【BARのマスターに聞く! 第10回】

こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

「大人の恋愛」と聞いた時、中にはつい不倫を思い浮かべる人も多いかもしれません。フォーカスされがちなのは“既婚男性と独身女性”の組み合わせですが、両方とも既婚者という“ダブル不倫”の数も、私たちが思っているより多いようです。

BARのマスター林伸次さんに聞く!
「BAR BOSSA」のマスター林伸次さん(右)と筆者・おおしまりえ(左)
独身女性がする不倫と既婚女性がするそれは、意味やノリが全然違うと言いますが、こうした大人の関係にはどんなものがあるのでしょうか。

前回記事に続き、渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主で作家の林伸次さんに、既婚女性の不倫関係について聞いてみました。

◆大きな声では言えないけれど、不倫女性は結構いる

おおしまりえ(以下、おおしま):既婚女性のする不倫って、独身女性がするケースよりも長く続いたり、安定した関係になったりしやすいという意味で、タチが悪いイメージがあります。

林さんの周りには、そういう言えない関係を経験されている方も多いと思うんですが、印象に残っているケースなどはありますか。

林伸次さん(以下、林):大きな声では言えないですが、僕の印象では、既婚女性の方が沢山浮気をしていて、しかも楽しんでいるイメージがあります。ほんの一部のモテる男性が、沢山の既婚女性と遊んでいるんです。あくまでも僕の知っている範囲では、ですが。

林伸次さんのBAR BOSSA
おおしま:不倫の世界は“一夫多妻制”なんですね。その既婚女性の方たちは、本気の関係なんですか?

林:そこの温度感は人それぞれです。みんなに言えるのは、今はSNSのおかげで出会いの場がすごく増えていて、活用している人が多いということ。あとは昔と違って女性が外で働くようにもなったので、相乗効果で不倫しやすい環境ができつつありますね。

それから、既婚同士の関係はお互いばれないような会い方をしますから、効率的になるらしいです。

◆忙しい既婚女性にちょうどいい? ホテル完結不倫とは

おおしま:私の周りで過去にあった不倫話で、既婚男性がSNSを通じて出会った独身女性と本気の不倫になっちゃって、離婚したというのを聞いたことがあります。出会いがライトなので信じられなかったんですが、相手が独身だと「別れて一緒になる」という選択肢が稀(まれ)にあるので、そうなると本当に大変ですよね。

林:それはおおごとですね。既婚同士の不倫で僕が知っている話をご紹介すると、食事から何からホテルで完結させる不倫というのを聞いたことがあります。

◆ランチからバーでお酒、部屋で休憩して17時に解散

林:ある男性から聞いたデートプランなのですが、まず女性を都内のホテルにある、ちょっと高級なお寿司屋さんのランチに誘うんです。女性には子どもがいますが、昼間なので問題なし。そこでお酒を飲んでいい感じになったら、次は同じホテルのラウンジに移動します。

そこで大体14〜15時くらいを回っています。ラウンジでシャンパンでも飲んでさらにいい雰囲気になったら、「部屋を取ってあるんだけど、そっちに移らない?」って誘うと、高確率で女性が来るそうです。

BAR BOSSA
おおしま:なんというか、計算し尽くされていますね。

林:この話のキモは、ホテルの中で全ての移動を済ませるところです。これが銀座の寿司屋で、次にカフェに移って…ってやっていたら、時間も過ぎるし気持ちも冷めます。このプランでいくと、ランチしてお酒を飲んで部屋で休憩して17時に解散できるそうです。

おおしま:すごく合理的ですね! 女性って、口説かれたときに考えるスキがあると冷静に戻ってしまうといいますからね。ホテル内でのやり取りだと、雰囲気が壊れないからそのまま流れに身を任せる人が多そうです。

林:ちなみに部屋は事前に取っておくらしいです。コロナ禍になって、テレワークプランや休憩プランがあるホテルも増えたから、そういうのを活用するらしいですよ。

◆キスまでしかいかない関係、それって何?

