女性のほうが信じる人が多いイメージで語られている占い。博報堂生活総研が20年に行った生活定点調査によると、「占い・おみくじを信じる」と答えた女性の割合は43.7%。20~60代の年代別に見ると20代が66.3%と一番高く、もっとも低い60代でも33.3%と3人に1人が信じているようです。
もちろん、それ自体は悪いことではないですが、なかには過剰なほどにハマってしまう人も。現に占い師に多額のお金を貢いだなんて話もあり、そこまでいかなくても周りにやたらと特定の占いや占い師を薦めてくる方もいます。
◆義父が亡くなった後、義母の心の穴を埋めたのが占い師だった?
紺野君枝さん(仮名・43歳)の数年前に亡くなった義母も生前はある女性占い師に心酔。義母との関係は良好でしたが、これを機にギクシャクしてしまったといいます。
「もともとすごく世話好きな方で、共働きで忙しかった私たち夫婦のためにおかずをよく持ってきてくれました。ただ、10年ほど前に義父が急死するとふさぎ込むようになってしまって……。しばらくすると元気を取り戻しましたが、以前とは明らかに様子が違いました。
ちょうどその頃です。お義母さんの口から占いという言葉をやたらと耳にするようになったのは」
ちなみに義母は久々に古い友人と会った際、占いに誘われたとか。そこで一緒に行ったところ、自分よりも若い女性占い師から悩み事の内容をズバズバ言い当てられたらしく、そこから一気にのめり込んでしまったようです。
「私個人は当たるも八卦(はっけ)当たらぬも八卦くらいにしか思っていません。それにお義母さんくらいの世代の方の悩みといえば、健康やお金のことを含めた老後の問題なので当てずっぽうでもそれっぽく言えるはずです。しかし、『あの人は本物!』と言い張り、ほぼ毎週のように1人で会いに行っているようでした」
◆君枝さんにも占いを勧めるように…
それでも自分のことだけならまだいいですが「子供ができないのは運気が悪いから」と言い、占い師にエネルギーを注入してもらったという安物にしか見えないブレスレットを渡してくることも。
さらに君枝さん夫婦の自宅を見回しては「このままだと運気が下がる」と部屋の模様替えを一方的に提案されたこともあったそうです。
「そもそも私たちは不妊ではなく、最初の数年間は将来に備えて貯金を優先させようと決めていただけ。何度も説明したのですが理解してもらえず、それどころか『一緒に先生(※占い師)のところに行きましょう!』ですからね。
会っても自分の主張を繰り返すだけで私らの話に耳を傾けようとしない。一人息子である夫に対しても同じ調子だったので彼が怒ってしまったんです」
◆義母は「90代まで生きられる」と言われたのに末期がんに
義実家とは30分ほどで行き来できる距離でしたが、義母とはこの出来事を機に疎遠に。久しぶりに連絡があったのはその半年後のことで、なんと入院することになったという報告でした。このとき、実はがんを発症しており、かなり進行している状態だったそうです。
「本人は『(占い師に)90代まで生きられるって言われたの』と喜んでいましたが、お義母さんは当時まだ60代。老け込む歳ではなかったのに入退院を繰り返すうちに弱っていくのがわかりました。
私は仕事を正社員から休みが比較的自由に取れるパート社員に切り替え、見舞いや介護を続けましたが驚いたのはお義母さんの通帳から700万円以上のお金が2年半くらいの間に消えていたこと。本人に確認したら占い師に言われるがままパワーストーンや壺を購入したそうで、義実家の床の間に大切そうに飾られていました」
◆積極的に介入して止めておくべきだったと後悔
占い商法と呼ばれる手口に酷似していますが、義母は占い師から直接買ったので領収書などはなかったとのこと。それもこの件について夫が相手にコンタクトを取ろうにも電話もメールもつながらず、連絡が取れませんでした。
「いつも喫茶店などで外で会っていたらしく、完全に消息がつかめなくなり大金を取られただけ。
彼女が消えたことは伝えませんでしたが『代わりに先生に会ってきてほしいの』と何度も言われ、最後まで信じている様子でした」
義母は最初の発症から2年も経たないうちに死去。お互い近くに住み、ひんぱんに会っていただけに占い師の件については未だに大きな後悔が残っているといいます。
「放置せずに私たち夫婦がきちんと止めていればダマされることもなく、もっと長生きすることができたんじゃないかなって。
亡くなってからの3年間で私たち夫婦は2人の子宝に恵まれましたが、子供の顔を見せることすら叶わなかった。そこは今でも心残りです」
単に占いが好きという程度なら構わないと思いますが、高額商品を買わされるなどの実害が出たら話は別。もし親しい人間の口から同じ占い師の名前が何度も出るようなった場合は注意したほうがいいかもしれないですね。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
一般男女のスカッと話やトンデモエピソードが大好物で、日夜収集に励んでいる。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。