現代の日本において年収300万円は決して低いとはいえません。全体の割合としても高く、多くの人が年収300万円で暮らしています。しかも、貯金ができている人のほうが多いのも事実です。しかし、いつも同じ状況が続くとは限りません。貯金を継続して目標額を貯めるには、適正な支出について考えていくことが必要でしょう。そこで、年収300万円とは実際にどれくらい貯金に回せるものなのか、モデルケースをあげながら説明していきます。

1.年収300万円の人の割合

2000年まで上昇傾向にあった給与所得者の平均年収は、2000年に入ると緩やかに下降を続けています。そのような状況の中、2019年現在の日本において年収300万円とはどれくらいの位置なのでしょうか。そこで、総務省統計局が毎年実施している「民間給与実態統計調査」をもとに、年収300万円の人の割合について見ていきましょう。平成30年度の調査報告によると、年間の給与所得が300万円以上400万円以下の人は約867万人で、全体の17.2%を占めています。次いで多いのが200万円以上300万円以下の人で、こちらは15.2%です。

つまり、年収300万円の給与所得者は、2019年の時点で最も高い割合を占めていることがわかります。では、次に男女別で見ていきましょう。年収300万円の男性は、約509万人で17.3%、女性は約356万人で17.2%を占めています。全体の平均所得額で見た場合は、約441万円で男性は約545万円、女性は約293万円という結果です。男女別で見た場合、年収300万円の男性は平均より低いものの、女性の場合は平均よりやや高いといえます。

2.年収300万円の貯金平均額

年収300万円の人がどれくらい貯金を保有しているのかは、金融広報中央委員会が毎年実施している「家計の金融行動に関する世論調査」をもとに出すことができます。「家計の金融行動に関する世論調査」の平成30年度の調査結果によれば、年収が300万円以上500万円未満の単身者の場合、金融資産を保有していない人の割合は約27.4%です。一方、預金を含む金融資産額の平均は約738万円という結果が出ています。

年収300万円以上500万円未満の人の4人に3人は、現預金やその他の金融資産を持っていることがわかります。ただし、この中には年収400万円台の人も含まれるため、実際はやや違う数値になると考えておいたほうがいいでしょう。預貯金やその他金融資産の中で最も多い額は100万円未満で、割合は全体の約21.4%を占めています。続いて多いのは100万円以上200万円未満で、こちらは全体の13.2%という結果です。 

3.年収300万円の手取り月収

年収300万円の中には、税金や保険料などが含まれているため、実際は全額が手元に残るわけではありません。では、年収300万円とは具体的にどれくらいの手取り月収になるのか見ていきましょう。

3-1.会社員の場合

ここでは、被扶養者のいない単身者の場合で説明していきます。所得税や住民税は、それぞれに異なりますが、仮に所得税が約6万円で住民税が約12万5000円とした場合、税金だけで18万5000円ほどかかります。さらに、厚生年金保険料と健康保険料を合算した社会保険は、年間で約42万円です。年収300万円からこれらの税金と保険料を差し引いていくと、手元に残るのは230万~240万円ほどになります。実際は、居住地や年齢、さらに勤務先の社会保険料率がどれくらいかで差し引かれる額は変わりますが、手取り月収は20万円前後といえるでしょう。

3-2.個人事業主の場合

個人事業主の場合は会社員と異なり、同じ年収300万円といっても実際の手取り額は経費で変動します。まず経費を引いた額を算出し、そこから保険料や税金が差し引かれるのが通常の流れです。例えば、年収が300万円で仕事にかかった経費が100万円なら、200万円が所得として計算されます。この場合の国民健康保険料は年間約15万円で、国民年金保険料は19万円ほどです。

さらに、所得税は約3万1000円、住民税においては7万2000円程度はかかると考えたほうがいいでしょう。自営業は、年度ごとで年収が変動しやすいですが、次年度も同じく年収300万円の場合なら手取り額は256万円ほどです。しかし、経費がかからなかった場合は同じ年収でもまったく違います。300万円がそのまま所得として計算されるため、所得税は約7万6000円、住民税は約16万円と一気に跳ね上がります。国民健康保険税も約24万円と大きく上がることになり、手取り額が下がることは避けられません。

唯一、国民年金保険料だけは所得に左右されないため19万円のままです。次年度も同じ年収で300万円の場合の手取り額は約232万円と下がってしまいます。つまり、100万円の経費がかかるかどうかの問題で、年間に差し引かれる税金や保険料は22万円ほども差が出ることになるのです。自営業は、会社員と比べた場合、年金や保険の負担額は大きい傾向にあります。自営業は、経費を上手に使って所得額を抑え、節税につなげることが手取り額を上げる近道といえるでしょう。

