自分の性格の嫌なところを直すのって、かなり難しいですよね。

今回は、あることがきっかけで自分の幸せに気がつき、周りに感謝できるようになった女性のエピソードをご紹介しましょう。

義母
写真はイメージです(以下同じ)
◆母親がまわりに意地悪を言う

松田彩芽さん(仮名・34歳・主婦)のお母さん(61歳)は、スポーツクラブに通うことが“生きがい”だというほどにハマっているそう。

「特にステップ運動やエアロビクスの上級クラスが楽しいそうで、難しい動きをスッとできる自分が好きみたいですね」

お母さんは昔から向上心が強く、そして少し意地悪な性格をしているそう。

「上級クラスに参加しているのに下手くそな人がいると、わざわざ呼び止めて『あなたは全然ついてこれていないから、中級にいってくれない?このクラスに参加したい上手な人いっぱいいるのに、あなたのせいで1枠無駄になっているのが分からないの?』と注意するそうなんですよ。最悪ですよね」

◆スポーツクラブで女王のように振る舞う母

彩芽さんが「お母さんだってその人と同じただの会員の1人なくせに偉そう過ぎるし、そんな風に指図する資格なんてないよ。恥ずかしいからやめて!」と頼んでも、全く言うことを聞いてくれません。

「『下手くそなおじさんに思いっきり言ってやったら、真っ赤になって帰って行ってザマーミロと思ったわ!』と爆笑している母を見ていると、意地悪された人はたまったもんじゃないよなと思います」

ジム、フィットネスクラブ
彩芽さんには優しいお母さんなのですが、周りの人には無邪気にやいばを向けるそう。

「歳の割には動けるし、複雑で激しい振り付けを覚えるのも得意な母はスポーツクラブ内で一目置かれているらしく、女王のように振る舞っていたのですが…」

さて、お母さんに何が起きたのでしょう?

◆母が足の不調で病院に行くと…

「激しい運動をすることが自分のプライドだった母は、当然無理をしているので、ちょいちょい膝(ひざ)に水が溜まってしまったり腰を痛めてしまったりと怪我も多かったんですよ」

そんなある日、またお母さんから「足首が痛くて歩くのも辛い」と連絡がありました。

「またいつものことかと思い、私の車で母を行きつけの病院に連れて行ったら先生からいきなり『今回はMRIでちゃんと検査した方がいい』と言われたんですよね。そんなこと初めて言われたので、私も母もびっくりしてしまって」

病院 入院
とりあえず彩芽さんは、すぐにMRIの予約を入れたそう。

「そしたらMRIの前日に母から電話があり『足の痛みがなくなってきたから、今日からスポーツクラブ再開したし、もう検査なんてしなくてもいい』なんて言い出すので、ちゃんと検査をして“なんの異常もないですよ”って言ってもらった方が安心でしょ?と必死に説得したんですよね。母はきっと直前になって検査が怖くなったんだと思います」

そしてお母さんのMRI検査の結果は…。

◆激しい運動は一生できないと言われ落ち込む母

「靭帯損傷(じんたいそんしょう)でした。もう激しい運動は一生できないと言われて母はショックを受けて、帰りの車の中で『生きがいがなくなった』と泣き出してしまったんですよ。なので『このタイミングで検査できてラッキーだったと思おうよ!このまま激しい運動続けていたら靭帯断絶しちゃって手術になって、ずっと松葉杖の生活になってたかもしれないんだよ?』と喝(かつ)を入れたんです」

靱帯損傷
ですが、お母さんはすっかり元気をなくして塞(ふさ)ぎ込んでしまったそう。

「さすがに心配になり、母の好物のチョコレートケーキを持って実家に寄ってみたんですよ」

◆自分の幸せに気づいた母の変化

するとお母さんは「かなり落ち込んだけど、彩芽ちゃんの言う通り靭帯断絶してしまう前に激しい運動をやめないと、こうして自由に歩き回ることすらできなくなるかもしれないんだもんね。やっと自分がすごく幸せだったと気がつけたよ。ありがとう」と言ってくれました。

「嬉しかったですね。『そうだよ!先生も、歩いたりヨガとかピラティスならやっても大丈夫だって言ってたし、またスポーツクラブで無理のない程度に運動続けたらいいじゃない』とテンション高く母の肩を揺すりました」

すると「ヨガなんて、あんな動いてんだか動いてないんだか分からないつまらなそうなヤツってずっと思っていたんだけどね」とお母さんが笑ってくれて、彩芽さんは“やっと調子が戻ってきたな”と安心したそう。

◆ヨガクラスの仲間に感謝するように

ヨガ 自宅 エクササイズ 運動
「それから母は『ヨガやピラティスは全く退屈なんかじゃなかった!インナーマッスルや内面を鍛えられる運動で、静かだけど熱いのよ』とハマりまくっていて、すっかり元気になったんですよ」

今じゃすっかり意地悪などしなくなり、ヨガ初心者のお母さんに親切にしてくれる同じクラスの仲間達に、感謝をしながら過ごしています。

「母は、大好きだった激しい運動はできなくなってしまいましたが…この件ですごく大きな学びがあったと思うんですよね。歳をとってからも人は変わることができるんだなと思いました」

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】

漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop