【BARのマスターに聞く! 第5回】

こんにちは、コラムニストのおおしまりえです。

最近大人からの友達づきあいについて、たびたび悩む声を耳にします。と、書いている筆者もアラフォーに差し掛かり、子どもを生んだり生活のリズムが変わったりして、友達付き合いの変化を感じてドキドキする年頃です。

前回特集では、渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」の店主で『大人の条件 さまよえるオトナたちへ』(産業編集センター刊)などの著書をもつ作家の林伸次さんに、大人から見直していきたい友達づきあいのツボについて話を聞いていきました。

BARのマスター林伸次さんに聞く!
「BAR BOSSA」のマスター林伸次さん(右)と筆者・おおしまりえ(左)
まずは、友達づくりの場である「居場所」との関わり方についてのお話です。

◆自分に合う場所はどうやって見つけていくのか

皆さんは、自宅や職場(学校)以外に、人とつながりを作る場(コミュニティ)を持っているでしょうか。例えば趣味のサークルや習い事、オンラインサロンやいきつけの飲食店も、つながりを作る場と言えるでしょう。

こうした「第3の場所」の重要性は昔から言われていましたが、SNSが一般的になった今、より選択肢が多くなった印象です。とはいえ、人付き合いベタなタイプであれば、こうした居場所探しもハードルが高いと感じることもあります。自分にあったコミュニティって、どう探したらよいのでしょう。

◆空気感が自分に合う場所なら、集まる人とも合いやすい

おおしまりえ(以下、おおしま):林さんはBARの経営をされているので、まさに「第3の場所」を提供する側ですよね。最近だとオンラインサロンとか第3の場所の選択肢も増えましたが、人生を豊かにするためにこうした新しい居場所を探そうと思ったとき、自分に合う場所の見つけ方ってあるのでしょうか?

BARのマスター林伸次さんに聞く!
林伸次さん(以下、林):飲食店に限った話で言うと、やっぱりお店の形態やそのお店が出す“文化の香り”が、自分に合っているか確認するといいんじゃないでしょうか。例えば僕のお店なら、レコードを聞きながらワインが飲めるという部分が、お店の文化の香りの1つです。

こういった空気感が自然と心地よいなら、集まる他のお客様とも合いやすいとは思います。

おおしま:よく、相性のいいママがいるスナックは、お店起点でいろんなつながりができると言いますよね。それもママを基準に価値観のミスマッチが起きにくい仕組みに、自然となっているからかもしれないですね。

林:飲食店に来る人たちって、階層が似るんです。歌舞伎町が好きな人と六本木が好きな人、三軒茶屋が好きな人は、見た目が似ていてもお店に求めるものが違ったりします。

自分にあったコミュニティ探しという点では、馴染みの飲食店を持つのは、探しやすいかもしれないですね。

◆話題になった“40代男性、友達いない問題”

おおしま:少し前、「40代男性で友達のいない孤独な人が増えている」というニュースを見ました。でも40代男性に限らず、年齢が上がるほど友達が減って悩む人は多いと思うんです。

対策の1つとして、新たなコミュニティに所属することは大事だと思うんですが、そもそも一人で行動することに慣れすぎた人って、第3の場所を持とうと思っても億劫(おっくう)というか…そう簡単じゃないと思うんです。

その場合、林さんとしてはどこから自分を変えていったら良いと思いますか。

BARのマスター林伸次さんに聞く!
林:そういった悩みを抱く人は、男女に限らず“友達を作るのが苦手”なタイプだと思うんです。お店を新規開拓したり全く新しいことを始めたりというのは、きっと難しいんじゃないでしょうか。孤独に悩みながらも、やっぱり一人が好きなんだろうなーとも思っちゃうんです。

まずはそういう気持ちを自覚するというのも、大事かもしれませんね。

◆ほとんどの人が持っている「好き」を起点にできれば

おおしま:私も比較的孤独が好きなタイプではあるので、億劫な人の気持ちは痛いほど分かります。個人的に最近意識していることは、場所や人数などその場の人によって、人間関係の濃度の違いを意識していけると負担が少ないのかなと思うようになりました。

例えば、コミュニティでの人間関係って、その場のノリとか全体の空気がやっぱり大事じゃないですか。人付き合いが苦手な人って、ノリで人と繋がるということ自体を薄っぺらいとか、社交辞令で疲れるって切り捨てがちなのかなと。

でもその先には「ノリが合ったからあの人ともっと深く知り合いたい」というギフトが隠れていたりします。こうした距離感の違いを理解して、場に合わせてコミュニケーションを使い分けることができれば、負担も少なく行動範囲も広がるのかなと思っています。

林:行動面で始めやすいことなら、すでにある趣味とか好きなことを広げて人間関係を作っていくのがやりやすいですよね。

孤独を感じる人が多いとはいえ、ほとんどの人は何かこだわりは持っているはずです。そういう自分の好きを起点とした、人と関われる場所が見つかると負担も少ないかもしれません。

◆オススメは男女が混ざったコミュニティ。その理由は?

林:あと、特に男性に対して伝えたい話にはなりますが、もしこれから第3の場所を探すなら、男女が適度に混ざりあった場所の方がより充実度は高まりやすいと思います。というのも、異性の友人を持てると、人生はすごく充実すると周りからも聞くからです。

僕個人としては、異性間の友情は成立しない派なのですが、改めて考えると、男性同士だと話が盛り上がっても「LINE交換しませんか?」とか「次○○一緒に行きませんか?」みたいなやり取りって、年齢が上がるほどこっ恥ずかしくて言えないものです。

ここに女性が混ざっていると、「みんなでLINE交換しよう!」「次はみんなで○○に行こう」って成立しやすいんです。

BARのマスター林伸次さんに聞く!
おおしま:確かに、女性同士ってどこかに行くとか連絡先を交換するとか、いくつになっても自然とできることですからね。男性同士だとそうなりにくいんですね。

◆大人同士がシンプルな友達になる難しさ

林:男性同士だと、フラットな出会いだとしても利害とか上下といった余計な要素をつい意識してしまいがちなところがあります。だからシンプルな友達って感じになるには少しハードルが高いんです。

おおしま:それ、女性同士でも同じことが言えると思います。女性の場合は、「今度一緒に○○しよう」みたいなやり取りは生まれやすいですが、一方で派閥(はばつ)やグループといった軋轢(あつれき)が生まれることも多いです。

ここに男性がいると、ある種の「節度(せつど)」のようなものが生まれて、いい意味で平和な交流になるかもしれません。もちろん色恋問題が起きない前提ですが。

【林伸次さん】

渋谷のワインバー「BAR BOSSA(バールボッサ)」店主。中古レコード店、ブラジル料理店、ショット・バーで働いた後、1997年「BAR BOSSA」をオープン。バーを経営する傍ら著作家としても活躍している。著書に『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』(幻冬舎)など。

<取材・文/おおしまりえ 写真/林紘輝>

【おおしまりえ】

水商売やプロ雀士、素人モデルなどで、のべ1万人以上の男性を接客。現在は雑食系恋愛ジャーナリストとして年間100本以上恋愛コラムを執筆中。Twitter:@utena0518