東京の目黒に構える『M’ amour(マムール)』は、ヨーロッパのアンティークやフランス老舗メーカーの選りすぐりの商品を取り扱うフランス雑貨&アンティークのセレクトショップ。移り変わりが激しい東京で、来年10周年を迎えます。
そこで今回は、『マムール』のコンセプトの軸となっているオーナー・名津井さん自身のアンティークやブロカントとの向き合い方や、商品への想いを詳しく伺いました。
古さと新しさが溶け合う、『マムール』らしさを取り揃えた品揃え
アンティークやブロカントの他にも、フランス老舗メーカーの新作も取り扱っているという『マムール』。古いものと新しいものを組み合わせたこの品揃えが、『マムール』らしさを作り出しています。
「私がこのお店を始めた当初は、古いのものとフランスの新しいものを一緒に売っているような、こういうお店があまりなかったんです。アンティークやブロカントというと、多くは骨董品屋さんだったので。でも実際、モダンなインテリアが多い日本の家では、食器も布も家具も、全部古いものにしてしまうのはあまり合わないと感じていました。なので『マムール』では、フランス老舗メーカーの新しい商品と組み合わせた形を提案しています。古いものとの相性も良く、日本の住まいの雰囲気にもよく馴染みますよ」とオーナーの名津井さんは言います。
「M」のロゴが入ったブラックのフィレは『マムール』別注
フランス老舗のテーブルウェアメーカーである『ジアン』も、新旧ミックスを楽しめる『マムール』のセレクトのひとつ。この人気シリーズ「フィレ」から新たにコバルトという新色が発売されます。気品をも溶け込ませたような絶妙なブルーの曲線はすべて、熟練の職人によるハンドペイントで描かれているそう。
「さりげないけれど、なんとも言えないアクセントになってくれるフィレは、どんなお料理にも映えるのでとても人気なんです。特に新色のコバルトは手持ちの食器や和食器との相性も良いですね」と名津井さん。
新色「コバルト」は、9月28日~10月3日開催の「日本橋三越フランス展」にて先行発売
『ジアン』は、なんと1821年創業。200年以上も事業を継続し、そして今もなお、新しい商品を生み続けています。このような老舗メーカーの誇りが息づく新商品との出合いは、『マムール』の大きな魅力のひとつです。
審美眼に秘めた物づくりへの敬意
シャルべ・エディションのリネン
『ジアン』を始め、取引をするメーカーには一段とこだわりがあるという名津井さん。そのひとつに、老舗メーカーの物づくりに対する深い敬意がありました。
「老舗メーカーは、商品だけが素敵なわけではなくて。生産管理や商品開発まで含めて、商品クオリティとして表れているんです。良いものを作り続けているから長くやってこれている。伝統ってこういうことなのかなと思っています。もちろんアンティークのアイテムとも相性ぴったりですよ」。
商品のみならず、メーカーの物づくりにまで深く向き合う名津井さんのこうした姿勢は、『マムール』をスタートする前のキャリア、輸入業で培ってきた経験が影響を与えているんだとか。
老舗メーカーへの確かな信頼は、何十ものヨーロッパのメーカーと直接やり取りした経験の賜物。それは名津井さんの言葉からも、そして『マムール』に揃うアイテムたちからも明らかです。
「好き」との出合いを大切にする
「商品のひとつひとつは、私が気に入っているから仕入れています。好きではないから、早く売れてほしいと思うような商品はひとつもないですね。むしろ、愛着が沸きすぎて時には売れないでほしい…!ということも割とあるんですよ(笑)。例えば、フランスの取引先にオーダーしたものが、廃盤になったと突然言われることもあって。それで余計に愛着が沸いてしまうんです」。
いつでも手に入るものではないからこそ、突然のお別れは儚いもの。その一方で「好き」と出合った時の喜びはひとしおです。そんな素敵なグラスとの一期一会を教えてくださいました。
『ラ・ロシェール』の「ヴェルサイユシリーズ」
「ベルサイユ宮殿の中にあるレストラン『アラン・デュカス』を訪れた時に、お水を出されたグラスがとっても素敵だったんです。お店の人にたずねると、1475年創業のフランスで一番古いグラスメーカー『ラ・ロシェール』の『ヴェルサイユ』というシリーズでした。まさにヴェルサイユ宮殿の中で巡り合ったので何かご縁を感じましたね。『マムール』に仕入れるようになったのも、この出合いがきっかけです」。
アンティークを楽しむ身近なアイデア
輸入業で養った審美眼と名津井さんご自身の感性。このふたつの視点に共振したアイテムが揃うことで、同じような趣味やスタイルを持つお客さまとのご縁も生まれています。またここ数年では、お客さまの層にも変化があるそうです。
「アンティークコレクターやフードスタイリスト、フードコーディネーター、それからお花の先生など専門職の方たちに継続的に利用していただいています。でも近年は、いわゆる目利きの人たちだけでなく、ビギナー層の方もぐっと増えたんです。実際コロナをきっかけに、自分の好きなもの、心地いい空間の大切さに気づかされましたよね。自分の生活を見直して、お家時間を充実させたいというたくさんのアンティーク初心者のお客さまにも喜んでもらえています」。
さらに『マムール』では初心者の方もコーディネートに困らないような工夫をしているのだとか。
「お洋服も、トレンドが変わったら着られなくなってしまうのって少し残念ですよね。せっかく気に入って手に入れた物なら、次のシーズンはこのお洋服と合わせてみよう、というふうに更新していけると楽しいと思うんです。私はおうちのものも同じように考えています。例えば、去年『マムール』の商品を買ってくださったお客さまが、今年来ていただいたときに、去年のアイテムに合うものが必ずあるようにしているんです」。
実際に名津井さん自身も、フランス人がさりげなく取り入れる”新旧ミックス”をヒントにしています。
「フランス人って、昔からある良いものを、ナチュラルに取り入れるのが本当に上手なんです。これ見よがしのアンティーク使いではなくて、「おばあちゃんの家にあって素敵だったから』っていうくらいのカジュアルさ。またそれをプチプラなものと合わせたりもしていて、絶妙なこなれ感がすごく素敵だったんです」。
名津井さんが大きくインスピレーションを受けているという人物が、サフィア・トーマス=ベンダリ。日本でも人気がある老舗パティスリー『ラデュレ』のゼネラルマネージャーとして、かわいらしいパッケージやブランドとのコラボレーションといった『ラデュレ』ならではの魅力を作り上げた立役者の1人なんだそう。
「彼女のコレクター魂には、とてもインスピレーションをもらっています。何よりコーディネートのセンスが本当に素晴らしくて」。
古いものと軽やかに暮らすフランス人は、アンティークやブロカントの見え方そのものを変えてくれます。古いものであっても、新しいものであっても、両方自分の好きなもの。「私の愛しいもの」という意味の「マムール」を育んでいける、それがアンティークとの暮らしなのではないでしょうか。
奥が深いアンティークの世界を、”新旧ミックス”という楽しみ方で日常に届けてくれる『マムール』。信頼の集まる審美眼と愛情でセレクトされた商品が光るこの場所に、あなたの愛しいものもきっと見つかるはずです。
- ■お店情報
M’amour(マムール)
住所:東京都目黒区下目黒5-1-11
営業時間:12:00~18:00
※月曜日・火曜日はアポイントメント制
定休日:水・木曜日
※最新の営業情報は、お店のSNSでご確認ください。