4.年収300万円で貯金を作るためのモデルケース

年収が300万円であっても、貯金を増やしていくことは決して難しいことではありません。まずは、浪費を抑えて収入に合った変動費や固定費の範囲内で生活していけば貯金することは可能です。そのためには、お金の流れを把握して貯金の作り方を可視化することが重要といえます。そこで、年収300万円で手取り額が20万円の単身者の場合で貯金を作るモデルケースを紹介します。なかには、同じ300万円の年収でも100万円を貯金できる人もいるかもしれません。しかし、あくまでモデルケースとして自分のライフスタイルに合わせ、貯金目標を実現するための参考にとどめておきましょう。

4-1.貯金

貯金は大切ですが、無理な額を設定して生活が不自由になっては意味がありません。まず、貯金は年収に対してどれくらいの額が妥当なのか知っておくことが必要です。実際の年収によって違いはありますが、手取り額の10~20%が貯金の目安といわれています。年収300万円の場合の手取り額は約20万円ですから、月に換算すると2万~4万円程度、年間では24万~48万円が貯金可能な範囲です。

ボーナスが支給される場合は、ボーナスをそのまま貯金に回せば、それ以上貯めることもできます。ただし、生活には個人差があります。そこまでの割合を貯金に回すのが難しい場合には、はじめは手取り額の5%を目安に始めても十分です。大切なのは、貯金を心がけることなので、できる範囲から始めて徐々に貯金額を上げていきましょう。また、生活に余裕がある人の場合は手取り額の30%を貯金にあてると早く目標の額を貯めることができます。

4-2.生活に最低限必要な支出

約20万円の手取り額から2万~4万円ほどを貯金にあてた場合、手元には16万~18万円ほどが残ります。ここでは、残った16万~18万円で生活をするには何にどれぐらいの費用をかけられるのかについて見ていきましょう。

4-2-1.家賃

家賃は、地域による差が大きいため、一概にいくらと出すことは難しいかもしれません。そこで、ここでは東京都を例にあげて説明していきます。一般的に、家賃は手取り額の30%程度に抑えるのが望ましいといわれています。つまり、手取り額が20万円の場合でいえば、家賃にかけられる上限は6万円です。貯金を除いた18万円で生活する場合は、5万4000円が上限という考え方になります。また、この額の中には共益費や管理費も含まれていることが理想です。

大手不動産会社によって公開されている東京都23区で家賃相場を見ると、5万~6万円の家賃が可能なのは1Rが一般的です。例えば、2019年10月現在で足立区は6万円程度、葛飾区なら5万8000円で借りることができます。もちろん、築年数や立地条件、広さなどで変わりますが、6畳以下の物件を選べばさらに家賃を下げることは可能でしょう。他にも、やや広い物件を友人とシェアするという方法もありますし、シェアハウスを利用するのもいいかもしれません。

4-2-2.光熱費

総務省統計局では、家計調査を実施しネット上で公開しています。その調査の2018年の家計収支編によれば、単身世帯が1カ月にかける電気代は5852円、ガス代は3104円、そして上下水道料が2142円という結果でした。つまり、平均額から見ると月額1万1000円程度の水道光熱費がかかると考えておけばいいでしょう。ただし、光熱費は居住地や季節、契約する電気会社や利用プランなどで異なります。また、そこに住む人のライフスタイルによっても大きく変動するということも念頭におかなければなりません。

4-2-3.食費

同じく家計調査の家計収支編で食費の平均を見た場合、2018年における単身者の1カ月あたりの額は約4万26円という結果が出ています。単身世帯としては、やや高い印象を受けるかもしれませんが、このうちの1万653円は外食費です。つまり、外食を一切しないと考えた場合には約2万9000円の食費を抑えることができることになります。自宅で食べるといっても惣菜の購入やデリバリーなども含まれるため、自炊にこだわればさらに食費を下げることはできるでしょう。ただし、「食費は単に抑えればいい」ということではありません。栄養バランスを考えることが重要です。食生活で健康維持ができれば、その分医療費や美容にかける費用の節約にもつながります。

