こんにちは。整理収納アドバイザーの長谷川絹子です。
「片づけはしているのになんだかいつもゴチャゴチャしている」というのは、オープンな収納スペースにおいてよくある悩みではないでしょうか。
Kさん宅は40代のご夫婦2人+Kさんのお母さん、そしてペット4匹の暮らし。ご家族3人とも料理が大好きで、食材や調味料のストックが豊富。昨年、マイホームのプチリノベーションをおこない設置したパントリーが、見た目もごちゃごちゃしていて使いにくいのがお悩み。
「定期的にチェックをしていて、使っていないモノは処分している。賞味期限が近いものも把握しているのに、なぜかモノが増え続けてごちゃごちゃしてしまう原因がわからない。」というKさん。せっかくお金をかけてつくったパントリーをきちんとしたい!ということで、今回片付けサポートを依頼されました。
(※本サイトへの写真掲載は依頼者より許可を頂いています)
◆お片付けのファーストステップ「全部出し」
お片付けの基本は「使っているモノと使っていないモノ」をわけること。このため整理収納アドバイザーは、片付けのファーストステップで「全部出し」を行います。
この説明をしたところKさんは「いらないモノはきちんと整理しているし…」と全部出しにあまり気がのらない様子。
そこでアドバイザーは「グループ分けを見直すために、いったん全部出してみませんか?」と提案をして、ご納得をいただきました。家電はスペースと配線の関係で、そのままにしています。
全てを取り出し、アドバイザーが気づいた「使っていなそうなもの」「捨てたほうがよいもの」「別の場所にあったほうがよいもの」を確認していきます。
「整理しているのでいらないモノはない」とおっしゃっていたKさんですが、パントリーに収納されているモノを全て出してみた結果、ゴミ袋1つ分の「いらないモノ」が。全部出しをすることで、いるモノのフリをして潜んでいる、実はいらないモノを見つけ出すことができました。
◆全部出しで判明したごちゃごちゃの正体
全部出してみて確認をしたことで、Kさんが定期的にチェックを行い、賞味期限や使用用途などを把握したうえでストックしていることがよくわかりました。では、なぜごちゃごちゃしてしまうのでしょうか。原因は主に3つありました。
1. 見えないストック
「全部出し」をしてわかったのは、カップラーメンやお菓子などが、バスケットの奥底など、見えない部分にストックが詰まっていること。また、ごちゃごちゃさせたくない、という理由から調味料やドリンクの入っているケースに蓋をしていました。
ストックが十分あるのに、旦那さんがついつい新しいもの買ってきてしまう、ということもKさんのお悩みでしたが、ストックが目に入らないことで新しい買い物を誘発していたというわけです。
2. グループ分けが徹底されていない
整理収納を上手におこなうコツは、目的や頻度に応じたグループ分けです。
ところがこのパントリーでは「瓶の調味料」「ドリンク」「お菓子」と、わかりやすくグループ分けがされているのは一部のみであり、うちわと70リットルゴミ袋が一緒に入ってるなど、これは何のグループ?というボックスが目につきます。
パントリーにはペット用品も収納しているのですが、ペット用品と食料品がまざっていることも。
3. とりあえず突っ込み収納
グループ分けが徹底されていないことにより、所属グループ不明のモノが、とりあえず入るスペースに突っ込みをされて、ごちゃごちゃ感を生みだしていたということもわかりました。
さきほどのうちわとゴミ袋が入っていたのは、ファイル型のボックス。
入れ物の形とモノの形がマッチしたので、グループ分けを考えることなくとりあえず入れておいたというわけです。
ごちゃごちゃする原因がわかったので、解決するようにグループ分けを行った上で、収納場所を決めていく作業を行います。
◆目的・頻度でグループ分け、ベストポジションを決めていく
収納用品の形状にとらわれないよう、出した状態でグループ分けを行い、場所を決めていきます。ポイントは利便性を高めるために「毎日使う・よく使う」グループから場所を決めていくこと。
Kさん宅のパントリーにおいて、毎日使うモノは実は「ペット用品」「ごみ・そうじ用品」でした。パントリーにある食料品や消耗品のほとんどはストックであり、毎日稼働しているものは隣のキッチンスペースにあります。
「ペット用品」「ごみ・そうじ用品」はパントリーのある部屋入口に近い、腰の高さにあるスペースに決定。そしてグループの仲間を集めていきます。
ゴミ袋・不燃ごみボックス・ペットトイレ関係・お散歩袋・など毎日使うものは手前に、ペットのお洋服の予備などは奥の方に入れておきます。
奥のスペースが余ったので、いずれのグループにも入らず使用頻度は高くないけれどパントリーに置いておきたい、工具や懐中電灯を奥に配置、忘れないようにラベリング。
◆必要なのはストックをしまう収納用品ではなく、ストックの見える化だった!
食料品や消耗品は、ストックの見える化を意識して収納をしていきます。Kさん宅のパントリーにはロールカーテンが設置されており、来客時は目隠しすることもできるので、上部が多少賑やかになっても問題ないとのこと。
旦那さんが特によく買ってきてしまうカップ麺は、ボックスに入れることをやめました。お菓子は開封済のボックスをつくることで無駄買いを防ぎます。カップラーメンは利用頻度が高いストックであるため、台所に近い右側のスペースに配置します。
ストックを見えやすくするため、瓶の調味料やドリンク缶は縦に入れて、ボックスの蓋をすることなく収納、重量のある土鍋や缶詰めなどは地震で危険がないよう下の方に配置します。
当初Kさんは、ごちゃごちゃの原因は収納用品にあるのではないかと考えていたためアドバイザーには、買い替えるべき収納用品の提案をしてほしかったそうです。
ところが、グループ化を徹底することにより、各スペースに統一感が生まれ、既存の収納用品をそのまま利用して、ごちゃごちゃ感を打ち消すことができました。新しく必要になったのは、缶詰類を引き出すための高さの低いボックスのみ。
今回のKさん宅のパントリーに必要だったのは、上手に隠すための新しい収納用品ではなく、徹底したグループ分けと、ストックの見える化だったのです。
「毎日使うペットシーツを屈まずにとることができて快適」と、日々の使いやすさも手に入れることができました。
片付けというとどうしてもモノをかくしたり見えなくする「収納用品」にとらわれがちですが、大事なのはその前にある「整理」。モノをよりよく使うための、グループ分けをしたり定位置を決めることが、見た目のよさと暮らしやすさを両立させるコツとなります。
<文・写真/長谷川絹子>
【長谷川絹子】
整理収納アドバイザー/司法書士
明治大学文学部卒、渋谷区シルク司法書士事務所代表。相続や不動産の豊富な知識を活かして「小さく楽に豊かに暮らす」片づけとダウンサイジングをサポートしている。