アタリ、ハズレの見分け方とは?

 今年のトレンドスイーツとして想像以上に長く話題になっているのが、「カヌレ」。今ではコンビニやスーパーでも見かけるようになりました。そもそもカヌレとは、フランス・ボルドー地方の伝統菓子。

カヌレ、流行っていますね
カヌレ、流行っていますね
 ワインの製造過程で出てくる澱(おり)を取り除くためにたまごの卵白が使われるのですが、その際に残った卵黄を活用しようとして考案された焼き菓子です。おいしいカヌレは、外がカリっとしていて、中はもっちり。ラム酒が香るのも魅力の一つなのですが、お店ごとに食感や味はさまざまで、私はアタリもハズレも経験しています。

 そこで今回は、売り切れ続出で入手困難とまで言われているローソンの「濃密カヌレ」を基準にしながら、アタリのカヌレを選ぶコツや、おいしく食べる工夫についてご紹介してみたいと思います。

◆これほどのカヌレブームは初めてのこと

ローソンの「濃密カヌレ」160円(税込)
ローソンの「濃密カヌレ」160円(税込)
 私はカヌレファンとして、20年以上も前から食べ続けてきましたが、日本でこれほどのブームになったのは初めてのこと。

 まずは話題になっているローソンの「濃密カヌレ」を実食してみました。実はローソンと聞いてはじめにイメージしたのが、「ナチュラルローソンのカヌレ」。

 埼玉にあるコスモフーズが製造、ブームになる前からナチュローの看板スイーツのひとつとして愛されています。そんなカヌレ偏差値の高いローソンですから、今回の濃密カヌレはそれを超える傑作が登場したのでは!? という期待を胸に食べてみることにしました……。

◆ローソンの濃密カヌレの魅力は、価格とバランス

外側は思ったほどカリッとしていませんでした
外側は思ったほどカリッとしていませんでした
 正直に言えば、普通においしくいただけました、という結果でした。

 160円という手頃感からしたら十分に満足できる味なのですが、これまでにさまざまなカヌレを食べてきた経験からシビアに判定してみると、自信を持って100点満点はつけがたいなと感じました。外側はカリっと香ばしい感じではなく、かなりしっとりしています。

 また、中身の生地を味わってみると、モチっと感というよりはムチっとネッチリした食感に近いなと感じました。これはローソンが狙って生み出したバランスかもしれず、これを濃密と定義しているのかもしれません。

 おいしいという感覚には個人差があるので偉そうに判定することは絶対にしたくないのですが、個人的にはもう少し歯切れが良く、後味軽やかなもっちり感を期待してしまいます。

狙ってやっているかもしれない食感が印象的。意外とネッチリしているように感じます
狙ってやっているかもしれない食感が印象的。意外とネッチリしているように感じます
 ちなみに製造元は、ヤマザキ製パン。おいしくないものを作るわけがなさそうなので、私の好みに合わなかっただけのことかもしれません。それでは次に、パン屋や洋菓子店のカヌレを食べ比べてみることにしました。

◆有名パン屋のカヌレがおいしすぎて驚いた

左がローソン。右がPAUL
左がローソン。右がPAUL
 1889年に北フランスで創業したブーランジェリーのPAUL。

 日本では敷島製パン(パスコとしておなじみ)のグループ会社であるレアールパスコベーカリーズが全国85店舗を展開していますが、このPAULのカヌレは看板商品のひとつ。ローソンと比較して3か月ぶりに食べてみたところ、その圧倒的なおいしさに改めて感動してしまいました。

左がローソン、右がPAUL。生地の気泡の入り方に大きな違いを感じます。値段が違うからと言われれば話は終わってしまいますが、PAULのカヌレは一度は食べてみる価値があります
左がローソン、右がPAUL。生地の気泡の入り方に大きな違いを感じます。値段が違うからと言われれば話は終わってしまいますが、PAULのカヌレは一度は食べてみる価値があります
 食感、風味、鼻に抜ける香り、すべてが秀逸です。314円という価格にはそれなりの覚悟が必要ですが、サイズ感もひと回り大きく、価格に見合った満足感を十二分に得ることができます。そして他のお店も食べ進めていくことにしました……。

◆冷凍して売られている場合もある。

左が、洋菓子店「ガトー・ド・ボワイヤージュ」194円。右が、本格ベーカリー「THE STANDARD BAKERS FARM」345円。同じカヌレでも見た目、色など大きく異なる
左が、洋菓子店「ガトー・ド・ボワイヤージュ」194円。右が、本格ベーカリー「THE STANDARD BAKERS FARM」345円。同じカヌレでも見た目、色など大きく異なる
「実力のあるベーカリーが作るカヌレには、ハズレなし」。この仮説を確かめるために、これまでさまざまな有名パン屋さんのカヌレを試してきましたが、これを覆すようなものには今までのところ出逢ったことがありません。

 私がPAULの他に印象的だったのが、栃木県宇都宮市に本店を構える「THE STANDARD BAKERS FARM」。力強い香りや食べ心地が心に残るおいしさです。

 そしてもう一つ。神奈川県・横浜市に本店を構える洋菓子店「ガトー・ド・ボワイヤージュ」でもカヌレが看板商品になっているので購入してみました。このカヌレは冷凍の状態で販売されていて、おいしく食べたい場合は、トースターで温め直すことを勧められました。

 ここで気がついたのは、冷凍されて販売されているものは、温め直すことで若干のリカバリーがあるものの、焼きたての風味とはやっぱり違うということ。他店でも冷凍販売されている場合がありますが、本当においしいカヌレを探している場合は、避けた方が賢明でしょう。

 そして同時に気がついたのは、軽く温め直すことでどんなカヌレもおいしさが底上げされるということです。

 結論としては、定評のあるベーカリーのカヌレを選ぶこと。トースターで軽く温め直すことでそのままの状態よりもおいしく味わえるということでした。

 いずれも特別なポイントではありませんが、この2点をおさえるだけでおいしいカヌレに巡り合える可能性は飛躍的に高まるはずですから、ぜひ試してみてくださいね!

<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】

食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12