婚活コンサルタント・デートコーチの田中亜依です。恋愛や婚活は“出会い方”についてご相談を受けることも多いですが、実は“出会った後”の相談も同じくらい多いです。中には弁護士を巻き込むようなトラブルに発展するケースも…今回は、出会った後にトラブルに巻き込まれた香奈さん(31歳、仮名)のエピソードをご紹介します。
◆アプリで知り合ったバツイチ年下男性
香奈さんの職業は医者です。学生のころは夢だった医者になるため、恋愛に目もくれず勉強一筋。無事医者になる夢を叶えてからも仕事に打ち込む日々を過ごしていましたが、仕事にも慣れてきたころ、急に孤独を感じるようになり、手っ取り早く出会えるマッチングアプリを使い始めました。
そこで知り合ったのは、28歳会社員の隆史さん(仮名)。プロフィールからはわかりませんでしたが、彼は20代前半で結婚し、その後2年くらいで離婚してしまったことをメッセージのやり取りで教えてくれました。「会う前にこんな話をしてくれるなんて、誠実」と逆に好印象だったそうです。
◆初対面で結婚前提にお付き合いを申し込まれる
何回かメッセージを交わしているうちにお互いに好意を持てたので、いよいよランチデートをすることになりました。ランチを終えたタイミングで隆史さんが「結婚前提で僕と付き合ってもらえませんか?」と急に告白してきました。
香奈さんは突然の告白に驚きましたが、これまで異性とお付き合いしたことがなかった彼女は、「こんな私のことを好きになってくれるならいいかも」と思って即OK。二人はお付き合いをスタートすることになりました。
◆ペアリングを買おうと提案、お金は出さない彼
お付き合いが始まって2回目のデート。隆史さんは急に「ペアリングを買おう」と提案してきました。お付き合いをしたことがない香奈さんは、もちろんペアリングも初めて。あこがれだったペアリングができる嬉しさのあまり、彼女からウン万円もするリングをプレゼントすることにしたそうです。
あまりの進展の早さに私は「よく即決しましたね…」というと、香奈さんは、「私が誇れるところって貯金なんです。医者というと給料が高いイメージがありますが、それは開業医など一部。私は大学病院で働いたりクリニックで働いたりと掛け持ちをしています。ただ、趣味や洋服などにもこだわりがないので、お金を使わず貯金だけはあります。なので、払うことは全く気になりませんでした。それよりもこの私にペアリングが欲しいと言ってくれたことが嬉しかったんです」と。
◆子どもがいると告白、主夫になりたいと言い出す
ここからさらに話が加速していきます。
「次のデートです。急に話があると真面目な顔をして彼が私に言ってきたんです。なんだろうと思ったら、『実は、子供がいるんだ』と言い出したんです。正直びっくりしました。バツイチはまだしも子供がいるのか…親権は?と聞くと、まだ決まっていないとのことでした」
ちょっと急すぎる展開に私もびっくりして頭を整理するのが精一杯でしたが、香奈さんは、「ここまで好きと言ってくれる人は今までいなかったし、結婚前提で付き合っているし、お子さんも含めていい関係を築きたいと一生懸命でした」と彼の子どもとも合う機会をつくったそうです。
「その後、同棲しようという話や、彼が仕事をやめ主夫になりたいという話を彼から提案されました。私は医者としてお仕事をしていきたいという気持ちが強かったですし、彼が家のことをやってくれるならお互いのニーズはマッチしていて、それでいいと思ったんです」
ここまで話が進むまでにデートした回数は6回、期間は2ヶ月だったそうでかなり急な進展ですが、関係は順調そう。ただ、そこから、それ以上に急な展開でトラブルに巻き込まれることになるのです。
◆突然会社をやめた彼、生活費を請求される
「彼から話があると言われて会いに行きました。そこで彼が、『会社を辞めてきた』と告げてきたんです。結婚前提に話もしてましたし、主夫になることも話はしていましたが、流石に早い!とプレッシャーというか違和感を感じたんです。そこで、私は彼に結婚をしたい気持ちはあるけど、もう少しゆっくり時間をかけたいと言ったら、彼は急に怒り出し始めました」
「彼は、『もう仕事は辞めたし、子供の養育費は払わないといけないし。最低でも2~3ヶ月分の生活費は保証して欲しい!!』と言ってきたんです。ここまで言われて正直好きな気持ちも冷めてしまったし、変に関係を長引かせたくないのでお金を払って気持ちを治めることができるなら払おうと思っています」と香奈さんは半分あきらめモードでした。
私は直感的にお金を支払うのは間違っていると思いましたし、香奈さんには一旦止めましたが、お金が絡むことなので弁護士さんにもきちんと相談することにしました。
◆お金を払う必要はある?ない?
