寝る、ゴハンを食べる、毛づくろい、また寝る。優雅な猫の1日を眺めていたら、ふと四字熟語が頭に浮かんできた。そんなきっかけで『にゃんこ四字熟語辞典』(飛鳥新社)が生まれました。可愛くて、時に間が抜けていてクスッと笑える猫達の写真とともに、「わかる!」と叫び出したい四字熟語が紹介されているのです。その数なんと95個。大人も子供もみんなで楽しめて勉強になる本書、さっそくめくってみましょう。
◆愛おしい、忘れたくないこんな気持ち
まずは誰もが知っている四字熟語。なかなか巡り合えないけれど、運命に導かれた奇跡の瞬間は、誰もが夢に描きます。こんな人に出会いたい、もしくは出会った頃に戻りたい。永遠に続いてほしいと願う気持ち、それは「相思相愛」です。
・相思相愛……お互いに慕い、愛し合うこと。
寄り添い合う2匹の猫の姿は、いつまでも見つめていたいですよね。
◆悲しいかな、世知辛いのも現実
テレビやネットで渦巻くのは、明るいニュースや話題ばかりではありません。むしろ物騒だったり、痛々しかったり、目を覆いたくなる事件や事故ばかり。なるべくそんな出来事や人には会いたくないけれど、警戒心を養うのはとても大切。というわけで、猫達も「海千山千」と警告を送ってくれました。
・海千山千……世の中の表と裏をよくこころえて、ずる賢いこと。またそのような人のこと。
何かを企んでいるような猫の表情や、ふてぶてしさがたまりません。
◆えっ、その写真、アップするの?
仲間同士で撮った写真、うっかり映ってしまった写真など、「え、今の不本意なんだけど」。あるいは羽目をはずした恥ずかしい写真など、「え、許可していないんだけど」。SNSにアップされてしまい、でも今さら削除させるのも心が狭いと思われるかも、と躊躇して結果スルー。「堅忍不抜(けんにんふばつ)」なあなた、実はえらいです。
・堅忍不抜……動揺することなく我慢強く耐え忍ぶこと。
花冠が美しく豪華でお似合いですが、あきらかに不機嫌な猫です。
◆ケンカや争いがなくなりますように
ご近所付き合い、会社での立ち位置、親戚や身内とのやりとり、友人知人とのつながりまで。悩みの大半は人間関係にあるといわれています。でももしかしたら、ひとりひとりが「善隣友好(ぜんりんゆうこう)」をモットーにすれば、案外あっさりうまくいくのかもしれません。国単位ではなく、まずは最小の人単位でお互いを大切にしていきたいです。
・善隣友好……隣の国と友好関係を結ぶこと。
猫とヒヨコ、本来は相いれないもの同志かもしれませんが、この写真からは安らぎがあふれています。
◆こんなはずじゃなかった、と後悔する前に
夏休みの宿題を後回しにする、ダイエットを明日からにする、失敗を隠そうとする、等々。自分がまいた種が結局自分を苦しめること、わりとありますよね。気づけば8月も末日、気づけば洋服が入らない、気づけば修復不可能になっている。もうどうにもならない!という事態に陥る前に、猫達の「自縄自縛(じじょうじばく)」の戒めを見つめてみましょう。
・自縄自縛……自分の行いで、身動きがとれなくなり、苦しむこと。
毛糸玉で遊んでいたら、自らがぐるぐる巻きになっていた、猫のあるある失敗ですが、見ているこちらはほっこりします。
◆酸いも甘いも、猫達と噛みしめてみる
四字熟語には、愛情に満ちた言葉も、辛辣な言葉も、教訓になる言葉もさまざまあります。たとえ手厳しくても、猫達の姿を見れば不思議と納得してしまうもの。そして元気になってしまうもの。私達の人生を先導しているような、自由でたくましい猫達に、あなたも諭されてみませんか。
<文/森美樹>
【森美樹】
1970年生まれ。少女小説を7冊刊行したのち休筆。2013年、「朝凪」(改題「まばたきがスイッチ」)で第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)を上梓。Twitter:@morimikixxx