最初に皆さんに一つ質問があります。
もし、1997年に店頭公開したヤフーの新規公開株に100万円投資したら2000年にいくらになったと思いますか?
2倍以上になったでしょうか?もしかしたら10倍とか、、、あるいはこうやってあえて質問するくらいですから、もしかして50倍以上かな?などとお考えになる方もいらっしゃるかも知れませんね。この質問の正解はすぐ後の部分にあります。お楽しみに読み進んでいただければ幸いです。

小型株とは何でしょうか?

今回は小型株についてその魅力の一端をお伝えしたいと考えていますが、まず最初に、そもそも小型株とは一体何なのか、ということをはっきりさせなければなりませんね。

東京証券取引所では、一部上場銘柄の中から時価総額と流動性が高い順に100銘柄を大型株としています。その次に時価総額と流動性が高い400銘柄を中型株として、それ以外を小型株と分類しています。小型株の銘柄の数は東証全体の8割近くを占めますが、時価総額はその1割に過ぎません。それから、ジャスダックなどの新興市場の株式も通常小型株に分類されます。

技術革新や新産業の勃興により急成長も

小型株の爆発的成長例 | 1997年~2000年のヤフー

先程のご質問を覚えていらっしゃいますか?

もしも、1997年に店頭公開したヤフーの新規公開株に100万円投資したら約2年でその100万円はいくらになったと思いますか?というご質問でした。あなたは、2倍の200万円、5倍の500万円、10倍の1000万円など、様々な推測をされたと思います。

正解は、なんと957倍!1997年11月から2000年2月までの、わずか2年強で100万円が9億5700万円になりました。

1997年11月4日に募集されたヤフーの新規公開株の価格は70万円でした。その後、最初の取引の初値は200万円でしたが、2000年の2月には1億6780万円に上昇しました。ちなみに、これは日本株の個別銘柄としての歴史的最高値です。それだけではありません。この短い間にヤフーは1:2の分割を2度おこなっていますから、株数が4倍になっています。ですから結論としては、ヤフーの新規公開株に投資した方は2年強で資金を957倍に、すなわち100万円の投資であれば、これを9億5700万円に増やすことができたのです。

それではなぜ、当時のヤフーはこのように激しく上昇したのでしょうか?

技術革新や新たな産業の担い手としての小型株

20世紀なかばまでこの世にインターネットというものは存在しませんでした。今や多くの人がスマホを持ち歩いています。世界中の情報にいつでもどこでもアクセスし、そして世界中の人々とインターネットを通じて様々な手段で交流することができるようになりました。

全く新しい、そして巨大な産業がゼロから出来上がったわけです。このようなことが起こるときに、その産業を担う企業はその産業の発展やそれによる社会の変化による恩恵をフルに享受することになります。ヤフーの場合を例に取ると、インターネット産業自体がゼロスタートでしたから、それを担う会社も小規模でした。上場している場合でも、小型株ということになります。そして、その産業が巨大な産業に成長する場合には、それを担っていく会社はめざましく発展し、その結果株価は激しく上昇する、ということが起こるわけです。ヤフーの例はまさにそれだったわけですね。

このヤフーの推移例を見ていただくだけでも、小型株がいかに大きく上昇する可能性を秘めているかをご理解いただけたと思います。

小型株効果とは

小型株効果というのは、「長期的に平均を取ると大型株より小型株のほうが上りやすい」という傾向のことです。長期的に平均を取れば、です。ご存じなかった方は、びっくりしてなんだか胡散臭い話だな、とお感じになるかもしれません。でも、これは実際に、多くの統計により確認されている傾向です。英語にも「small-firm effect」という言葉があり、よく知られている証券用語です。

この小型株効果については、以下にお示しする比較チャートからもご理解いただけると思います。

このチャートは、1998年から2019年までの日経平均・TOPIX・ジャスダック指数の比較チャートです。1998/10/13をそれぞれ100になるようにスケールを合わせて変動率を比較しやすくしてあります。

※「1998円から2015年までの日経平均・TOPIX・ジャスダック指数の比較チャート」より筆者が作図

小型株で構成されているジャスダック指数は、大型株の値動きに比較的連動しやすい日経平均やTOPIXと比べて、10年間では6.3倍の値上がりとなっています。「小型株効果」についてご存じない方にとっては驚きの結果ではないでしょうか?この投稿にあたり、小型株効果について調べてみて、私自身その素晴らしさに改めて目を見張りました。しかし、一般の投資家には小型株効果はさほど知られていないように思います。

小型株効果はインデックスファンドとは無縁

余談ですが、TOPIXや日経平均に連動するインデックスファンドは、このような小型株の成長の恩恵をほとんど受けられません。TOPIXや日経平均のような株価指数を左右するのは、大型株だからです。大型株は、どうしても成長のステージが終わって成熟した企業が多くなります。すこし話題がそれますので、この点についての考え方は、別の機会に申し上げたいと思います(インデックスファンドに魅力がない、ということを言いたいわけではありません。インデックスファンドへの投資は有益だと考えます。しかし、これはこれでなかなか奥の深いお話です)。

「小型株効果」については様々な証券会社の用語解説集にも記述されており、海外のウェブサイトでも同様の説明が多数あります。ちなみに、「小型株効果」は英語では"Small-Firm Effect" といいます。ほぼ直訳で、名前も中身も全く同じです。

インターネットで公開されている野村證券用語解説集は「小型株効果」の意味について以下のように解説しています。

株式の時価総額が小さい小型株は、大きい大型株よりも収益率が相対的に高くなりやすい傾向にあること。

※ 引用:野村證券 証券用語解説集 小型株効果(こがたかぶこうか)

ところでこの小型株効果については、証券アナリストの岡田賢悟氏による素晴らしい論文が存在します。岡田氏は、ジャスダックを含む国内上場株式を、時価総額、資本、売上の3つの指標ごとに、大きい順に10のグループに分類しました。そのうえで、1986年9月末に1円ずつそれぞれの指標のそれぞれのグループに投資をし、1年経過するごとに10のグループの分類をリバランスしてから同一のグループに再投資するということを2005年まで繰り返した場合のデータを取りました。なぜ1年ごとにグループをリバランスするかというと、最初小型株だったのが成長して規模を拡大し、中型株や大型株のグループに変化する会社やその逆の会社が出てくるため、小型株効果を計測する際に誤差が出てくることを考慮したのだと思われます。

証券アナリストジャーナル2006.7 小型株効果と企業規模 -割安株効果との新たな関係―  岡田賢悟

 ちょっとわかりにくいのですが、時価総額による分類を例にとれば、すべての銘柄を時価総額の大きさ順に10にグループ分けして、例えば一番時価総額の小さいグループに1円投資し、翌年には1年前に1円投資した結果を再度その時の時価総額の1番小さいグループに再投資する、というルールで19年間運用したわけです。その結果のグラフと元データを岡田氏は上記の論文で示していますので、以下に引用します。右側に行くほど小型株になるのですが、3つの指標全てで小型株であるほどパフォーマンスが良好であったことがはっきり見て取れますね。 

※この投稿では「小型株効果」すなわち、長期の統計で有意に小型株の上昇率が高くなる傾向があることについてお伝えしました。しかし、実際に投資する場合には、変動率や倒産確率など様々な要素をあわせて検討する必要があります。
必ずしも小型株が大型株より有利であるとは限りませんので、ご注意ください。

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