4-2-4.通信費

現代社会において、スマートフォンや携帯電話は生活の必需品です。特に、単身者の場合は自宅の固定電話の代用をすることも多く、切り離すことはできません。スマートフォンは、契約する会社やプランによって異なりますが、大手キャリアの場合なら平均月額は5700~8000円前後です。端末を分割払いで購入している人の場合は、さらに月々の支払いは上がるといえるでしょう。また、自宅に光回線を引く場合、集合住宅であれば1カ月の料金は4100円ほどかかります。スマートフォンや光回線を使う場合は、1カ月当たり1万~1万2000円程度は見ておいたほうがいいでしょう。

4-3.その他の支出

生活をするには、光熱費や食費などの基本的な支出以外にもさまざまな出費があります。その中には服飾費やトイレットペーパーなど日用品も含まれますが、交際費なども必要です。これらをその他の支出として説明していきます。

4-3-1.交際費

総務省統計局が発表している家計調査の家計収支編によると、2018年の単身世帯における1カ月の交際費は平均1万4857円です。交際費の内訳は、友人や会社の同僚との飲み会やランチなどがあげられます。他には、デートやパーティにかける人も見られます。交際費は、手取り額の10%ほどが適切といわれているため、手取りが20万円の場合なら1万8000円~2万円程度が妥当といえるでしょう。

4-3-2.服飾費

服飾費には、服や靴などの他にアクセサリ類などがあげられます。総務省統計局の家計調査によると、単身世帯で2018年にかかった被服および履物の購入にかかった費用は平均5312円です。普段着以外にもビジネス用のシャツやスーツ、さらにクリーニング代なども含まれることを考えると、やや低い数値であるといえるかもしれません。服飾費は、手取り額の5%程度までが適切といわれているため、20万円で生活する場合は1万円までかけることは可能です。ただし、5000円程度で抑えることができるなら、その分貯金に回すといいでしょう。

4-3-3.その他

その他とは、洗剤やトイレットペーパーなど生活に欠かせない日用品などが主ですが、交通費や医療費、理容室代や美容室代も含まれます。書籍や趣味にかける人もいれば、タバコなどの嗜好品にかける人もいます。また、医療保険などに加入していれば、その費用も考えておかなければなりません。その他の支出を全体的に見ていくと、交際費のようにかなり抑えられるものもあります。しかし、生活を豊かにするためには必要な支出であり、無理のない範囲内で楽しむことが大切といえるでしょう。

4-4.モデルケースのまとめ

手取り額が20万円と考えた場合、家賃は最高でも6万円に抑えることがポイントです。さらに、光熱費が約1万1000円で食費は約2万9000円、通信費は1万~1万2000円と見て、貯金を4万円引いた場合でも4万8000以上残る計算になります。そこから交際費として約1万5000円や服飾費の約6000円を引いた場合、2万7000円以上は残ると考えていいでしょう。その他に日用品がといっても、生活費を圧迫するほどの支出ではありません。

交通費や理美容にかかる費用、交通費や書籍代などは毎月必ず発生するとはいえないうえに、その都度変動するものです。節約もしやすく、残金から捻出することは十分可能といえます。ここで参考にあげた費用を上限として予算を組んでいけば、生活費が赤字になることはないでしょう。つまり、手取り額が20万円あれば毎月2万~4万円の貯金をすることは十分可能です。

5.年収300万円の生活からわかること

ここまでは単身者を例にモデルケースをあげてきました。これを参考に年収300万円の生活からどのようなことが見えてくるのか、次は少し視点を変えて説明していきます。

5-1.年100万円の貯金も夢ではない

例えば、1年の貯金目標を100万円に設定する場合、毎月の貯金額は約8万4000円です。先に示したモデルケースの場合でも、毎月4万円の貯金は十分可能でした。そこから、さらに4万4000円の貯金額をプラスするには大きく節約をしなければなりません。そこで、注目したいのが、最も支出の大きい家賃です。例えば、年収200万円の水準に合わせて家賃を4万円に落とせば、ここで2万円が浮く計算になります。ここまで落としてしまうと、都心の場合はかなり狭いうえに築浅物件や立地の利便性などは見込めないでしょう。しかし、地方であれば8畳ほどの広さの部屋を探すことは可能です。

モデルケースでは、自宅に光回線を引くことを想定していますが、スマートフォンだけでも実際は十分といえます。さらに、格安SIMを使えば通信費全体で2000円程度に抑えることが可能でしょう。ここで、約8000円~1万円程度の節約になります。食費は、自炊を優先するのはもちろんですが、食材を抑えることで1食当たり100円のレシピも不可能ではありません。勤務先にお弁当を持参するようにすれば、さらに節約になり3食の自炊なら1日当たり500円で賄うこともできます。すると、1カ月の食費は1万6000円あれば十分です。ここで、さらに1万3000円程度節約できることになります。

