数々の映画やドラマに出演している、若手注目株の女優・松本穂香さん。大の映画好きでもあるという松本さんが、1995年のアニメーション映画『耳をすませば』について語ります。原作は、1989年に少女まんが雑誌『りぼん』で連載された柊あおいの名作『耳をすませば』。今年の10月14日から実写映画が公開されています。

銀幕ロンリーガール/松本穂香
松本穂香さん
◆見るたびに感情が動かされる、一番大好きな映画です

 今回、私がご紹介したい作品は、スタジオジブリのアニメーション映画『耳をすませば』です。ご紹介したいも何も超有名映画なので、大抵の方はご存じかと思いますが、このコラムを始めさせていただいてはや3年! 実写化を控えた(執筆時)タイミングで、私の大好きな映画を語らせていただこうと思います。

 主人公の月島雫は中学3年生。受験を控えているが勉強に身が入らず、大好きな読書ばかりして過ごしている。そんな雫が、本を通して出会った少年に影響を受け、小説を書き始める――。

銀幕ロンリーガール/松本穂香
アニメーション映画『耳をすませば』より ©1995 柊あおい/集英社・Studio Ghibli・NH
 大きな展開はなく、ただただ一人の少女の大切な時間を描く作品です。私は、疲れたときや行き詰まってしまったときなど、大事な局面で見ています。

◆とても尊くて美しい。雫の痛々しさが好き!

 そんな私が、その魅力を語るとき、愛情をこめて「雫の痛々しさが好き!」と言っています。好きな人ができ、彼の頑張る姿に憧れ、焦りつつも努力し、大好きな小説を書くことで初めて自分自身と向き合い、没頭し、すべてをさらけ出そうとする。そして、でき上がった小説を初めて人に読んでもらっている間、雫はいてもたってもいられず、冬の夜のベランダで小さくなり読み終わるのを待つんです。部屋の中で待っていても過ぎる時間は変わらない。それでも、寒い外で震えながら……。

 もちろん私にはそんな思い出はないけれど、なぜかこの雫の気持ちがわかるような気がします。自分でもわからない感情に動かされ、頭の中はぐちゃぐちゃ。初めてのことに心も体もついていかない。そんな感情の記憶が私にも確かにあるんです。ちょっと恥ずかしい記憶だけれど、あの時間はもう戻ってこないと思うと、とても尊くて美しい。

◆見るたびに大切なものを教えてくれる

 あの頃の自分と今の自分は何もかもが変わってしまったけれど、私が私であるということは変わらないんだなと、この映画を見るたびに感じさせてもらえます。やりたいことをやるためにはもっともっと勉強しなきゃ。雫の言葉と同時に、私も深くそう思う。見るたびに大切なものを教えてくれる、一番大好きな映画です。

●アニメーション映画『耳をすませば』

柊あおいの同名漫画が原作となったジブリ作品。天沢聖司の声は、高橋一生が務めた。松坂桃李と清野菜名のW主演で10月14日より実写映画が公開。 ©1995 柊あおい/集英社・Studio Ghibli・NH

<文/松本穂香>

【松本穂香】

’97年、大阪府生まれ。’15年にデビューし、映画やドラマを中心に活躍。週刊SPA!にて、映画コラム「松本穂香の銀幕ロンリーガール」を不定期連載中