今回相談にのっていただいたのは、弁護士の内山悠太郎先生。
――さて、今回のケースでは婚約や半同棲の話がでているので「婚約破棄」もしくは隆史さんにとっては「婚約詐欺」と問われるのではないかという可能性も感じました。果たして、今回のようなケースで生活費を保証して欲しいと言う場合はお金を払う必要があるのでしょうか。
「お金を支払う必要はないと考えます。婚約破棄を理由として慰謝料を請求するためには、法的な保護に値するだけの婚約関係が成立していることが必要になります。法的な保護に値するだけの婚約関係が成立しているかどうかは、年齢や交際の経緯や交際期間だけでなく、両親の顔合わせや結納、結婚式場の予約、新居の準備等の客観的事情から総合的に判断されます。そのため、プロポーズだけでここでいう婚約関係が成立するものではないのです。また、婚約破棄についての相談では、そもそも『破棄した』という事実の認定が難しいケース(結果的に合意で別れているケース)も意外に多いです」
◆不倫トラブルの相談も多い
――他には、どういったケースの相談が多いですか?
「男女関係絡みで最も多いのは不貞慰謝料(不倫に対する慰謝料)の相談ですね。私の場合、もともとオンラインや電話での相談を受けることが多いですが、コロナ禍になってからは、SNSやマッチングアプリなどのオンラインの出会いの場でのトラブルも増えているようです。実際私のところにも、SNSで知り合った方や、マッチングアプリで知り合った方との不倫トラブルの相談がきています」
――どのようなものが不貞の証拠になるのでしょうか?
「不貞の証拠として訴訟に出てくるものとしては、探偵による調査報告書、LINEのやりとりや、ラブホテル等に出入りする写真が多いと感じます。探偵による調査報告書は決定的な証拠となることが多いですが、調査費用は高額です(200万円を超えるケースも少なくありません)。ここで覚えておいていただきたいことは、調査費用は、損害として認定されないことが多いということです。探偵をつける際は基本的に不貞相手に請求することはできないと考えておく方が良いでしょう」
◆弁護士に相談したと伝えると、彼の態度が急変
弁護士さんからしっかりとした回答をいただいたので、香奈さんには支払う必要がないということを伝えて毅然と断っていただきました。弁護士さんに相談していることを伝えると隆史さんからは「今回は大丈夫です」と即答があったそうです。
マッチングアプリでの出会いは、以前に比べ安全になったとはいえ身元が保証されていない人との出会いです。そのため最終的には自分のことは自分で守るしかありません。もし少しでもおかしいと思うようなことがあれば、私たちのようなアドバイザーや弁護士さんに相談することをお勧めします。
<取材・文/田中亜依>
【田中亜依】
恋愛・婚活コンサルタント、デートコーチ。婚活歴10年、婚活に700万円を投資。マッチングアプリ、結婚相談所、合コンで600人以上の男性と出会い結婚。この経験を生かし、国内最大手結婚相談所にて「また会いたくなるデート方法」などのセミナー講師として活動。公式ホームページ/Twitter:@date_coach_ai/Instagram:@ai_tanaka1019