このようにできる範囲で考えていけば、全体で4万1000円~4万3000円を節約することは十分可能です。これらをすべて貯金に回せば、毎月8万円以上の貯金も夢ではありません。しかし、あまりにも切り詰めてしまう生活は精神面でストレスになってしまう可能性があります。また、自炊も場合によっては時間がかかり、他のことに影響が出ることも否めません。自分の生活サイクルや状況を考え、実現可能な場合は挑戦してみるといいでしょう。

5-2.夫婦2人の場合でも生活は可能

では、夫婦2人世帯の場合はどうでしょうか。結論からいえば、大人2人であっても年収300万円で貯金をすることは可能です。ただし、人数が増える分、食費などどうしても抑えにくい部分はあります。この場合は、レジャー費や理美容費、被服費などを抑えるようにしましょう。他にも、スマートフォンを格安SIMなどに変えることで節約は可能です。このように、費用を浮かせていけば夫婦2人世帯でも毎月4万円程度の貯金はできるでしょう。

5-3.子どもを育てる場合は少し厳しい

夫婦2人に子ども1人を持った場合で考えると、貯金をしていくのは難しくなります。人数が増えることで変動するのは食費と日用品です。また、子どもがいると教育費を考えなければなりません。平均的な費用で見ていくと、高校の3年間で子ども1人にかかる費用は、公立の場合で約115万円、私立ならさらに高い290万円ほどが必要です。さらに、大学に進学する場合、4年間にかかる費用は公立でも約240万円、私立の場合は文系または理系かで実際の費用は違いますが、低い場合でも390万円ほど、高い場合には520万円程度は見ておかなければなりません。

これらの教育にかかる費用を捻出するには、子どもが高校受験を迎えるまでの15年の間に貯めることが必須です。毎月2万円程度の貯金をすれば約360万円、毎月3万円なら540万円程度は貯金できる計算になります。ここまでの貯金ができていれば、公立高校はもちろん、私立高校の場合でも入学は可能です。ただし、子どもの人数が増えれば、それだけ支出も貯金額も必要になります。

5-4.住宅ローンは負担が大きい

家庭を持った場合の大きな支出としてあげられるのが住宅ローンです。住宅ローンの目安は、年収に対して5~6倍ほどが適切といわれています。年収300万円の場合でいえば、理論上は1500~1800万円の住宅ローンが可能だということです。ただし、住宅ローンを組む際は、返済期間が完了するまで無理なく返済できる額で設定しなければなりません。最も好ましいのは、できる限り頭金を払っておくことです。しかし、子どもが産まれた場合には、教育費も貯めながら頭金まで用意していくのはなかなか難しいでしょう。

6.年収300万円で貯金を作るためのポイント

年収300万円であっても、貯金することは十分可能です。しかし、貯金を継続していくことを考えると押さえておきたいポイントがいくつか出てきます。ここでは、具体的なポイントについて説明していきます。

6-1.家計簿をつける

これまでに紹介したモデルケースを実行するには、まず自分の収支状況を可視化する必要があります。お金の流れを把握できるようにし、無駄な部分を洗い出していくには家計簿をつけるようにしましょう。実際にいくらのお金が何に使われているのかを記録するのです。年収300万円でお金が手元に残っていない場合、どこかで浪費している可能性が高いです。疑問を感じたら、これをきっかけにして収支を見直し生活を改めてみましょう。

家計簿は、アプリを利用すれば簡単に入力できるものがいろいろ出ています。また、クレジットカードや銀行、電子マネーに対応したものであれば、簡単な入力で管理することも可能です。他にも、収支をグラフ化してわかりやすくしてくれるアプリもあるので、自分に合ったものを探してみましょう。もちろん、実際に貯金を始めてからも終始を把握することは重要です。常に家計をチェックし、無駄な部分はないか考えていくことで貯金を増やすことはできます。

6-2.自動的に貯金する仕組みを作る

自分ではなかなか貯金をするのが難しい場合は、強制的に蓄える仕組みを作れば問題解決につながります。最も好ましいのは、残ったから貯金するのではなく、先に貯金してしまうことです。お金が入った時点で、先取り貯金をする仕組みを作ってしまいましょう。例えば、会社員の場合なら給料が振り込まれた時点で自動的に引き落としになる財形貯蓄などを利用するのも一つの手段です。引き出しする前に引き落とされているので、うっかり使ってしまうこともありません。

