ロックミュージシャン、ギタリストとして世界で活躍しているMIYAVIさん(41)。アンジェリーナ・ジョリーさんが監督した映画『不屈の男 アンブロークン』をはじめ、俳優としても存在感を示しており、現在も出演映画『ヘルドッグス』が公開中です。

MIYAVI、ケガをしてサッカーを諦めた過去「ギターが自分を世界へ連れてきてくれた」
MIYAVIさん
『燃えよ剣』などの原田眞人監督が三度、岡田准一さんと組んだ本作で、MIYAVIさんは、岡田さん演じる元警官の主人公・兼高が潜入する、関東最大のヤクザ組織の若きトップ・十朱を演じています。いわゆるイメージするところのヤクザのボスとは違うオーラで魅せるMIYAVIさんに話を聞きました。

◆ヤクザのボス役オファーに最初は「無理でしょう」と

――猛者たちを束ねるヤクザ組織のトップを演じました。

ヤクザのボス役オファーに最初は「無理でしょう」と
『ヘルドッグス』より
MIYAVIさん(以下、MIYAVI)「最初は『僕ではないな、無理でしょう』と思いました(笑)。でも僕にお話が来たということは、そこに何かあるんだろうなと。まず監督のお話を聞きたいと思いました。そこで、十朱というキャラクターにある種の異物感、異色感が欲しいと伺って。『アンブロークン』(2014年、アンジェリーナ・ジョリー監督作)に出させていただいたときも、そうした理由でしたが、既存のイメージにとらわれない、今までにないヤクザのボスにしたいんだなと感じました」

――美しいボスでした。

MIYAVI「“美しさ”は映画全体としてのテーマでもありますよね。人と人とのぶつかり合いが、どう美しく描かれているのか。大きなテーマだし、その繊細さとエレガントさも原田監督の作品の特徴でもあるのかなと思いました。十朱は、華麗で美しく、かつ狂気をずっと内に秘めていて、自分の思う正義を貫き、新しい世界を作ろうとしている。そんな彼の孤高の生き方と、組織を率いる人間としてのバランス感覚が難しかった点です。ただそこは、アクションシーンの殺陣と同じで、北村(一輝)さんなり、吉原(光夫)さんなりがしっかり受け止めてくれたからこそ、僕はああいったボスとして存在していられたと思います」

◆岡田准一の主演としての器と熱量

岡田准一の主演としての器と熱量
『ヘルドッグス』より
――主演の岡田さんの印象を教えてください。

MIYAVI「演技ももちろんですが、アクションにかける思いには本当に強いものがありました。自分の出番じゃないときでも、現場にいて、アクションの確認をしていて。そうした姿勢がキャストやスタッフに伝わるし、それが最終的に作品につながっていったと思います。彼の主演としての器と熱量は、僕たち共演者にとってもすごく大きなものでした」

――十朱と兼高の、クライマックスでのシーンがとても印象的でした。

MIYAVI「あそこはひとつの終着点でもあって、感情の揺らぎみたいなものをどう滲み出せるかが勝負でした。ある意味、中学校のときに、好きな人に告白するときの緊張感と恥じらいが混ぜ合わさったかのようなドキドキ感が、あのシーンには重要だったと思います。撮影自体はすごくサクっと終わりました。原田監督の撮影はすごくテンポ感が早くて、ローラーコースターのよう。アクションの画もすごくしっかり撮れたと思いますし、すごく印象に残る場面になりましたが、僕個人としてはもっとやれたかなという思いもあります」

◆自分をニュートラルに、ゼロにする俳優業は新鮮

――MIYAVIさんの軸はミュージシャンですが、俳優としての仕事はまた新しい感覚を持てるのでしょうか。

自分をニュートラルに、ゼロにする俳優業は新鮮
『ヘルドッグス』より
MIYAVI「他の人の人生をなぞるというのは、アーティスト、音楽家としてはなかなか無い体験ですし、その人だったら、ここでどう動くだろう、どう感じるだろうと考えるだけで、自分の中の引き出しも増えます。自分をまずニュートラルに、ゼロにするという意味では新鮮で、音楽家とはまた違う在り方ですね。そして俳優は、大きな絵の中に自分がどう存在するのか、アンサンブルの一部としてどういう音を鳴らせるのかがすごく重要。音楽では基本ソロ活動が中心で、それだと終始、自分のペースですが、お芝居の世界は、周りの共演者と一緒。どちらかというとオーケストラの中にいるような感覚に近いのかなと思います」

◆ギターが自分を世界に連れて行ってくれている

――MIYAVIさんは、もともとはサッカーをされていて、最初からミュージシャンを目指していたわけではないとか。

ギターが自分を世界に連れて行ってくれている
『ヘルドッグス』より
MIYAVI「はい。ケガをして、夢を諦めた。人間、夢がないと輝けないんですよね。そのとき、自分が輝いていないのを感じていました。そのなかでたまたまギターに出会って。『このギターが、いつか自分をどこかに連れていってくれるんじゃないか』というワクワク感を覚えました。想像でしかなかったけれど、でも何事も想像しないと始まらないから。そしてひたすらギターを弾いてた。ギターが自分を世界に連れて行ってくれていると感じるし、音楽だけじゃなく、映画という違った世界にも自分を連れてきてくれました」

――今年、パリ・サンジェルマンFCの試合のオープニングセレモニーで演奏されました。

MIYAVI「まさかサッカーやってた自分が新国立競技場でギターを弾くなんて思っていませんでした。今も、テーマソング(WOWOWで放送の欧州サッカーテーマソング)やらせてもらっていたり。やっぱり何かつながっていくんですよね。何かに本気で懸けていると、どこかで導かれるのかなと思います」

◆読者へのメッセージ

読者へのメッセージ
――最後に公開にあわせて読者にメッセージをお願いします。

MIYAVI「この作品には、男のかっこよさ、弱さや美しさが詰め込まれています。それと同じくらいかっこいい女性像も描かれているので、女性も楽しめる映画だと思います。ぜひ」

(C) 2022 「ヘルドッグス」製作委員会

<撮影・文/望月ふみ>