【今日のにゃんこタイム~○○さん家の猫がかわいすぎる Vol.82】
「この子は、とんでもない甘えん坊。仕事をしている時以外は、ほとんど膝に乗っています」そう話し、愛猫ふぁん太くん(ソマリ)に優しい眼差しを向けるのは、飼い主のfantaloveaiさん(@fantaloveai)。
「私は生まれつき障がいがあり、身体が弱く、20代の頃の手術で子どもが産めない体になりました。だから、ふぁん太は我が子同然。守る対象ができたことで、体力的にも精神的にも強くなれました」
◆猫カフェで1匹のソマリと運命的な出会い
ふぁん太くんとの出会いは、2020年3月に惜しまれつつ閉店となった「保護猫カフェまちねこ」。当時、飼い主さんはハムスターを亡くしてペットロス状態でした。
「今となっては、長毛はその子の個性だし、成猫は性格が完成されていて共に暮らしやすいと思っていますが、その頃は長毛は飼いにくく、子猫のほうが長く一緒にいられると思い込んでいました。なので、短毛の子猫と暮らしたいと考えていたんです」
しかし、タイミング的にお店には子猫がいませんでした。すると、思わぬ運命の出会いを果たすことになります。
「私が障がいによって杖をついていることを店長さんが考慮してくれ、穏やかで通院時にも一切暴れないふぁん太を勧めてくれたんです」
◆多頭飼育崩壊から保護された、ふぁん太
ふぁん太くんはブリーターの多頭飼育崩壊によって2015年にレスキューされ、お店にやってきた子です。
猫カフェ時代は7年間、ファンファンと呼ばれていたため、飼い主さんは似た響きの「ふぁん太」という名前を贈り、家族となりました。
おうちに迎える前、飼い主さんは保護猫団体が開催していた猫の飼育法が学べる勉強会に参加。店長さんからは、キャットタワーのハンモックが好きなことや、循環器では水を飲まないことなどを教えてもらいました。
万全の準備をし、おうちに迎え入れると、ふぁん太くんは、まるで最初から家族の一員だったかのように、すぐさまキャットタワーに登ったり、膝の上で甘えたりと愛くるしい姿をたくさん披露。
ふぁん太くんの存在のおかげで、飼い主さんの心に開いていた穴は徐々に埋まっていきました。
◆趣味は窓からカラスと子どもとの交流
好きなことは、日当たりが良い出窓からカラスを観察すること。窓越しに、小さな子どもと交流を深めることもあります。
「散歩中の子どもが手を振ったり、声掛けをしてくれたりすると、ふぁん太はじっと見つめ返しているんです」
夜、眠る時は腕枕をしてもらいながら、同じ布団でスヤスヤ。
かと思えば、夜中にひとり大運動会を始め、飼い主さんが反応するまで鳴き、コール&レスポンスを要求することもあるとか。
「年齢のわりに、わんぱくです。テンションMAXになると、キャットタワーからカーテンレールにうつり、そこから私に向かってダイブしてくることもあります(笑)」
◆ヘソ天は膝の上でだけ!甘えん坊で知的な性格
ソマリは甘えん坊で知的な子が多い猫種だと言われていますが、ふぁん太くんは、まさにそんな性格。
飼い主さんに甘えるだけでなく、動物病院へ行った時にはお腹を見せ、撫でてもらっては喉を鳴らし、喜んでいました。
「捕液や採血で暴れた直後でも、私が名前を呼ぶと、膝に乗って甘えてくる。人間に向かって威嚇をしたことがない、本当に優しくて穏やかな子です」
ヘソ天は床やベッドでは絶対にせず、膝の上でだけ披露してくれます。
「なぜか、色んな猫ちゃんが夢中になったと聞くおもちゃは、基本的に無視。人間が操っているのを分かっているのか、冷たい目で見つめられて終わりです(笑)」
そう語る飼い主さんは、ソマリという猫種を考慮しながらふぁん太くんをケア。長毛のため、毎日のブラッシングは必須です。
「ふぁん太は、ソマリらしい特徴的な赤毛がありません。だから売れ残ってしまったのかなと思うと、可哀想でならない。愛情を受けられなかった分、出来る限り一緒にいて、尽くしてあげたいんです」
◆「猫は吐くもの」に疑問を感じ転院。慢性胃腸炎が発覚
そんなふぁん太くんですが、実は2020年に「慢性胃腸炎」であることが判明。きっかけは、嘔吐の回数に疑問を持ったことでした。
すぐにかかりつけの動物病院で相談をしましたが「猫は吐くものだから平気」と言われたため、通院しながら、しばらく様子見することに。
しかし、あまりにも嘔吐の回数が多くなってきたため、思い切って検査機関の整った病院へ転院。内視鏡の検査を受けたところ、慢性胃腸炎であることが発覚しました。
やがて、2日に1度嘔吐するようになり、4kgあった体重は3.4kgにまで減少。捕液の必要が出てきたため、血液検査を行ったところ、慢性膵炎も患っていることが分かりました。
現在は、膵炎向けの食事療法や投薬治療を受けながら、経過観察中です。
◆健康管理記録をメモ書き。嘔吐状況を分析
「通院でストレスを感じる子なので、往診してもらっています。嘔吐は週に1度ほどになり、体重は3.9kgまで戻りました」
身体に合うフードを色々試した結果、落ち着いたのはロイヤルカナンの「セレクトプロテイン」(ウェットフード)と、いなばのふりかけ。
しかし、合っていたフードが翌月になると合わない、季節によって合わないといったことが起こるため、飼い主さんは毎日、記録をとり、嘔吐の状況を分析しています。
「あとは、フードの温度にこだわったり、酸化しないように食べる分だけ、真空パック機で小分けにしたりしています。食べ過ぎると下痢になるので、タイマーを2時間半置きにセットし、少量ずつご飯をあげています。留守中や就寝中はセンサーフィーダーとタイマー式の給餌器を使い、時間や量の配分を1g単位で変えていますね」
細やかな配慮で愛猫の健康を維持し続ける、飼い主さんは自身がなかなか病気を発見できなかったからこそ、似た悩みを抱えている方に病院選びの重要性を訴えかけます。
◆少しでも疑問を感じたら転院を検討する
「私は、“猫は吐くもの”という一般論に疑問を感じて転院しました。病院は通いやすさなどもありますが、診察や診断に対し、少しでも不安や疑問を感じた場合は転院を検討することも必要だと思います」
ふぁん太のためにしていることが結果的に、私の元気に繋がっている――。そう笑う飼い主さんとふぁん太くんは、互いに支え合い、これからも家族であり続けていきます。
<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291