林:先ほどのケースは割り切った関係の話ですが、もうひとつ、最近同じような不倫の相談をよく聞きます。

それは、「キスまでいくんだけど男性からそれ以上を求められない。これってどういう気持ちなの?」っていう女性側からの質問です。聞くと、デートしていい雰囲気になってキスはするんだけど、そこで解散になるそうです。

おおしま:すごい生殺しですね! それは、不倫をする一歩手前で止めておこうという自制心からの行動なのでしょうか。

林:僕が思うに、そうではないと思います。多分年を取ったせいで性欲が減退した結果、「キスできたらまあいっか」って、男性が満足しちゃうんだと思います。

◆「中年男性キスだけ問題」は本当によく聞く

林:男性側もデートしたい気持ちはあるし、ときめきたい願望もあるんですが、その後がおっくうだって言いますね。ここからホテルを探して移動して、別れてタクシーに乗って帰って、匂いがついてないか気をつけながら着替えて…とかって頭で考えると、とにかく面倒臭い。性欲がものすごくあるわけでもないから、したも同然だなって感覚で帰るのが一番いいみたいです。

「BAR BOSSA(バールボッサ)」の店主・林伸次さん
おおしま:それはなんていうか、女性からしたら「そこまで手を出したなら最後まで出し切れよ!」って言いたくなるやつですね。

林:それ以上に進みたいなら、温泉に誘うとか女性側が部屋を用意するとか、お膳立てをしないと繋がらないかもしれませんね。この「中年男性キスだけ問題」は本当によく聞くので、世の中にもかなりあるケースではないかなと思っています。

◆パートナーの不倫を回避する策はどこにある?

おおしま:ここまで既婚者同士の不倫の話を聞いていきましたが、不倫される側からしたら非常に恐ろしい話ですよね。

恋愛コラムニストの私としては、「いい恋愛」を推奨する立場なので、こうした不倫はできれば起きてほしくないし、起きないような対策を取ってもらいたいです。林さんの中では、パートナーの不倫を回避する策って何がありますか?

林:財布を1つにして、男性が自由になるお金を減らすことです。お金がないと不倫はできませんからね。これから結婚する女性には、夫婦の財布は1つにすることをオススメします。おおしまさんは、対策するなら何をしたら良いと思いますか?

おおしま:夫婦関係の積極的なメンテナンスですね。不倫するってことは、夫婦関係に不満があるから起きるわけですよね。つまり、不満のない関係づくりを意識し続ければいいと思います。

◆コミュニケーション不足は必ず悪い方向に行ってしまう

BAR BOSSA
おおしま:具体的には、会話が減るのを回避すること。不満をつど伝え合うことを習慣化させること。パパママから男女になってデートしたりして楽しむ時間を作ることですね。夫婦になると不思議と、「言わなくてもわかるでしょ」という無言の期待とか、「妻ならやって当然」みたいな距離感のバグった思考になりがちだと思うんです。

こういうのは不満として蓄積(ちくせき)されますから、どこかで解消しないと関係が悪くなって、不倫に走る可能性が高まります。厳密にルールを決めろとは言いませんが、夫婦と言えど他人だからこそ関係をアップデートし続けることが何より大事だと思っています。

林:確かに、コミュニケーション不足は必ず悪い方向に行きますからね。あと、キスやハグを習慣にすると、スキンシップが増えるのと同時に、外でするのを防止する効果があると思います。外でキスした直後に家でも奥さんとキスをするって、凄く悪いことをしているみたいに感じられますからね。スキンシップは関係も良くしますし、防止効果もあるのでオススメです。

【林伸次さん】

渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主。中古レコード店、ブラジル料理店、ショット・バーで働いた後、1997年「BAR BOSSA」をオープン。バーを経営する傍ら著作家としても活躍している。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)など。

<取材・文/おおしまりえ 写真/林紘輝>

【おおしまりえ】

水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518