テレビ・ラジオのレギュラー番組が14本という人気芸人のアンガールズ・田中卓志さん。広島大学工学部で建築を学んでいた経歴を買われて、住宅番組のMCを務めるほか、建築関連の番組ゲストとしても引っ張りだこです。
そんな田中さんが住宅雑誌『住まいの設計』で2018年から連載している「家好き芸人 アンガールズ・田中が行く! 建築家の自邸探訪」が、1冊の本になりました。
今回はその中から、間口3m、奥行き13mの細長い敷地でありながら、タテの空間をうまく利用して楽しい居場所をつくり出し、快適に暮らす女性建築家の住まいを訪ねた回を抜粋して紹介します。
◆ロフトをつくってコンパクトな空間を有効活用
「家と家の狭間の小さい敷地なので、1階に通り土間をつくり、その上にリビングや畳の部屋など、いろいろな床が浮遊しているような住まいにしたんです」と話すのは、埼玉県さいたま市の約20坪の敷地に、夫と長女の3人家族で暮らす自宅兼事務所を建てた川島真由美さん。
壁や床の隙間から光が差し、各部屋が見え隠れするので、コンパクトでも広がりが感じられます。
リビングの奥に配された子ども部屋の上にはコンパクトな畳スペースがあり、キッチンまで見通せます。
「梯子で上り下りするのも楽しい。小さくても畳があるって、いいよね。昼寝したら気持ちよさそうだなあ」と田中さん。
2階リビングの床の一部が外せるようになっていて、そこからロフトに降りられるようになっています。さっそく田中さんもトライしますが「ええー、これどうなってるの!?」とちょっと腰が引け気味。
田中さんが着地したのはここ。高さを抑えたロフトはおもに収納に活用。このロフトには1階寝室からもアクセスできます。
◆空中ピアノコーナーで田中さんが熱演!?
「空中ピアノコーナーがあるじゃん!」とエアピアノに酔いしれる田中さんがいるのは1階の小さなロフト。川島さん家族はここを「ステージ」と呼んでいるそうです。
置き場所に悩んだという電子ピアノを配置し、下段は納戸にすることで、空間をうまく活用しています。
1階には川島さんのオフィスと多目的な土間スペース、さらに浴室や洗面、トイレなどの水回りと主寝室があります。
多目的な土間スペースは『hulalito(ふらりと)』と名付け、ワークショップなど、子どもたちも巻き込んだ様々なイベントを不定期で開催しています。
土間スペースには作業台にもなるカウンターもあり、引き出しの中にはゲストが自由に使える文房具などが入っています。
◆キャンプもできちゃうルーフテラスと、草屋根も!
コンパクトな空間を余すことなく生かすために、屋上もしっかりと活用しています。デッキを張ったルーフテラスをつくり、その先には草屋根も。「ここでキャンプをしたりすることもあるんですよ」と川島さん。
ルーフテラスの手前にはランドリースペースが配置されていて、家事動線も快適です。
「少しでも庇を出したくて、外壁をそのまま手前に伸ばして広い軒下空間をつくりました。軒天のレッドシダーパネルは室内までつながっていて、内と外との一体感を出しました」(川島さん)。最近ではこの軒下スペースを使ったイベントなども開催しているそうです。
「カフェみたいにふらりと入りたくなる、地域に開いたスペースもありながら家族がくつろげる場もちゃんとある家、いいですね」(田中さん)
田中卓志さん
1976年、広島県生まれ。広島大学工学部第4類建築学科卒業。お笑いコンビ「アンガールズ」として活躍中。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築。建築関連の番組へのゲスト出演も多数
川島真由美さん
川島真由美建築デザイン 一級建築士事務所代表。住宅や施設など建築全般から内装、グラフィックまで様々なデザインを手がける。2017年に設計した福島県の認定こども園「なこそ幼稚園」は数々の賞を受賞した
<取材・文/松浦美紀 撮影/山田耕司>