【BARのマスターに聞く! 第7回】

こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

長年の友達は大切にしたいけど、急に向こうが「ずっと変わらないでいてね」みたいな重たい空気を醸し出してきたら、皆さんどうしますか? 友達関係はステイタスの変化によって切れたり再び繋がったりするといいますが、ステイタスが変わらないからこそ、ちょっと“腐れ縁”に近くなるケースもあります。

BAR BOSSA
「BAR BOSSA」のマスター林伸次さん(右)と筆者・おおしまりえ(左)
前回記事から続き、渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主で『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』(産業編集センター刊)などの著書をもつ作家の林伸次さんと、大人からの友達関係について考えます。

◆長年の友達が「重い」その時どうする?

おおしまりえ(以下、おおしま):長年の友達って大事にしたいと思う反面、急に重たくなるケースって女性同士だと一定数あるように思います。例えば「このまま独身だったら一緒にシェアハウスに住もうね」みたいな半分“夢物語”的なものから、「お互い抜け駆け禁止だよ!」みたいな、ちょっと重すぎる言葉まで色々あります。

私個人で言えば、その昔「ずっと変わらないでいてね」と、褒め言葉の中に小さな呪いがこもった言葉をもらったことがあります。こういう友情と重さが混ざった言葉って、どう受け止めていったらいいんでしょうか。

林伸次(以下、林):僕は以前の記事でもお伝えしましたが「人間関係は流動的である」と思っています。相手を縛るような言葉は、まず言わないようにした方が良いと思います。もちろん言葉にはそれくらい好きっていう気持ちが込められているんでしょうが、だからといって変な約束を取り付ける必要はありません。

また言われた側であれば、ポジティブな部分だけを受け止めたら良いんじゃないでしょうか。

おおしま:受け手は、「一緒にシェアハウスに住みたいって思えるくらい、私のこと大事に思ってくれてるんだね、ありがとう!」ってところで止めておくんですね。

◆「この人は親友」と決めると苦しくなることも

BAR BOSSA
林:それで良いと思います。「この人は親友だから」みたいに決めると、親友なら一番に誘わなきゃとか、あれも報告しなきゃって感じで、自分自身が苦しくなります。そういう時、逆に相手が自分を誘わず別の人と遊びに行っていた、みたいなことがあると結構落ち込みますよね。

だから相手の期待や一方的な約束に答えるのではなく、その時々の最善の付き合いをするのが一番楽だと思います。

おおしま:その上で「もうあの子はいいや」って自分が思われたとしても、それは人間関係の流動性が働いただけだから仕方ないということですね。

友達が少ない人ほど、やっぱり1人の友達に固執(こしつ)しがちな気もします。そうならないためにも、意識的に色んな人との関わりを持てるような生き方をしていけたらいいんでしょうね。

◆友達は好きだけど友達の家族は苦手。どうすれば?

おおしま:友達付き合いの問題で、もう1つ林さんの意見を聞きたいことがあります。友達本人とは今も仲良しだけど、その家族とは合わないケースではどう接したら良いでしょう。例えば、友達は好きだけど旦那さんは苦手とか。友達とは今後も付き合っていきたいけど、家族ぐるみの関係は億劫(おっくう)とか。こういう関係性の問題って、年齢が上がるほどあると思うんです。

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林:世の中には、「みんな仲良しなのが正解」って思っている人が結構いるんですよね。レイヤーが違っていようがなんだろうが、みんな仲良しなのがいいよねって、彼らは本心から思っています。親戚同士でもありがちですが、「親族一丸となって助け合おう」みたいのを良しとする人っていませんか?

この問題は、みんなが集まってニコニコしているのが正解って思っている人が結構いるところに厄介(やっかい)さがあります。

◆「みんなで仲良く」がシンドいときの対処法

おおしま:なるほど! ちなみに、私の元カレの友達がそのタイプでした。いい人なんですが、友達とその家族みんなで集まろう~って色々企画してくれるんです。彼氏と一緒に何回か参加してアウェー感は薄れたのですが、ノリがいつまでも合わなくて……でも企画してくれる人も参加してくれる人もみんないい人だし、なにより彼氏の友達だからって感じで参加していました。泊りがけだったから結構キツかったなあ。

BAR BOSSA
林:僕は「みんな仲良し」なんて人間関係にはないと思っている人なので、無理する必要はないと口酸っぱく言うようにしています。どうしても合わない人っていますし、無理して会う必要はないんですよ。

仲のいい友達の結婚した相手と話が合わなかったら、その人を混ぜては会いたくないって、どこかで伝えるしかないです。みんな仲良くしているのが正解ってタイプは、この「合わなくて苦痛」って感覚が分からないですから。無理してみんなで盛り上がるべきじゃないっていうのは、僕は常に感じていますね。

おおしま:7年前の自分に伝えてあげたい…毎年大人数のBBQに参加しなくていいんだよ。彼氏の友達だからって、一泊旅行なんか行かなくてよかったんだよと(笑)。

◆人間関係を軽やかに保つコツ

おおしま:ここまで話を聞いていると、林さんって人との縁が切れることへの耐性が強いというか、人間関係に対する軽やかさがあって大人だなって感じます。達観する秘訣はあるのでしょうか。

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林:やっぱり、お店を長くやっていることが大きいです。お店をやっていると、よく来てくれた人がある日突然来なくなることが日常茶飯事です。そこにこだわっていると、気持ちがもちません。

あと、この人がお店に来ると雰囲気が悪くなるなと思ったら、こちらから出入り禁止にするしかないこともあります。こういう人づきあいを続けていたから、今のスタイルができ上がったんだと思います。

おおしま:人と繋がることも切れることも日常茶飯事だからこそなんですね。それを踏まえると、今の友達関係で悩むということは、新しいつながりが不足しているサインかもしれませんね。

林:固執しないような意識はできた方がいいですね。僕の場合は、そう安くないお金を払ってバーに来てもらっているので、「お金を払っているのに、あそこのお店には変な人がいる」って思われちゃいけないというのがベースにあります。だから、問題のある人はこちらから縁を切るし、逆に突然来なくなった人も追いかけたりはしません。

友達関係ってシンプルに考えると、知り合いだからといってこれから先もずっとやり取りするわけではないし、相手と自分が今どれだけ合うかだけだと思うんです。そう考えれば、絶対合わないって人も出てきます。だからこそ、固執しないことが大切なのではないでしょうか。

【林伸次さん】

渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主。中古レコード店、ブラジル料理店、ショット・バーで働いた後、1997年「BAR BOSSA」をオープン。バーを経営する傍ら著作家としても活躍している。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)など。

<取材・文/おおしまりえ 写真/林紘輝>

【おおしまりえ】

水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518