新型コロナウィルスの感染拡大により、サイクリングをはじめた人も多いのではないでしょうか。株式会社帝国データバンクの調査によると、自転車販売市場は、2020年度の売上が過去最高を更新しました。人との接触を避けながら気軽に運動できるサイクリングは、交通手段やレクリエーションとして需要が高まっています。
秋はサイクリングにぴったりの季節ですが、高山志帆さん(仮名・30歳・正社員)も、コロナ禍のサイクリングブームに便乗した1人。彼氏と一緒に行ったサイクリングでの残念な思い出を語ってくれました。
◆職場の先輩で頼りがいのある彼氏
志帆さんには、同じ職場で働く5つ年上の彼氏がいます。職場のメンバーは仲がよく、休日にはみんなで出かける機会も多かったそうです。
「仕事では真面目で頼りがいがあるのに、みんなで遊ぶときは子どもみたいに無邪気な彼が可愛くて、次第に惹かれていきました」
彼のギャップに惹かれたと話す志帆さん。アウトドアが趣味の志帆さん達は、付き合ってからも職場のメンバーとたびたび出かけていたそうです。
◆職場のみんなとサイクリングへ
「涼しくなってきたため、彼を含めた職場のメンバー5人とサイクリングへ行くことになりました。せっかくなら少し遠くのサイクリングコースへ行き、帰りは温泉で汗を流そうって話になったんです」
志帆さんは事前にネットでおすすめの温泉を調べ、帰りのプランを綿密に計画。温泉好きだったこともあり、浜名湖のサイクリングを心から待ちわびていたそう。迎えた当日、志帆さん達は高速で3時間ほどかかる浜名湖へ向かいます。
「浜名湖に到着して、はじめのうちはみんなで景色を楽しみながらサイクリングを満喫していたんです。その後、徐々に各自のペースで走行をはじめました」
◆サイクリングでマウントの取り合い
それぞれのペースで走行する中、志帆さんは彼氏とサイクリングを楽しみたくて、先頭を走る彼氏をうしろから必死に追いかけました。彼氏の隣を走っていたのは、Yさんでした。
「Yは彼と同期。一緒に出かける仲ですが、仕事ではお互いライバル意識があり、日頃からなにかとマウントの取り合いをしていたんです」
2人はサイクリングでもマウントの取り合いをはじめ、どちらが先にゴールするか競いはじめたそうです。
「『危ないしやめなよ』と2人に後ろから声をかけたのですが、聞こえていたのかどうか、まったく聞く耳を持たずで。抜きつ抜かれつの子どもじみた勝負が目の前で繰り広げられていました」
◆ゴール手前でおこった悲劇
ゴール地点まであと数メートル。長い下り坂がはじまったところで悲劇は起こります。
「彼が先頭に出て、Yとの距離が徐々に開きはじめました。Yより先にゴールできる喜びから、彼はどれくらい距離が離れているか確かめるため、走行しながら後ろを振り返ったんです」
志帆さんの彼氏はYとの距離を確認すると、優越感に浸り、満足そうな笑みを浮かべていたそう。しかし、志帆さんは「前!」と叫びます。
「彼は後ろに気をとられていたため、カーブにさしかかっていることに気づいていなかったのです。彼が前を向いたときには時すでに遅し。ガードレールに激突しました」
Yとの距離を気にしていた志帆さんの彼氏は、カーブが近づいているのに気づかず。結果、ガードレールにぶつかってしまったそうです。
◆腕が血だらけに
「転ばないよう腕をガードレールに押し当てながら必死で抵抗したようで、幸い大事には至りませんでした。ただ、見るのも痛々しいほど腕が血だらけで…」
骨は折れていなかったため、志帆さん達はいったんゴール地点を目指しました。その後、車に戻ってコンビニへ行き、消毒液やガーゼなどを購入して彼氏の手当てをしたそうです。
◆せっかくの予定が台無し
「彼のケガの状態から温泉は中止になり、そのまま帰宅しました。温泉をとても楽しみにしていたので、このときばかりは彼とYの子どもじみた行動にイラッとしちゃいましたね」
志帆さんが温泉を楽しみにしていたのは彼も知っていたため、帰宅後は何度も謝られたそうです。
子どもじみた争いが招いた悲劇。みんなで出かけるときぐらい、無駄な争いは控えてほしいものですね。
―シリーズ「秋のトホホ」―
<文/東あきえ>
【東あきえ】
ライター兼2人のヤンチャな男の子を育てる母。ビールと唐揚げをこよなく愛す。食べることが大好きゆえに、食育について勉強中。笑えるものから感動するものまで、さまざまな人間模様を綴る。Twitter:@akar184