岐阜県にある「ARTISTIC&CO. GLOBAL」の代表を務め、設立からわずか2年で年商150億円を達成した女性経営者の金松月(きん しょうげつ)さん。彼女は多忙な実業家でありながら、前夫との間にもうけた現在16歳の娘さんを育てるシングルマザーでもあります。「仕事は空気」というほど仕事に邁進してきた金さんがどのような子育てをしてきたのか、今回は母親としての一面にフォーカスを当て、お話をうかがいました。

◆学童保育をフル活用

2年で年商150億円を達成した女性経営者の金松月
2年で年商150億円を達成した女性経営者の金松月さん
――お子さんが小さかった頃も、お仕事はバリバリされていたとのことですが、お子さんはどこかに預けていたのですか?

金松月さん(以下、金)「学童保育はフル活用していました。他にも1時間単位で預けられるところにもお世話になっていました。私の場合はパートタイムではなく24時間、仕事が入る可能性があるので、そういう場所は使い倒している状態です。でも預け先が見つからない時もありました。小学生の女の子を夜ひとりでお留守番させるのは心配ですし、そんな時は仕事場に連れて行くこともありました。以前は司法関係の通訳もしていたので、仕事現場のロビーに預けさせてもらったこともあります。

仕事は急な依頼が入ることもありましたが、物理的に無理じゃなければ断らない方針でした。『子供がいるからできません』よりは、『今日はどうしても子供を預けるところがないので連れて行ってもいいですか』とお伺いをたてました。もちろん相手に迷惑をかけることになるのでは?と悩むこともありましたが、そんな余裕もなかったですし、子供も割とわがまま言わずに協力してくれて、周りの方々に温かく見守っていただきました。

3年前くらいまでは今の会社にもよく連れてきていました。当時はまだ少人数でほぼ全員が女性で、みんなの顔を知っています。ランチもカラオケもみんなと一緒に行ったりしていました(笑)。私ひとりではなく、まわりに育ててもらったという感覚は大きいです。子供にとってその時間は、私以外の“他の大人と触れ合う時間”としてとても勉強にもなっていると思います」

◆タクシーもよく使った

タクシー
写真はイメージ(以下同じ)
――お子さんの習い事や塾はどうしていたのですか?

金「私が幼い頃に経済的に恵まれていなかったこともあり、子供に『仕事で送迎が難しいから』『経済的に難しいから』という理由で塾や習い事ができない、ということは避けたいと思っていました。だから塾やピアノにスイミング、習字、英会話など、習い事はたくさんさせていました。子供が興味を持ったことを好きにやらせるためには、パートタイムのお給料では難しかったので、不自由をさせないためにもがむしゃらに働きました」

――送り迎えはどうしていたのですか?

金「タクシーを本当によく使いました。色々なタクシー会社には、『子育てタクシー』というサービスがあります。それはいつも行く自宅や塾などの場所を登録すると、子供でもひとりで乗せてくれるというサービスなのです。今は分かりませんが、当時はお金を持っていなくても、後払いできるシステムもありました。仕事のすべてがタクシー代よりも効率良く稼げる訳ではありませんでした。とは言え、目の前のお金以上に大切なことのためにはやむを得ないので、タクシーはよく使いましたね」

◆子供を「かわいそう」だと思わないように

――当時は、お子さんとの時間を作るのは難しかったですか?

金「子供との時間を削って仕事をしていましたね。仕事をしないと生活ができないからです。子供にはよく『屋根のあるおうちで、お腹いっぱいご飯を食べられることが当たり前じゃないんだよ』と言っていました。厳しい言い方かも知れませんが、仕事をして生活をしていかなきゃいけないということを伝えていました。

仕事が忙しいせいで、子供には寂しい思いをさせていることもあったと思います。でも私自身が子供を『かわいそう』だと思わないようにしていました。もちろん私も、罪悪感を感じることもありました。ただ、罪悪感を表に出し過ぎると、子供がそれをひとつの逃げ道にするのではないかと思いました。シングルマザーであるという環境は変えてあげることはできません。私も子供も現状を受け入れて、やっていかなければいけませんでした」

◆シングルマザーならではの悩みも

ディズニー
――シングルマザーとして大変だった思い出などはありますか?

金「なかなか遊びにも連れて行けなかったのですが、初めて子供をディズニーランドに連れて行った時に、子供と2人っきりで列に並ぶことになりました。そうすると、子供がお手洗いに行きたくなっても私が連れて行ってしまうと、また一から並び直さなければ行けません。だからひとりでお手洗いに行かせたら、迷子になってしまってすごく怖い思いをさせてしまいました…。

こういうことはシングルマザーに多い悩みだと思います。でもそれは徐々に学習していきました。そういう場に行く時は友達を誘ったりとか、あとは他のご家族がお出かけする時に声をかけていただいて、子供も一緒に連れて行ってもらったりもしました。たくさんまわりに助けてもらいながら育てました」

◆反抗期は大変

学生
――子育てが“1番大変だった時期”などはありますか?

金「今考えると、中学生の時は大変でした。反抗期で。とにかく態度が悪いのひと言に尽きます。まともに返事もしない、舌打ちはする、ぷんといなくなる(家の中で)という状態でした。小学生の頃は大変と思う時間もなく、バタバタと流れていったのです。中学校で一度、子供が私立の全寮制に入りました。その頃から少し大人ぶるようになったり、色々なホルモンバランスで今まで抑えていたものが抑えられなくなったりしたんだと思います。

とにかく態度が悪く挨拶もしないという状態で、最初の頃は『その態度はなんや~!』って怒ったりもしていました。とは言え、“反抗期”として受け止めなきゃと思いました。自分の中学生時代を思い出した時に、私も親にツンとしたい時期があったので『似てるな~』と思いましたね。

反抗期は時間が解決すると思ったので、怒って居場所をなくすのではなく受け止めよう、見守ろうと思いました。そしたら、そのうち子供が『反抗期だから』と自分の態度の悪さの言い訳をするようになり、会話が成り立つようになりました。そんな時に、自分のお腹を痛めた子でも、こんなに自我を持つようになるし、自分とは違うんだ。それなら、他人はもっと違うだろう…と学びました。そのように逆に子供に自分が育てられることも多々あります」

<取材・文/まなたろう>

【まなたろう】

多岐にわたって興味があるアラフォーライター。コーヒーが好きで資格を取得中。海外に12年ほど住んでいたため、英語はそこそこ堪能。