちをバンに寝かせて旅する夫婦

この頃のイタリアは全く雨が降らず晴天続きで連日35度超え。熱帯夜が続いていたにもかかわらず、この家族は両親だけが部屋をとり、子どもたちは駐車場にとめたバンで寝て旅をしているようなのです。家族全員で車で寝泊まりしながらキャンプをするのとは訳が違うでしょう。

4人向けの部屋もあったのになんだか腑に落ちず、子どもたちだけが犠牲になっているような感じがして、ショッキングな光景でもありました。

普通のホテルであれば、同じ料金で4人部屋にも泊まれるはずなのに…。プールで控えめにはしゃぐ子どもたちが不憫でしたが、彼らはこのようなシチュエーションに慣れていて、割り切っているかのようでもありました。

◆ヴィラを気に入った図々しい夫婦

車内
翌日、父親に「お子様たち、駐車場で寝ていますよね。」と尋ねてみたら、「子どもの施設使用料も払います、払いますから。」と、この指摘を待っていたかのような即答ぶり。上司に相談し、今回は追加でチャージせず、これ以上の干渉もしないことに決めたのですが…。

それをこの夫婦に伝えたところ、なんと図々しくも「あと2泊、宿泊を延長したい」なんて言い出す始末。真夏の繁忙期に、このような快適な駐車場を探すのもなかなか難しいのかもしれません。入口に面する子どもの“宿”は安全であることが第一で、このヴィラの静かな立地がよっぽど気に入ったみたいです。

幸いにも満室だったので、延泊リクエストは考える間もなく断りしましたが、「ここの駐車場はキャンプ場ではありませんので。」と、次回からは拒否することに。ブラックリスト入り決定です。

<文/ゆきニヴェス>

【ゆきニヴェス】

脱サラを機にヨーロッパ中を旅し、ワイン好きが高じてイタリアに住み着いた自他ともに認める自由人。フリーライター及び取材コーディネーターとしても活動中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員