恋愛漫画の名作『天使なんかじゃない』をはじめ、『ご近所物語』、『Paradise Kiss』、そして社会現象を起こした『NANA』など、数多くの人気作品を生みだした漫画家・矢沢あい氏。今夏から全国を巡回しながら開催中の「ALL TIME BEST 矢沢あい展」が、各地で大盛況です。
今の30~40代を中心に、多くの女性が夢中になった矢沢あいの漫画。作品自体が青春の1ページとなっている方も多いのではないでしょうか。その圧倒的な表現力と心理描写は、少女漫画史の中でも唯一無二と言われています。
そこで今回は、全国の30~40代女性に「矢沢あいの漫画の中で好きな作品」についてアンケートを取りました(※)。あなたのお気に入りの作品は何位に?
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Q. 矢沢あいの漫画の中で、好きな作品は?(複数回答可)。
10位 エスケープ 4%
同率8位 下弦の月 5.50%
同率8位 ラブレター 5.50%
同率6位 バラードまでそばにいて 8%
同率6位 風になれ! 8%
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◆10位 『エスケープ』、同率8位『下弦の月』『ラブレター』
10位には『エスケープ』がランクイン。1986年の作品で、学校にも家にも居場所がないと感じる高校生・佐藤薫を主人公に、悩み多き少女が大人になっていく姿を描いています。『エスケープ』を表題作とした単行本は、10代特有のリアルな青春模様を綴った短編集。
同率8位には、2作がランクイン。まずは1998年~1999年に「りぼん」で連載された『下弦の月』。居心地の悪い家を飛び出した女子高生・美月は、ギターを奏でる不思議な男性・アダムと出会います。幻想的でダークな世界観が印象的で、ページをめくる手が止まらないミステリー要素も満載の物語です。
そして、1986年~1987年に「りぼん」で連載された『ラブレター』。数学の武田先生に恋する中学生・星野ひとみを主人公にした、切なくもかわいいストーリーです。友達と、ハラハラキュンキュンしながら読んでいた方もいるのでは?
◆同率6位『バラードまでそばにいて』『風になれ!』
6位も同率で2作品がランクイン。まずは『バラードまでそばにいて』。勉強の苦手な中学生・野村広美が、“おバカ仲間”の宮本が歌手デビューしたことに触発され、アイドルを目指すようになるというお話。純粋な女の子たちと硬派な男の子という、矢沢あい作品らしいキャラの魅力に溢れています。
続いては、陸上を通じて成長していく中学生、由紀を主人公にした『風になれ!』。球拾いばかりの退屈なテニス部生活を過ごしていた中学生の由紀が、ひょんな事から知り合った高等部の名古屋秀樹に才能を見出され、陸上部へ入るというスポーツ青春ものです。
◆5位 『Paradise Kiss』 9.5%
5位には『Paradise Kiss』、通称“パラキス”がランクイン。のちに紹介する『ご近所物語』の続編で、名門進学校に通う真面目な高校生・早坂紫を主人公にした物語。
ある日、矢澤芸術学院の服飾科でファッションデザイナーを夢見る「パラダイス・キス」のメンバーに、ショーモデルとしてスカウトされた紫。彼らと友情を育み、また恋をしながら、夢を見つけていきます。ファッション誌『Zipper』で1999年~2003年に連載され、2011年には北川景子と向井理が主演で実写化されたことも話題に。
◆4位 『マリンブルーの風に抱かれて』 10%
4位には『マリンブルーの風に抱かれて』がランクイン。1989年~1992年にかけて「りぼん」で連載され、サーフィンを中心とした、同誌の中でも飛び抜けて大人っぽい世界観が印象的でした。主人公のモデルは工藤静香では?! という噂もありましたね。
小学生の頃にアメリカに引っ越した初恋の相手・有川亨を忘れられないでいた、主人公の橘遙。高校生になりビーチで再会するも、親友が亨を好きになってしまうなど、恋に友情に葛藤しながら揺れ動く心を描いた物語です。読めばきっと、アニメ化や実写化をされていない作品でありながら、ベスト4に輝いた理由に納得するはず。
◆3位 『ご近所物語』 21%
3位には『ご近所物語』がランクイン。1995年から1997年にかけて「りぼん」で連載されていました。ファッションデザイナーを夢見て矢澤芸術学院の服飾デザイン科に通う、高校1年生の幸田実果子が主人公。同じマンションに住む幼馴染・山口ツトムとの歯痒い恋愛を育みながら、お互いに成長していくストーリー。主人公を取り巻く友人たちとの人間模様も繊細に描かれています。
個性豊かなキャラクターたちのファッションも大いに注目されました。続編の『Paradise Kiss』で、実果子の妹が主要キャラとして登場している点も見どころです。
◆2位 『天使なんかじゃない』 34.5%
2位にランクインしたのは、『天使なんかじゃない』。通称“天ない”はシリーズ累計発行部数1000万部を超える名作。1991年から1994年にかけて「りぼん」で連載され、単行本は全8巻が刊行されています。2019年には『天使なんかじゃない 新装再編版』が発売されるなど、時代を超えて愛される少女漫画の金字塔です。
本作の舞台は、新しく創立された私立聖(ひじり)学園。いきなり生徒会役員に選ばれた、元気で明るいお調子者・冴島翠を主人公に、翠を取り巻く個性豊かな登場人物との友情や恋を描いています。
彼女たちが残した名言の数々を思い出し、いまだに心にグッとくる方も多いのではないでしょうか。翠の“親友”、麻宮裕子(通称マミリン)の『あたしは 冴島翠みたいになりたい』や、晃の『おれが おれの手で幸せにしてやりたいと思うのは おまえだけだ』などはあまりに有名。
◆1位 『NANA―ナナ―』 47%
そして1位にランクインしたのは、『NANA―ナナ―』。実写映画化、アニメ化、ゲーム化など幅広く展開され、累計発行部数は5000万部以上を誇る大ヒット作です。「りぼん」の増刊号「Cookie」で2話の読み切りとして掲載されたのち、2000年から連載されています(2009年から作者療養のため休載中)。
歌手という夢を追いかけ上京する大崎ナナと、彼氏を追いかけて上京する小松奈々(ハチ)が、ひょんなことから同居を始めるところから物語は始まります。
実写映画『NANA』(2005年)では、大崎ナナ役に中島美嘉、ハチ役に宮﨑あおいを起用し、劇中歌も大ヒットしました。連載再開を待ち望むファンは、ナナと“天ない”の晃が描かれた「ALL TIME BEST 矢沢あい展」のキービジュアルを、涙なしに見られなかったのではないでしょうか。
読書の秋。久しぶりに矢沢あい作品を“大人買い”して、美しい青春の世界にどっぷり浸るのも良いですね。
※【調査概要】
調査方法:アイブリッジ(株)提供の「リサーチプラス」モニター(30~49歳女性)に対してアンケートを行い、その結果を集計したものです。
調査期間:2022年9月21日
有効回答者数:30~49歳女性200人
<文/るしやま>