10代のころ、親や教師に反発して荒れた生活を送っていた方は少なくありません。しかし、自分の子供にも同じ経験をさせたいとは思わないはず。なかには反動で教育熱心になった人もいるようです。

 大学病院で医療事務として働く志村和美さん(仮名・47歳)は、強制こそしませんでしたが2人の娘が幼いころから十分な教育を受けられるように徹底してサポート。ところが、彼女自身は中学・高校時代に足首まである超ロングスカートで学校に通っていた不良。問題を起こして親が学校に呼び出されたのは一度や二度ではないといいます。

「ティーンズロード1995年2月号」ミリオン出版
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◆担任と衝突して高校を中退

「当時、東京ではそんな格好の人間は絶滅してたらしいですが、私が住んでた田舎はまだ80年代までのオールドスタイルが主流。今は思い出すだけで恥ずかしいですけど、あのころはダサいなんて微塵(みじん)も考えてなかったです。ただ、自転車通学だったため、丈の長すぎるスカートではとてもこぎづらかったのを覚えています(苦笑)」

 いつも同級生の不良グループとつるみ、他校のヤンキー女子たちにからまれてケンカをすることも。学校では授業もロクに聞いておらず、勉強はまったくしていなかったのでテストは毎回ぶっつけ本番。それでも全教科平均点前後は取れていたというからスゴいですが、素行(そこう)の悪さが響いて内申点は最低だったとか。そのため、地元で偏差値がもっとも低い底辺公立高校にしか行けなかったそうです。

「遅刻はもちろん、無断欠席でサボることも多かったから仕方ないです。それに仲のいい友達の何人かは同じ学校に進学したから別に嫌じゃなかったので。でも、先輩とトラブルを起こしたり、担任の先生と衝突して1年の1学期で中退してしまったんです」

◆自分が元ヤンなのは夫も娘も知っていたが…

 翌年、別の私立高校に改めて入学し、そこでは問題を起こしながらもなんとか卒業。そのころにはすっかり落ち着き、不良の世界から足を洗っていた和美さん。その後、専門学校時代のバイト先で今の夫と出会いますが、元ヤンだったことは交際中にカミングアウト。生まれてきた娘さんたちにもある程度は話していたそうです。

「夫や実家の母がネタのように話していたので隠しようがなく、開き直って『お母さんみたいになっちゃダメだよ』と言うしかなかったという(笑)。娘たちは私と違って真面目で素直な子に育ってくれましたが、次女はなんと教師を目指して大学は教育学部に進学。すると、ある日『レポートに必要だから不良だったころの話を聞かせて』と言われたんです」

元ヤン母が娘に
◆「お母さんの気持ち、わかるかも」とまさかの共感?

 ちなみにテーマは「年代別に見る高校中退者の考察」という内容。つまり、彼女にとって和美さんは格好の取材対象だったわけです。

「具体的なエピソードだったり、私が当時どう思っていたかなんて突っ込んだ話はしたことがなかったし、できれば触れたい内容ではありませんでした。けど、真剣な表情でお願いされ、ましてや大学のレポートに必要と言われたら母親として断れないじゃないですか。だから、本当はシブシブでしたけど、娘には笑顔で快諾したように見せました(笑)」

 押し入れの奥に封印していた中学の卒業アルバムやそのころの写真を引っぱり出し、不良の道に進んだ経緯や当時の心境、両親や教師、周りの大人たちをどう見ていたのかなどを1つ1つ丁寧に語ったとか。娘さんからの質問にもすべて答え、気がつくと2時間近くしゃべり続けていたそうです。

「このときは娘も茶々を入れたりせず、ちゃんと話を聞いてくれました。ウチは亡くなった父が良くも悪くも自分の考えを子供に押し付けてくる人で、グレ始めたのはそんな父への反発からでした。私が結婚するころにすっかり丸くなり、孫を溺愛する好々爺と化していましたが、娘は『ちょっとお母さんの気持ちわかるかも。親がそんなんだったら私も荒れてたと思うから』って。そんな風に理解を示してくれるとは思わなかったため、そこは嬉しかったですね」

アルバム
◆家族の前で面白おかしく暴露する娘に思わず怒りが

 ただし、その日の夜、仕事を終えて帰宅した父親と長女に向かって、「お母さん、中学生のときに隣町の学校の女子生徒と鼻血出しながら殴り合いのケンカしたんだって! 超ヤバいよね」と聞いたばかりのエピソードをさっそく暴露。しかも、先程の態度とはまったく違い、ハイテンションで語っていたといいます。

「あの子、意外と聞き上手なんだなと内心褒めていたのに私がバカでした……。さすがに腹が立ったので娘のこみかみを拳(こぶし)でグリグリしてお仕置きしておきました。『きゃー、おかーさん、ごめんなさい! 許して~』って悲鳴を上げてましたけどね(笑)」

 娘さんは最後の最後で元ヤンだった母親の地雷を踏んでしまったようです。

―シリーズ「ヤンキー・ギャル・コギャル」―

<文/トシタカマサ イラスト/やましたともこ>

【トシタカマサ】

一般男女のスカッと話やトンデモエピソードが大好物で、日夜収集に励んでいる。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。