また、少しでも増やすことを期待するなら、株式や投資信託という方法もあります。少ない額からできる商品もあるため、さまざまな商品で資産運用が検討可能です。ただし、元本が保証されている預金とは異なり、投資は元本割れになる可能性もある点はしっかりと把握しておきましょう。利率が高いもので考えるなら、積立定期貯金もお金を貯めやすい方法です。ただし、定期貯金のなかでも仕組預金などの場合は途中解約で元本割れを引き起こす商品もあります。そのため、契約する際は目先の金利に惑わされず、一般的な定期預金なのか、特殊な定期預金なのかについて確認しておくことが重要です。そのため、契約する際は短期のものにするか、満期までは絶対使わない前提で考えていくと失敗を避けられます。

6-3.貯金の目標額を設定する

前述したように、年収300万円で年間100万円の貯金をすることは無理なことではありません。先に不可能と考えてしまうより、貯金の目標額を決めてモチベーションを上げていきましょう。そのほうが継続しやすいといえます。1年で考えると、なかなか難しいかもしれませんが、例えば20年で1000万円程度の貯金を目標にするという方法もあります。この場合は、毎月約4万2000円の貯金額で実現可能です。こうして考えると、年収300万円でも不可能とはいえません。もちろん、目的もあったほうがさらにモチベーションは上がります。子どもの教育費や住宅ローンの頭金、または繰り上げ返済などを目的にすれば、収入が限られていても上手に節約することが期待できるでしょう。

7.子どもやマイホームを持つためのポイント

年収300万円の世帯は、実際に子どもやマイホームを考えたときに難しい収入といえます。しかし、経済的な理由で諦めてしまうなら支援を上手に活用するのも一つの方法でしょう。もちろん、収入を上げていくことも重要です。そこで、子どもを持つことやマイホームの実現に向けて具体的なポイントを説明していきます。

7-1.出産の支援を活用する

子どもの出産を控えている場合、はじめに心配されるのは出産にかかる費用でしょう。出産に関する支援はいくつかあり、出産手当金や出産一時金などがあげられます。出産手当金とは、働いている女性が対象となるもので出産によって休暇を取った場合の給与補助として受け取ることが可能です。共済組合や健康保険に申請を行うことで、給与の3分の2ほどの額が受け取れます。ただし、国民健康保険には出産手当の制度はないので、注意しましょう。

出産一時金とは、早産などが対象になる制度です。妊娠85日以上が対象で、通勤時や勤務中の災害による早産などが対象になります。この場合は、労災保険を受けた場合でも関係なく支給対象になるので、誤解のないようにしましょう。子ども1人に対して支給されるのは42万円ほどで、家族の扶養であっても問題なく受け取ることができます。出産一時金は、健康保険や共済組合だけでなく、国民健康保険に加入している人も対象です。

7-2.育児の支援を活用する

子どもを育てるうえで忘れてはいけないのが育児に関する支援です。育児で支給されるものでは、育児休業給付金や児童手当などがあげられます。育児休業給付金は、子どもが1歳の誕生日を迎えるまで育児休暇を取っていた場合が対象で、月給に対して約67%の額を受け取ることが可能です。育児休業給付金は、雇用保険加入者が対象の制度ですが、条件があります。11日以上勤務した月が2年間の間に12カ月なければ支給されません。しかし、父親も育児休業で受給できるため、共働き世帯の子育てに力強い制度といえます。

児童手当は、子どもがいる人すべてが対象で中学生卒業まで支給される手当です。支給額は、子どもの年齢に応じて異なります。3歳未満の場合は月約1万5000円、3歳以上で小学校終了前であれば月約1万円、中学生になると月約1万5000円です。また、第3子以上はさらに優遇され、3歳以上は小学校修了前までの支給額は1万5000円になります。支給されるのは4カ月ごとで2月、6月、10月です。

7-3.共働きを視野に入れる

年収300万円で貯金をする場合、節約や支援を利用することで貯金は可能です。しかし、子どもの教育費や住宅ローンを無理なく貯めていくには、世帯の収入アップを検討することも重要になってきます。貯金額をより一層増やしたい場合は、収入アップを目指すことが最も確実です。夫婦なら共働きをすることが貯金できる可能性も増えるでしょう。妻もフルタイムで働くなど夫婦で同じくらいの収入が見込めれば、貯金額は一気に増やせます。フルタイムが難しい場合は、どちらかの扶養範囲内で仕事を持つだけでも、貯金や住宅ローンの返済を楽にすることは十分可能といえるでしょう。

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