クリスマス、ハロウィン、バレンタイン…… 季節のイベントには誰でも心躍るものです。しかし、はしゃぎすぎると良くないことも起こるもの。今回はハロウィンにやらかしてしまったある女性のエピソードを紹介します。
◆待ちに待ったハロウィン当日
イベントごとがとにかく大好きな鈴木紘子さん(仮名・27歳)。昼間は工業機械の輸入商社に勤めるキャリアウーマンです。
紘子さんは、当時付き合っていた彼を自宅に招いて二人だけのハロウィンパーティーをすることになったそうです。その日彼の方が仕事終わりの時間が遅く、紘子さんが先に帰宅してパーティーの準備をすることに。
仕事帰りにカボチャと食材を買い込み、シチューやサラダを手際よく作り、食卓に並べるといよいよハロウィンらしくなってきました。
「本当にイベント事が大好きなんです。特にコスプレも美味しい料理も両方楽しめるハロウィンは、クリスマスより好きかも! ケーキは彼の担当で、近所でも有名なケーキ屋さんで買ってきてくれることになってたんです」
ハロウィンはもちろんのこと、久々に彼と会えるとあってワクワクが抑えられない紘子さん。気分はいよいよ最高潮です。
◆貞子の仮装をして準備バッチリ
肝心な仮装は、普段着の白ワンピで貞子に変身することを企んだ紘子さん。
「コスプレの動画を色々漁っていて『手間をかけずに激変するコスプレ!』というタイトルについ惹かれて見てみたら、私でもすぐにできそうだったので今年はコレに決めたんです」
長い髪を下ろし顔を覆うようにして、派手目の赤リップを塗って即席貞子の完成でした。即席にしてはまあまあ怖い仕上がりだったとか。
◆彼が帰宅、いざドッキリ!
しばらくしてインターホンが鳴りました。時刻はまだ早く、紘子さんは彼の仕事が早く終わったのかなと思いながら玄関に向かったそうです。
室内の照明を消したまま勢いよくドアを開け「わぁー!」と叫んだ紘子さん。
すると「ギャーー!」という悲鳴にも似た女性の声とともに「ドスン」と鈍い音がしました。
◆目の前にいたのは母親だった
驚いた紘子さんが髪をかき上げると、なんと目の前には腰を抜かして、玄関前にしゃがみこんだ母親の姿があったそうです。
「え! お母さん?」と抱きかかえようとするも「腰が痛くて立てないわ」と囁くような小さな声が返ってきたそう。
なんとかリビングまで母親を運び込み、彼の帰宅を待った二人。紘子さんは救急車を呼ぼうとしましたが、母親は世間体を考え大げさにはしないよう断ったそうです。口数も少なくなるほどに痛がる母親の腰をさすり続ける紘子さんでした。
◆彼の運転で病院へ、診断の結果は…
ようやく彼が帰宅し、すぐに彼の車で夜間の救急病院へ母親を連れていったそうです。宿直の若い医師に状況を説明しレントゲンを撮ってもらうと、診断結果はぎっくり腰。
「診察が終わって、ようやくお母さんも少し落ち着きを取り戻した時にうちに来た理由を聞いたんです。そしたら、ご近所からいただいた柿を私にお裾分けするためだったそうなんです」
母親は、紘子さんの貞子姿には本当に驚いたそうで、すっかり柿のことは忘れていて、病院からとりあえず紘子さんの自宅に戻ると、玄関の足元に柿が転がっていました。
◆最悪のハロウィンの夜に
彼を驚かすつもりが母親をぎっくり腰にさせてしまった紘子さん。もちろんその日はハロウィンパーティーどころではなく、最悪のハロウィンの夜になったのでした。
「我ながら、いい歳してこんなことをしてしまい、とっても落ち込みました。母親には申し訳ない気持ちで一杯です」
少し暗いトーンでそう語る紘子さん。相当落ち込んだそうです。
◆結婚式で再び貞子の仮装
その後、無事母親のぎっくり腰も完治し、母親に普段の生活が戻ったそうです。その後、紘子さんと彼は翌年の春にめでたくゴールイン。
披露宴の宴では、イベント好きな紘子さんらしく、いろんな趣向がたくさん詰まった楽しいひと時だったそうです。極め付けは、新郎新婦がともにコスプレで臨んだ両親への贈る言葉の挨拶でした。なんと、紘子さんのコスプレは懲りずに貞子だったそう。
白いワンピに長い髪の毛と真っ赤なリップ。格好は真面目さに欠けていましたが、母親に向かってスピーチする紘子さんは、真面目な顔つきで感謝を伝えたそう。
「お母さん。あの時は怪我させてしまい本当にごめんなさい。ハロウィンは気をつけます」
と、感謝の言葉の後に付け加え、会場の笑いを取ったのだとか。
―シリーズ「秋のトホホ」―
<文/大杉沙樹>
【大杉沙樹】
わんぱく2児の母親というお仕事と、ライターを掛け持ちするアラフォー女子。昨今の情勢でアジアに単身赴任中の夫は帰国できず。家族団欒夢見てがんばってます。